こんにちは! ただち恵子です

政治と社会、日々の暮らしの小さな喜び。思いつくままに綴ります。

元祖「年金天引き」・・・介護保険

2011-08-15 21:03:34 | 社会保障
「八月十五日の正午から午後一時まで、日本じゅうが、森閑として声をのんでいる間に、歴史はその巨大な頁を音なくめくったのであった。」

宮本百合子は小説「播州平野」のなかで、その日のことをこう表現した。

66年目の8月15日を迎えてきょう、私の頭から離れなかったのは、3日前の一本の電話。

初めていただいたその電話の主は74歳、男性。
「年金は年に149万9100円。1ヶ月12万4千円。8月の年金から介護保険料が天引きになる。」・・・それが何とかならないか?という相談。

2000年4月に介護保険がスタートしたとき「月に1万5千円以上の年金があれば天引き」と聞いて、「なんてひどいことを思いつくんだろう」とあきれた。制度発足前に、各町ごとに集会所で「介護保険懇談会」を開いたが、「年金天引き」は評判が悪かった。
ところが政府は「高齢者の利便性に配慮」などと言って、後期高齢者医療、国保、そして税にまで「天引き」を拡大。
後期高齢者医療は東京など、国保料の安い自治体では「75歳で保険料があがる!」という事態になり、「天引き」にも怒りが沸騰。「天引き」(特別徴収)か否か(普通徴収)を選択できるようになった。

しかし「元祖天引き」の介護保険には、いまだに「選択」の余地はない。
1万5千円以上の年金からは有無をいわさず、強制的に天引き。

65歳以上の方(1号被保険者)の保険料は3年ごとに保険者である市が決める。
条例で議会で議決するが、今、策定中の「事業計画」(どんなサービスをどれだけ提供するか)に基づいて算定されるもの。
泉大津の保険料は今、府下で一番安い。
(「保険料が安い」ということは、「サービスの利用が少ない」ということでもある。
「安い」ことを喜んでばかりいられない。)

「府下では最低」とはいえ、「いざとなったときに頼りになるかどうか???」という制度のために天引きされる保険料は、実感として「高い」。
ある自治会の会合でも、介護保険料の高さがもっぱらの話題だったとも聞く。

介護保険は、「保険あって介護なし」の不安を抱えてのスタートだった。
見直しの度に悪くなった。認定が厳しくなり、サービスの利用が制限された。
高齢者と家族を苦しめている。

保険料は天引きされながら、いざとなったら一割の利用料は到底払えない。だから「介護保険は一生使えない、と最初からあきらめている」という声も聞く。

「高齢者であり、要介護者であり、低所得者。3重の意味で社会的に守られなければならない方々を排除する制度になってしまっている」ことを、私は繰り返し議会で問題にしてきた。残念ながら、改善はされていない。

きょうは2ヶ月に一度の年金支給日。
電話をくださったTさん。どんな思いで、おられることだろう。

66年前のきょう、確かに「歴史は巨大な頁をめくった」のだが、私たちはその後新しい「憲法」のもとで「健康で文化的な生活」を保障する社会を、まだ実現できていない。
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