(稲むらの火)「これはただ事でない」海辺の高台に住む庄屋の五兵衛は、今の地震の長いゆったりとしたゆれ方と、うなるような地鳴りでそう思った。海を見ると波が沖ヘ沖へと動いて、みるみる海岸には、広い砂原や黒い岩底が現れて来た。「大変だ。津波がやって来るに違いない」と、五兵衛は思った。このままにしておいたら、四百の命が、村もろ共一のみにやられてしまう。家にかけ込んだ五兵衛は大きな松明を持って飛び出して来た . . . 本文を読む
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