へんないきもの日記

今日も等身大で…生きてます😁

ハンガーノック状態に ~ トランスエゾ走行記

2016-09-07 08:09:46 | 旅とランニング
 13日目(後半戦6日目)、美深から浜頓別までの81km。天塩川に沿って北上を続け、途中、音威子府(おといねっぷ)の町を過ぎて天北峠を越え、中頓別を抜けて、いよいよオホーツク海に出る・・・

 すでにこの旅も残すところあと2日・・・直射日光で真っ黒になった一週間前が嘘のように、後半戦はスタートから曇り&雨・・・さらに北上するにしたがい、涼しさは増して(個人的には一週間前の太陽が恋しい・・・)、途中、出会う廃線跡や集落跡地でさらに寂寥感も増してくる・・・

 5年前、このコースを走った時、なんてステキなコースだろう・・・と思った。特に音威子府に行くまでの森林地帯はロビンフッドの森のようで私の空想力をかきたてた。

 だが、今、目の前に広がる森を見ると出てくるのはロビンフッドではなく、クマのように思えた。2回目ともなると、こうも感動が薄れるものなのか?

 美深温泉をスタートして、これといった町も無く、川沿いの砂利道を走り、線路を渡って国道に出る。国道から再び線路を渡ると咲来(さっくる)という町に出る。そこは5年前よりさらに寂寥感が漂っていた。まるでゴーストタウンだ・・・と言っては失礼だ。実際に住んでいる人がいるのだから。でも、本当に人の気配を感じさせない。かつて栄えていた頃の店の看板が逆に哀愁を感じさせた。

 咲来を過ぎて再び国道に出るとまもなく音威子府の町が出て来た。スタートして20kmを過ぎてようやくコンビニに出会った。でも、それはこの日最初で最後のコンビニだった。

 完走目的の人たちはコンビニに立ち寄るとさっさと行ってしまった。リタイア組はここをリタイアポイントに。コンビニから少し先にあるJR音威子府駅からは中頓別、浜頓別を経て宗谷岬へ行く路線バスがある。JRはそのまま内陸部を抜けて宗谷岬へ行ってしまうので間違えてJRに乗ってしまうと大変だ。

 私は最初で最後のコンビニでしっかりと腰を下ろして飲食した。そして新たに今日一日に必要な行動食を調達した。おにぎり3コにヨモギ団子・・・!
でも、結局、それらは途中で食べつくしてしまい、食糧が尽きてしまう・・・

 音威子府を過ぎ、天北峠を越えると集落が現れた。でも、自販機はあるが、食べ物を売っているような店は無い。そのまま国道を行けば道の駅があるのあが、正規ルートは非情にも右手の道道を入って行く・・・

 その手前に「岩手」という地区がある。おそらく岩手県からの入植者によって開拓されたのであろう。岩手特有の家屋が1軒、5年前よりさらに樹木に埋もれるようにして遠い過去を物語っていた。

 道道(北海道なので県道ではなく、道道です。)の両側はクマが出て来そうな森林以外何もない。昨日の長距離走行の疲れからか、だんだんと眠くなってきた。

 60km地点の牧場の無人エイドで冷たい水を飲んでいるとS井さんがやって来てさらにその後ろからA井さんも追いつき、3人でゴールを目指すかたちとなった。それにしても・・・3人共通の思いは・・・「空腹を満たすこと」であった。

 ゴール10kmちょっと手前にさしかかった時、S井さんが思わず叫んだ。「自販機だあ~!」

 自販機が、あった~!と自販機一つで喜ぶ姿を日常では想像できないだろうけど、それくらいこの日この時点での我々は飢えていた。

 自販機のその先に、なんと個人の商店があった。ちゃんと営業している商店だ。迷わず中に入る。菓子パン、そして私は桃を買ってほおばった。店の人が「何も無くてゴメンナサイね。」って言ってたけど、とにかく口に入れられるものがあっただけで何よりだ。

 桃の糖分が私を元気にしてくれた。(糖質オフ、なんてくそくらえだ。私には糖質が必要だ!)

 あとはひたすらゴールを目指して走る。時計を見るとあまり余裕が無かった。なぜか5年前より遅い。私も少し焦って来た。クッチャロ湖を左手にすると間もなくその先はゴールの浜頓別の町である。しかし、ゆるやかなカーブ続きの上りが長い。5年前は、もう少し明るかったゾ・・・

 ようやく、浜頓別の町の明かりが見えて来た。町の入口のコンビニに2人は立ち寄ったようだけど、私はわき目も降らず、ゴールの民宿目指した。ふと気づくと、どうやら町の中心部を通り超してしまい、その先の案内板が「クッチャロ湖」と出ていた。やばい、小さな町はどこが中心部かかわらない。制限時間まですでに20分を切っている・・・もはや地図と現地をじっくり見比べている余裕もなく、体育館のような施設の前でクルマから出て来た人を呼び止め、素直に旅館の場所を聞いた。やっぱり通り超していた(笑)

 残り10分前、かろうじてゴールした。腹が減った・・・!だが、5年前にあった宿の食堂は閉鎖されていた・・・シャワーを浴び、最後のミーティングを終えると私は一人、浜頓別の町へ出た。

 ここ2~3日の雨で両足の指の付け根が痛んだ。足を引きずって旅館から数件先の2階にある居酒屋へ行った。高齢の女性が一人でやっていた。他に客はいない。私は生ビールを注文し、枝豆とナスみそ炒めを頼んだ。すきっ腹にビールが染みた。一瞬、それだけでお腹がいっぱいになった気がした。

 お腹が落ち着いたころ、店の女性が「自転車で宗谷岬へ行くのかい?」って聞いてきたので「いいえ、走っているんです」とこれまでのルートの話をした。「この辺はクマが出るから気をつけたほうがいいよ。特に夜中になるとクマが降りて来て海の水を飲みに来るんだよ。クマだけじゃない、鹿も海の水を飲みに来るのさ。だから、みんな、夜は出歩かないようにしている。鹿ならいいけど、クマが車の前に出て来たら、おっかねえよ。」

 実際にクルマでクマに遭遇したその女性の話を聞いて思わず戦慄した。

 それにしても、クマが塩分補給とミネラル補給?のために海水を飲むとは・・・クマも栄養が必要なのは私と一緒だな・・・

 いよいよ明日は最終日・・・我々は長旅のゴール、最北端の宗谷岬を目指す。
コメント (2)
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