左翼リベラルウイルスに侵されると、人間が変わってしまう。
(なぜ彼らは揃いも揃って「人に厳しく、自分に甘い」のか?)
辻元清美議員の外国人献金の問題が炎上しているが、本人は「直ちに(収支報告書を)訂正できてよかった。訂正したことで問題は解決した」と言っている。しかし、ネットでは昨年だけで以下のような発言があったと指摘されている。
__________
1月 松本副大臣の辞任は当たり前
4月 勝田局長は辞めたほうがいい。福田次官は普通は更迭
5月 麻生大臣は普通の会社ならクビ。加藤大臣は任にあらず
11月 山下大臣は任にあらず
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「人に厳しく、自分に甘い」とはこの事だろう。そもそも辻元議員のスポンサーになっていたと言われている関西生コンから恐喝などで30人近い逮捕者が出ている。反社会集団から献金を受けていたら政治家として大変な問題だが、ほとんどのマスコミも本人もだんまりを決め込んでいる。
辻元議員だけではない。村田蓮舫議員の二重国籍の疑い、山尾志桜里議員のガソリン代不正疑惑なども同様だ。「森友」「加計」問題で彼らが1年以上も騒ぎ立てても首相サイドから何の埃も出てこなかったのに比べれば、これらははるかに現実的な問題である。にも関わらず、本人たちの「我関せず」ぶりは、通常の日本人には想像を絶するレベルである。
一人くらいなら個人的人格の問題とも言えようが、三人とも、しかも朝日新聞の誤報問題への取り組みなども加えてみれば、日本の左翼リベラルは揃いも揃って、「人に厳しく、自分に甘い」というのは何か構造的な問題がある、と考えた方が合理的だ。
この精神構造はどこから来るのだろうか、と不思議に思っていたところ、最近、読んだベテラン・ジャーナリスト山村明義氏の『日本をダメにするリベラルの正体』、『民主党政権-悪夢と恐怖の3年3ヶ月』を読んで、ようやく彼らの正体に得心がいった。
(左翼リベラルウイルスに罹った小沢一郎氏)
山村氏は左翼リベラル思想を「ウイルス」にたとえ、それがかつての民主党という「宿主」に吸着・侵入し、それによって「宿主」は「幾多の重篤な症状」を発症したと指摘する。
左翼リベラルウイルスにかかると、どういう症状が現れるか、の分かりやすい症例が小沢一郎氏だろう。
小沢氏は「感染」前は、平成元(1989)年8月に第1次海部内閣が成立した際、47歳の若さで党幹事長に抜擢されたほど、自民党のホープだった。靖國神社に毎年のように参拝し、当時は「A級(戦犯)もB級も、C級も関係ない」と語り、堂々と参拝を訴えていた。
特に皇室については、皇太子殿下が「雅子妃の人格を否定するような動きがあった」と示唆された際にも、「ああいう発言をされたら、本当は総辞職だ」と、当時の小泉内閣に総辞職を迫っているほど、皇室を崇敬していた。
それが、平成14(2002)年に菅直人・鳩山由紀夫氏らの民主党と合流した頃から、徐々にウイルスに感染して、思想が侵されていったようだ。平成21(2009)年12月、韓国ソウルの国民大学での講演では、「天皇家の祖先である朝鮮南部の権力者が海を渡って奈良で政権を樹立した」という今ではほとんど無視されている説まで披露して韓国におもねった。
思想信条の信念の弱さという「虚弱体質」もあるのかも知れないが、左翼リベラルウイルスに罹ると、かくも別人のように変わってしまう、という典型的な症例である。
(「国家を弱め、市民を強くする」)
左翼リベラルウイルスに感染すると、「『国家」という『強い統治者』の権力を弱体化させるかなくしていき、『大衆』、『庶民』、『市民』という被統治者の力が強まることを心の底から願う」ようになる、と山村氏は指摘する。
確かに、「『国家」という『強い統治者』」を弱体化させるために、左翼リベラルは:
・自衛隊、米軍、原発、大企業に反対
・国旗、国歌を否定
・国の歴史、伝統、文化、皇室を無視または罪悪視
・「従軍慰安婦」「南京大虐殺」など虚構の歴史で日本を糾弾
・夫婦別姓推進、専業主婦敵視などで家族解体
・ゆとり教育、中高生への性教育などで国民教育を弱体化
「『市民』という被非統治者」の力を強めるために、彼らは:
・人権を強調し、国民の義務、責任は無視または軽視
・特に在日、部落、移民、性的少数者、子ども、女性の権利を擁護
・中国や北朝鮮、韓国という「侵略を受けた弱者」に謝罪・補償を主張
・生活保護、子ども手当などで「弱者」への富の分配を促進
要は、世の中を「国家権力 対 市民」という図式のみで捉え、とにかく「国家権力を弱め、市民を強くする」事が使命だと考える。
「人に厳しく自分に甘い」という左翼リベラル特有の二重基準も、国家権力を挫(くじ)くためには政府の不正はとことん追求すべきであり、逆に市民のために戦っている自分たちの多少の不正などは大目に見るべきだ、という論理となるのだろう。人間本来の道徳心は、左翼リベラルウイルスに侵されて麻痺してしまうようだ。
(「左翼リベラルウイルスの突然変異」)
「国家権力 対 市民」という図式は、フランス革命で生じたものだろう。そこでは、王、貴族、教会など「旧体制」を、市民を搾取してきた国家権力として打倒し、市民の自由平等を謳った人権宣言を発した。これがいかに欺瞞に満ちた代物だったかは、農民や小市民も含め200万人もの犠牲者が出ていることから明らかである。
山村氏は「『左翼リベラル思想』は、『インフルエンザウイルス』が突然変異して『新型』が現れるように、時代と共に少しずつ型を変え、世界中で感染、流行を繰り返してきました」として、次のように、その突然変異の歴史をふり返る。
__________
ヨーロッパ思想の一例を挙げれば、十七世紀から十八世紀頃にかけては、「社会契約説」に基づく「自由主義思想」を持った十七世紀イギリスのジョン=ロックや、フランスのジャン=ジャック・ルソーの「自由・平等主義」を取り入れた「啓蒙思想」から、十九世紀にはドイツのカントに代表される「観念論(哲学)」が現れました。
さらにイギリスのロバート・オーエンなどの博愛的な「空想的社会主義」、そしてマルクスの「共産主義」へと変わり、そして二十世紀には、「社会主義」が蔓延し、「社会改良主義」から、「社会民主主義」になっていくのです。
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弊誌でも、昨今の左翼リベラル思想が、マルクス主義の「亜種」であるフランクフルト学派に由来していることを、田中英道・東北大学名誉教授の著作をたよりに紹介したが、これも左翼リベラルウイルスの突然変異で、新しいウイルスが登場したと考えると分かりやすい。
(左翼リベラル政権は三戦全敗の「勝率ゼロ」)
左翼リベラルが政権をとる事を、山村氏は左翼リベラルウイルスの「大流行(パンデミック)」と呼ぶ。そして、日本ではこのパンデミックが3回起きたと指摘する。
__________
過去の日本の憲政史上では、戦後の「左翼政権」や「左翼リベラル政権」は、一九四六年の片山哲内閣、一九九五年の村山富市内閣、今回の民主党内閣と、国家に利益を与えない三戦全敗の「勝率ゼロ」です。
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片山内閣は戦後初の社会党政権として昭和21(1946)年に誕生したが、ゼネストや食料不足などの社会的混乱から脱せず、わずか半年で崩壊。村山内閣は自民、社会、さきがけの三党連立政権で、阪神淡路大震災への対応のまずさ、経済ではこの頃からの円高デフレ不況から脱出できずに、1年半で退陣した。
平成21(2009)年9月からスタートした民主党政権では、鳩山内閣が普天間基地移設で「最低でも県外」などと思いつき的発言で混乱をもたらし、わずか9ヶ月で降板。
次の菅直人内閣は尖閣海域で海保巡視艇にぶつかってきた中国人船長を中国の圧力に屈して釈放、さらに東日本大震災では福島第一原発の危機の最中に現地を訪れるスタンドプレーなどで混乱させ、1年3か月で退陣。
最後の野田内閣は、尖閣諸島の国有化によって中国での反日暴動に見舞われた。またマニフェストにもなかった消費税8%への増税を決め、後にそれが実行されて、景気低迷をもたらした。
(三戦全敗の「勝率ゼロ」の原因)
民主党が平成24(2012)年12月の総選挙で惨敗し、下野した時に多くの民主党議員は「民主党の方向性は、間違っていなかった」「我々は、反省する必要など全然ない」などという言葉が飛び交っていたそうだ。また、世間でも「民主党政権はひどかった」と言うだけで、その理由は必ずしも明確にされていない。
大きな失敗があれば、その原因を分析して再発防止につなげなければ政治は一向に進歩しない。そこで「民主党の悪政の本当の原因」を分析、検証したのが山村氏の著作なのである。氏は言う。
__________
結論を言うと、民主党の失敗の最大の原因は、その基本的な政治思想の中に「日本の国家や国民を強くするのではなく、むしろ弱い方に持っていく」ことを合理的な目的とする、彼らの「左翼リベラル思想」が存在したからです。
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確かに「国家権力の弱体化」しか念頭になければ、「国家権力」の発動によって国の誇りと国益を護ろうとする外交などはできるはずもない。尖閣での中国人船長の釈放や反日暴動などでも、すぐに中国の圧力に屈する事なかれ主義になってしまう。
また、自衛隊を否定する思想に侵されていては、大震災のような非常時に自衛隊にいかに活躍して貰うか、などという発想は持ち得ない。経済的にも、国全体の経済を発展させるという発想がなく、単に消費税やら生活保護など分配策しか考えないのでは、国全体がじり貧になるだけだ。
民主党政権の失敗も原因は、経験のなさとか、リーダーシップの欠如といった組織や人材の問題だけではなく、そもそも彼らの頭脳が左翼リベラルウイルスによって侵されていた、という事である。
ということは、左翼リベラルウイルスに感染した政治家は、野党の立場で反対を唱えているだけならまだしも、実際に政権を握ったら、必ず失敗する、という事になる。三戦全敗の「勝率ゼロ」は偶然ではなく、論理の必然なのである。
(左翼リベラルウイルスへの抵抗力)
民主党を侵した左翼リベラルウイルスは、その後も政界のあちこちに残り、さらには朝日新聞その他のマスコミにもしぶとく潜伏している。そのウイルスが再びパンデミックを起こさないようにするためには、どうしたら良いのか。山村氏は次のヒントを与えている。
__________
一般的にこの左翼系の「思想ウイルス」は、日本社会の「抵抗力」が強い時期、つまり国の経済が好況で活気があり、健全な愛国心が強い時期には、症状が出なかったり、軽い症状で済んでいたりした時期もありました。
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インフルエンザ・ウイルスに感染しても、抵抗力のある人はウイルスを撃退できる。多くの人が抵抗力を備えた社会では、ウイルスが侵入しても大事には至らない。
しかし、経済や愛国心がなぜ「抵抗力」として働くのか。弊誌は「共同体意識」が「抵抗力」の実体だと考える。そもそも「国家権力 対 市民」という見方には「共同体」という観点がすっぽりと抜け落ちている。人間はもともと群生生物である。他者に依存せずに孤立して生きられる「個人」などいない。
家族、地域社会、国家という共同体に守られ、共同体の維持発展に尽くしてこそ、構成員の幸福も人権も自由も護られる。この点を良く理解して、健全な「共同体意識」を持っていれば、「国家権力を弱めれば、市民のためになる」などという詭弁には騙されなくなる。それが左翼リベラルウイルスに対する「抵抗力」である。
(日本人に向いた「抵抗力」のつけ方)
それでは、いかに共同体意識という「抵抗力」を強くするのか。山村氏は、日本人に向いた「抵抗力」のつけ方があると提案する。
__________
実際に日本の歴史に照らしてみると、日本では「弱者への救いの心」は伝統仏教が、「相手への思いやりの精神」は、古来からの神道がそれぞれ請け負っていました。
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そもそも「国家権力 対 市民」という構図は、西洋の「圧政と反抗」の歴史から出てきたものだ。我が国では拙著『日本人として知っておきたい 皇室の祈り』でも述べたように、民を大御宝としてその安寧を実現する事を国家共同体の目的としており、神道と伝統仏教がそれを精神的に支えてきた。
左翼リベラリズムは外来のウイルスであり、しかも日本の伝統的な共同体精神という抵抗力を持たない人間が罹りやすい。そうならないよう、山村氏は次のようにアドバイスする。
__________
まずは、日頃から日本という国の成りたち、歴史、伝統、文化、日本人の精神性などについて知ることです。その上で、それを愛するという日本型の「保守主義」、「愛国心」を涵養(かんよう:無理をしないでゆっくりと養い育てること)することです。
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(なぜ彼らは揃いも揃って「人に厳しく、自分に甘い」のか?)
辻元清美議員の外国人献金の問題が炎上しているが、本人は「直ちに(収支報告書を)訂正できてよかった。訂正したことで問題は解決した」と言っている。しかし、ネットでは昨年だけで以下のような発言があったと指摘されている。
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1月 松本副大臣の辞任は当たり前
4月 勝田局長は辞めたほうがいい。福田次官は普通は更迭
5月 麻生大臣は普通の会社ならクビ。加藤大臣は任にあらず
11月 山下大臣は任にあらず
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「人に厳しく、自分に甘い」とはこの事だろう。そもそも辻元議員のスポンサーになっていたと言われている関西生コンから恐喝などで30人近い逮捕者が出ている。反社会集団から献金を受けていたら政治家として大変な問題だが、ほとんどのマスコミも本人もだんまりを決め込んでいる。
辻元議員だけではない。村田蓮舫議員の二重国籍の疑い、山尾志桜里議員のガソリン代不正疑惑なども同様だ。「森友」「加計」問題で彼らが1年以上も騒ぎ立てても首相サイドから何の埃も出てこなかったのに比べれば、これらははるかに現実的な問題である。にも関わらず、本人たちの「我関せず」ぶりは、通常の日本人には想像を絶するレベルである。
一人くらいなら個人的人格の問題とも言えようが、三人とも、しかも朝日新聞の誤報問題への取り組みなども加えてみれば、日本の左翼リベラルは揃いも揃って、「人に厳しく、自分に甘い」というのは何か構造的な問題がある、と考えた方が合理的だ。
この精神構造はどこから来るのだろうか、と不思議に思っていたところ、最近、読んだベテラン・ジャーナリスト山村明義氏の『日本をダメにするリベラルの正体』、『民主党政権-悪夢と恐怖の3年3ヶ月』を読んで、ようやく彼らの正体に得心がいった。
(左翼リベラルウイルスに罹った小沢一郎氏)
山村氏は左翼リベラル思想を「ウイルス」にたとえ、それがかつての民主党という「宿主」に吸着・侵入し、それによって「宿主」は「幾多の重篤な症状」を発症したと指摘する。
左翼リベラルウイルスにかかると、どういう症状が現れるか、の分かりやすい症例が小沢一郎氏だろう。
小沢氏は「感染」前は、平成元(1989)年8月に第1次海部内閣が成立した際、47歳の若さで党幹事長に抜擢されたほど、自民党のホープだった。靖國神社に毎年のように参拝し、当時は「A級(戦犯)もB級も、C級も関係ない」と語り、堂々と参拝を訴えていた。
特に皇室については、皇太子殿下が「雅子妃の人格を否定するような動きがあった」と示唆された際にも、「ああいう発言をされたら、本当は総辞職だ」と、当時の小泉内閣に総辞職を迫っているほど、皇室を崇敬していた。
それが、平成14(2002)年に菅直人・鳩山由紀夫氏らの民主党と合流した頃から、徐々にウイルスに感染して、思想が侵されていったようだ。平成21(2009)年12月、韓国ソウルの国民大学での講演では、「天皇家の祖先である朝鮮南部の権力者が海を渡って奈良で政権を樹立した」という今ではほとんど無視されている説まで披露して韓国におもねった。
思想信条の信念の弱さという「虚弱体質」もあるのかも知れないが、左翼リベラルウイルスに罹ると、かくも別人のように変わってしまう、という典型的な症例である。
(「国家を弱め、市民を強くする」)
左翼リベラルウイルスに感染すると、「『国家」という『強い統治者』の権力を弱体化させるかなくしていき、『大衆』、『庶民』、『市民』という被統治者の力が強まることを心の底から願う」ようになる、と山村氏は指摘する。
確かに、「『国家」という『強い統治者』」を弱体化させるために、左翼リベラルは:
・自衛隊、米軍、原発、大企業に反対
・国旗、国歌を否定
・国の歴史、伝統、文化、皇室を無視または罪悪視
・「従軍慰安婦」「南京大虐殺」など虚構の歴史で日本を糾弾
・夫婦別姓推進、専業主婦敵視などで家族解体
・ゆとり教育、中高生への性教育などで国民教育を弱体化
「『市民』という被非統治者」の力を強めるために、彼らは:
・人権を強調し、国民の義務、責任は無視または軽視
・特に在日、部落、移民、性的少数者、子ども、女性の権利を擁護
・中国や北朝鮮、韓国という「侵略を受けた弱者」に謝罪・補償を主張
・生活保護、子ども手当などで「弱者」への富の分配を促進
要は、世の中を「国家権力 対 市民」という図式のみで捉え、とにかく「国家権力を弱め、市民を強くする」事が使命だと考える。
「人に厳しく自分に甘い」という左翼リベラル特有の二重基準も、国家権力を挫(くじ)くためには政府の不正はとことん追求すべきであり、逆に市民のために戦っている自分たちの多少の不正などは大目に見るべきだ、という論理となるのだろう。人間本来の道徳心は、左翼リベラルウイルスに侵されて麻痺してしまうようだ。
(「左翼リベラルウイルスの突然変異」)
「国家権力 対 市民」という図式は、フランス革命で生じたものだろう。そこでは、王、貴族、教会など「旧体制」を、市民を搾取してきた国家権力として打倒し、市民の自由平等を謳った人権宣言を発した。これがいかに欺瞞に満ちた代物だったかは、農民や小市民も含め200万人もの犠牲者が出ていることから明らかである。
山村氏は「『左翼リベラル思想』は、『インフルエンザウイルス』が突然変異して『新型』が現れるように、時代と共に少しずつ型を変え、世界中で感染、流行を繰り返してきました」として、次のように、その突然変異の歴史をふり返る。
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ヨーロッパ思想の一例を挙げれば、十七世紀から十八世紀頃にかけては、「社会契約説」に基づく「自由主義思想」を持った十七世紀イギリスのジョン=ロックや、フランスのジャン=ジャック・ルソーの「自由・平等主義」を取り入れた「啓蒙思想」から、十九世紀にはドイツのカントに代表される「観念論(哲学)」が現れました。
さらにイギリスのロバート・オーエンなどの博愛的な「空想的社会主義」、そしてマルクスの「共産主義」へと変わり、そして二十世紀には、「社会主義」が蔓延し、「社会改良主義」から、「社会民主主義」になっていくのです。
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弊誌でも、昨今の左翼リベラル思想が、マルクス主義の「亜種」であるフランクフルト学派に由来していることを、田中英道・東北大学名誉教授の著作をたよりに紹介したが、これも左翼リベラルウイルスの突然変異で、新しいウイルスが登場したと考えると分かりやすい。
(左翼リベラル政権は三戦全敗の「勝率ゼロ」)
左翼リベラルが政権をとる事を、山村氏は左翼リベラルウイルスの「大流行(パンデミック)」と呼ぶ。そして、日本ではこのパンデミックが3回起きたと指摘する。
__________
過去の日本の憲政史上では、戦後の「左翼政権」や「左翼リベラル政権」は、一九四六年の片山哲内閣、一九九五年の村山富市内閣、今回の民主党内閣と、国家に利益を与えない三戦全敗の「勝率ゼロ」です。
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片山内閣は戦後初の社会党政権として昭和21(1946)年に誕生したが、ゼネストや食料不足などの社会的混乱から脱せず、わずか半年で崩壊。村山内閣は自民、社会、さきがけの三党連立政権で、阪神淡路大震災への対応のまずさ、経済ではこの頃からの円高デフレ不況から脱出できずに、1年半で退陣した。
平成21(2009)年9月からスタートした民主党政権では、鳩山内閣が普天間基地移設で「最低でも県外」などと思いつき的発言で混乱をもたらし、わずか9ヶ月で降板。
次の菅直人内閣は尖閣海域で海保巡視艇にぶつかってきた中国人船長を中国の圧力に屈して釈放、さらに東日本大震災では福島第一原発の危機の最中に現地を訪れるスタンドプレーなどで混乱させ、1年3か月で退陣。
最後の野田内閣は、尖閣諸島の国有化によって中国での反日暴動に見舞われた。またマニフェストにもなかった消費税8%への増税を決め、後にそれが実行されて、景気低迷をもたらした。
(三戦全敗の「勝率ゼロ」の原因)
民主党が平成24(2012)年12月の総選挙で惨敗し、下野した時に多くの民主党議員は「民主党の方向性は、間違っていなかった」「我々は、反省する必要など全然ない」などという言葉が飛び交っていたそうだ。また、世間でも「民主党政権はひどかった」と言うだけで、その理由は必ずしも明確にされていない。
大きな失敗があれば、その原因を分析して再発防止につなげなければ政治は一向に進歩しない。そこで「民主党の悪政の本当の原因」を分析、検証したのが山村氏の著作なのである。氏は言う。
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結論を言うと、民主党の失敗の最大の原因は、その基本的な政治思想の中に「日本の国家や国民を強くするのではなく、むしろ弱い方に持っていく」ことを合理的な目的とする、彼らの「左翼リベラル思想」が存在したからです。
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確かに「国家権力の弱体化」しか念頭になければ、「国家権力」の発動によって国の誇りと国益を護ろうとする外交などはできるはずもない。尖閣での中国人船長の釈放や反日暴動などでも、すぐに中国の圧力に屈する事なかれ主義になってしまう。
また、自衛隊を否定する思想に侵されていては、大震災のような非常時に自衛隊にいかに活躍して貰うか、などという発想は持ち得ない。経済的にも、国全体の経済を発展させるという発想がなく、単に消費税やら生活保護など分配策しか考えないのでは、国全体がじり貧になるだけだ。
民主党政権の失敗も原因は、経験のなさとか、リーダーシップの欠如といった組織や人材の問題だけではなく、そもそも彼らの頭脳が左翼リベラルウイルスによって侵されていた、という事である。
ということは、左翼リベラルウイルスに感染した政治家は、野党の立場で反対を唱えているだけならまだしも、実際に政権を握ったら、必ず失敗する、という事になる。三戦全敗の「勝率ゼロ」は偶然ではなく、論理の必然なのである。
(左翼リベラルウイルスへの抵抗力)
民主党を侵した左翼リベラルウイルスは、その後も政界のあちこちに残り、さらには朝日新聞その他のマスコミにもしぶとく潜伏している。そのウイルスが再びパンデミックを起こさないようにするためには、どうしたら良いのか。山村氏は次のヒントを与えている。
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一般的にこの左翼系の「思想ウイルス」は、日本社会の「抵抗力」が強い時期、つまり国の経済が好況で活気があり、健全な愛国心が強い時期には、症状が出なかったり、軽い症状で済んでいたりした時期もありました。
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インフルエンザ・ウイルスに感染しても、抵抗力のある人はウイルスを撃退できる。多くの人が抵抗力を備えた社会では、ウイルスが侵入しても大事には至らない。
しかし、経済や愛国心がなぜ「抵抗力」として働くのか。弊誌は「共同体意識」が「抵抗力」の実体だと考える。そもそも「国家権力 対 市民」という見方には「共同体」という観点がすっぽりと抜け落ちている。人間はもともと群生生物である。他者に依存せずに孤立して生きられる「個人」などいない。
家族、地域社会、国家という共同体に守られ、共同体の維持発展に尽くしてこそ、構成員の幸福も人権も自由も護られる。この点を良く理解して、健全な「共同体意識」を持っていれば、「国家権力を弱めれば、市民のためになる」などという詭弁には騙されなくなる。それが左翼リベラルウイルスに対する「抵抗力」である。
(日本人に向いた「抵抗力」のつけ方)
それでは、いかに共同体意識という「抵抗力」を強くするのか。山村氏は、日本人に向いた「抵抗力」のつけ方があると提案する。
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実際に日本の歴史に照らしてみると、日本では「弱者への救いの心」は伝統仏教が、「相手への思いやりの精神」は、古来からの神道がそれぞれ請け負っていました。
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そもそも「国家権力 対 市民」という構図は、西洋の「圧政と反抗」の歴史から出てきたものだ。我が国では拙著『日本人として知っておきたい 皇室の祈り』でも述べたように、民を大御宝としてその安寧を実現する事を国家共同体の目的としており、神道と伝統仏教がそれを精神的に支えてきた。
左翼リベラリズムは外来のウイルスであり、しかも日本の伝統的な共同体精神という抵抗力を持たない人間が罹りやすい。そうならないよう、山村氏は次のようにアドバイスする。
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まずは、日頃から日本という国の成りたち、歴史、伝統、文化、日本人の精神性などについて知ることです。その上で、それを愛するという日本型の「保守主義」、「愛国心」を涵養(かんよう:無理をしないでゆっくりと養い育てること)することです。
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(文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)
---owari---
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