水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

めげないユーモア短編集 (95)目的

2023年01月04日 00時00分00秒 | #小説

 人は何らかの目的を果たそうと行動している。仕事であろうと行楽であろうと、はたまた遊興であろうと、目的を果たそうとして動いていることに変わりはない。だが、全(すべ)てが全て、目的を果たせるというものでもない。同じ目的を果たす人が現れれば両者は鎬(しのぎ)を削(けず)ることになる。オリンピック、パラリンピックも終わったが、スポーツ競技は如実にそれを物語る。敗れれば、めげないで勝とうと技量を磨き、雪辱を晴らそうとその目的達成に努力する。私なんか目的が多すぎて追っつかず、四苦八苦している。それでも、めげない。^^
 夏真っ盛りのとあるいなかである。バス停前の小屋の長椅子に座り、二人の男が扇子をパタパタさせながらバスを待っている。
「[パタパタバタ…]暑いですなぁ~!」
「はあ、そらまあ夏ですから…[パタパタバタ…]」
「どちらまで!?[パタパタバタ…]」
「[パタパタバタ…]ああ、私ですか? 私は豚川市の馬糞町まで…」
「馬糞ですかっ! あそこは住みよいですなぁ~[パタパタバタ…]」
「[パタパタバタ…]で、あなたはっ!?」
「私は鳥野市ですっ![パタパタバタ…]」
「[パタパタバタ…]遠いですなっ! 豚川からまだ30分ほど先だっ!」
「はあ、それはまあ…。[パタパタバタ…]そういう地理になってますから…」
「最近のバスは冷・暖房完備ですから、遠くても関係なくなりましたが…[パタパタバタ…]」
「[パタパタバタ…]それは言えますな…」
 その後も二人の[パタパタバタ…]は、目的を果たすためバス到着までめげずに続いた。
 確固とした目的があれば、人はめげないようである。^^

                   完


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