ロシアにとってのウクライナ、米国にとってのキューバ、日本にとっての台湾[HRPニュースファイル1233]
http://hrp-newsfile.jp/2014/1936/
文/HS政経塾3期生 森國 英和
新年明けましておめでとうございます。昨年末は、衆議院選挙がありましたが多くの皆様にご支援を頂きましたことに心より感謝申し上げます。
残念ながら当選者を出すまでには至りませんでしたが、国民の幸福を実現し、素晴らしい日本の国づくりを実現するため、今まで以上に努力精進を重ねて参ります。今後とも皆様のご支援よろしくお願い申し上げます。
さて、2015年の始めにあたり、昨年のロシア、アメリカの国際情勢を振り返りながら、日本のあり方についても考えてみたいと思います。
◆ウクライナ問題でのプーチン大統領の行動の誤解
2014年、最も世界に衝撃を与えた国際的な出来事は、ウクライナ問題です。
2月22日にウクライナ国内で、親露派のヤヌコビッチ大統領(当時)に対するクーデターが発生しました(ヤヌコビッチ氏はウクライナから脱出)。
それに対してロシアは3月下旬、ウクライナからの独立を宣言したクリミア(クリミア共和国)を編入し、ウクライナにおけるロシアのプレゼンス維持を図りました。
これに対して米英を中心とする欧米諸国は、ロシアの行動に対する不満を募らせ、経済制裁を加えました。
そしてその怒りは、7月17日に、ウクライナ東部の上空を飛行中のマレーシア航空の旅客機をロシア派武装集団がミサイルで撃墜したことで爆発し、「新たな冷戦」の様相を呈していると論じられるまでロシアとの関係を悪化させました。
年初以降のウクライナ問題、及びプーチン露大統領の行動への評価は、年末になっても定まっていませんが、「欧米が、ロシアの危機感を理解することなく、その“裏庭”にまで手を出した」ことが、ウクライナ問題がエスカレートした最大の理由です。
表題の通り、ロシアにとってのウクライナが、米国にとってのキューバ、日本にとっての台湾に相当すると考えれば、その地域での仮想敵国の動きに、国防上の危機として反応せざるを得ません。
また、冷戦終結の際に、ウクライナを含む東欧について、米国とソ連の間で意見が交わされ、ソ連が東西ドイツの統合と旧東独からのソ連軍の引き揚げを認める代わりに、欧米はNATOを東方に拡大させないとの“約束”がなされていたとの分析もあります(ジョシュア・R・I・シフリンソン『フォーリン・アフェアーズ・リポート』14年12月号)。
にもかかわらず、冷戦終結から20余年の歳月が経ち、欧米側が冷戦終結当時の前提を反故にしているのであれば、「一方的」との誹りを免れることはできません。
米英を中心に、「プーチンと将来のロシアの指導者がリベラルな理念を受け入れれば、世界はより良い状態になる」という前提で話が進められ、プーチン批判が“かさ増し”されていますが、ロシアの国家感情をむげにしていては無用な衝突が生じるのみです。
◆中国のカリブ海荒らしに対応する米国のリアリズム
一方の米国も、ロシアのウクライナに対する行動と同じような動きを見せています。オバマ米大統領は12月17日、50年以上国交を断絶していたキューバとの国交正常化交渉を直ちに開始させると発表しました。
今回のキューバとの交渉開始の背景には、残り2年の大統領任期で歴史に名を遺そうとするオバマ氏の思惑、ローマ法王・フランシスコの仲介があったと指摘されています。しかし、最も重要な要因は、カリブ海地域に近年、中国の手が伸びていたことでしょう。
中国の習近平・国家主席は14年7月15日から23日にかけて、中南米4か国を訪問し、キューバにも訪れています。習氏は米国の“裏庭”である中南米のうち、左翼的・反米的な政治指導者と個人的な信頼関係を築こうとしていると指摘されていました。
さらに最近、中米のニカラグアでの新運河建設事業を、中国系企業が受注したと発表されました。「(パナマ運河の)代替となる別の運河を確保できれば、米国をけん制できる」との指摘もあります(日経電子版14年12月25日)。
このような中国の“裏庭”荒らしに、米国がキューバとの国交正常化交渉開始という形で応戦したのです。これはケネディ大統領が62年に海上封鎖した動きと、同じような国家の衝動であり、同じような文脈でウクライナに対するロシアの対応を考慮すべきです。
◆日本にとっての“裏庭”は台湾
ロシアや米国が上記のように振る舞っていますが、日本にとっての“裏庭”は、台湾や東シナ海・南シナ海です。
14年6月、故・岡崎久彦氏からお話を伺う機会がありました(月刊「ザ・リバティ」14年8月号)が、岡崎氏は、「集団的自衛権が一段落したら、台湾問題に取り組まなければならない」と述べていました。
海洋国家・日本の防衛、シーレーンの確保を考えれば、日本にとっての“裏庭”は、台湾とそれを挟む東シナ海・南シナ海。それが中国に脅かされているのは由々しき事態です。
このような危急存亡の時、1890年の第1回帝国議会が思い出されます。当時の内閣総理大臣・山県有朋は、その施政方針演説において「主権線」(国境)のみならず「利益線」(緩衝地帯)の確保が必要であると述べました。
当時の「利益線」は朝鮮半島のことですが、今に置き換えれば、台湾や東シナ海・南シナ海の安危を監視し、いざというときに対応できる体制を整えるべきということです。
それを想起すると、15年1月の安倍首相の施政方針演説がどのような内容か、注目されます。激動の2015年を乗り切るために、自衛隊法等の改正や戦後70年の歴史問題への対応、防衛費の増額、9条改正について言及すべきです。
そしてできるなら、日本の国防にとっても重要な台湾についても踏み込む一年にしたいものです
2014年も、様々な人がニュースで紹介され、注目を集めました。その中でも、特に「批判に耐える勇気をくれた」として、リバティ編集部内で繰り返し話題にのぼった有名人を紹介していきます。彼らの後ろ姿には、「2015年も信念を持って生きていこう」という力をもらえます。
(1)「独裁者」と大バッシングを受けた ロシア・プーチン大統領
ロシアのプーチン大統領は2014年3月のクリミア編入以降、欧米諸国から「ヒトラーの再来」「独裁者」などという大バッシングを受けました。ロシア経済も、欧米諸国の経済制裁などで大打撃を受け、プーチン大統領は苦しい状況に追い込まれています。
ただ、プーチン大統領の動きにも一定の合理性はあります。クリミア併合に反対するウクライナ暫定政府自体、選挙で選ばれた政権ではありません。また、暫定政府はEUから経済支援を受けようとしていましたが、弱体化するEU経済にそんな力はありません。
アメリカは、これまで勢力を広げていた中東・東南アジアから、手を引き始めています。プーチン大統領は、アメリカが衰退した後の世界秩序を見据え、ロシアを守ることも視野に入れて力を広げていると言えます。
(2)一貫してSTAP細胞の存在を訴え続けた 小保方晴子氏
小保方晴子氏が筆頭著者として年初に発表した、STAP細胞に関する論文2本は、「捏造・改ざんがあった」として7月に取り下げになりました。論文に記された実験で本当にSTAP細胞をつくることができるかどうかを検証する実験は成功せず、小保方氏は理研を退職。マスコミは、「ペテン師」などと小保方氏を非難し続けました。
一方、小保方氏は一貫してSTAP細胞の存在を訴え続けました。4月の記者会見でも報道陣を前に「STAP細胞はあります」と言い切り、2時間以上、真摯に質問に答え続けています。
そこで小保方氏が涙ながらに、「私に、もし研究者としての今後があるのでしたら、やはりこのSTAP細胞が、誰かの役に立つ技術にまで発展させていくんだという思いを貫いて、研究を続けていきたいと考えております」と語ったことは印象的です。
8月に上司にあたる笹井芳樹教授が自殺した後も、検証実験に取り組み続け、実験の終了後、与えられた環境の中で「魂の限界」まで取り組んだという内容のコメントを出しています。
検証実験が打ち切りになったことで、論文の手順ではSTAP細胞が作れないという結論が出されました。しかし、STAP細胞そのものが否定されたわけではありません。小保方氏からは、現在の「常識」に負けることなく、未知なるものの可能性に真摯に向き合う姿勢を学ぶことができるでしょう。
(3)暗殺予告を受けながらも、女性の権利を訴えた マララ・ユスフザイ氏
パキスタンのマララ・ユスフザイさんがノーベル平和賞を受賞しました。パキスタンでは、イスラム原理主義のタリバンなどが女子教育に反対して、学校を破壊するなどの行動に出ています。そんな中、女子が教育を受ける権利を訴えていたマララさんは、2012年にタリバンに銃撃されました。
マララさんは今もタリバンから暗殺予告を受けていますが、活動を止めません。その原動力は、神への信仰心にあります。彼女は敬虔なイスラム教徒ですが、2013年に国連で行った演説の中で、アッラー、イエス・キリスト、仏陀の教えから「慈悲の心」を学んだと話しています。自分を襲撃した相手を憎むこともなく、教育の力を信じ、世界に広めようとしているのです。神への信仰心を元に、自らの為すべきことを為していく強さを教えてくれました。
(4)ワールドカップ敗退後も夢を語り続けた サッカー日本代表本田圭佑選手
2014年6月、ブラジルで開催されたワールドカップを前に、日本代表として「優勝を目指す」と発言した本田圭佑選手。しかし、本番で日本代表は予選敗退。マスコミは「口だけだった」などと、本田選手のビッグマウスを批判しました。しかし12月末、本田選手は所属するACミランの公式誌のインタビューで、「日本の次のターゲットはW杯で優勝すること」と、再び語っています。
本田選手が高い目標を語るのは、単なる楽観論ではありません。「夢を語ることが、未来をつくることにつながる」と確信しているためです。本田選手は予選敗退直後、「優勝すると言ったことには責任がある」と語っています。この言葉からは、自ら目標を宣言することで責任を背負うという姿勢、そして、選手や日本代表のサポーターに大きな夢を描いてもらいたい、という思いが伺えます。
本田選手は私達に、大きな夢を掲げ、失敗しても何度も挑戦し続けることの素晴らしさを教えてくれました。(晴)
◆初詣で前に読む、手水や鏡が意味する「日本神道的幸福論」とは?
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8998
日本人の7割近くが無宗教を自称していると言われていますが、それでもお正月には神社に参拝する人は多いでしょう。
初詣は、神々に新年のご挨拶を申し上げ、一年間の無事と平安を祈願するという日本神道の伝統的な宗教行事。日本人の信仰心が深まる機会です。
◎日本神道にも教えがある
しかし参拝者の多くは、どんな神に対して祈っているのかを、あまり意識していないかもしれません。
日本神道の聖典にあたる「古事記」や「日本書紀」を読むと、主に信仰の対象となっているのは、日本の国づくりの元となり、日本の精神的支柱をつくってきた天照大神などの神々です。西洋国にとってのイエス・キリストなどにあたるでしょう。
ただ、「キリスト教には愛の教えがあるが、日本神道には教えがない」という人もいます。そんなことはありません。日本神道にも、人間を幸福にする教えがあります。
神社にあるものに関連する教えを、いくつか紹介いたします。
◎日本神道の幸福論(1)——心を清める
まず神社に入る時に、「手水舎(ちょうずや)」に立ち寄り、清らかな水で手と口を洗います。これは、俗世の穢れを嫌う神に対する礼儀で、自らの反省の心を深める儀式でもあります。仏教では、「苦しみの原因である煩悩を消す」という教えがありますが、そこに通じるものがあります。
一年の始めに、去年までのさまざまな出来事を思い出し、過ぎた欲や、自分中心の醜い心がなかったかどうかを反省し、洗い流すことで、心機一転、すっきりした気持ちで新年を迎えたいものです。
◎日本神道の幸福論(2)——感謝と調和
また、特に天照大神を祀っている神社には、御神体として「円形の鏡」が安置されています。
この円鏡に関しては、「天の岩戸隠れ」という『古事記』の逸話が有名です。
「太陽神である天照大神が岩の洞窟に籠られ、日本中が真っ暗になってしまった。その時、他の神がこの御鏡を岩戸の隙間から天照大神に見せる。すると天照大神は、鏡に映った光り輝く自分の姿に驚き、外に出てきた。そして日本に再び光が戻った——」
この丸い鏡は、「太陽の姿」を映すものでした。そこには、どのような「教え」が込められているのでしょうか。
大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『日本神道的幸福論』(幸福の科学出版)の中で、以下のように述べています。
「『日の丸の姿』『太陽の姿』と『鏡の姿』を二重写しにした信仰が、日本の信仰のもとになるものであったのでしょう。日本人的幸福論として、『太陽のように慈悲と愛の光を投げかけ、発展・繁栄を願う神の心は、同時に、人々の争い、諸民族の争いをまとめていく和の心にもつながっていかなければならない』という考え方を持っていたと思います」
つまり神社の鏡は、「人々の豊かさや国家繁栄を願う、神の太陽のような心」「歪みや曇りのない鏡のように、穏やかで、争いのない心」を象徴していると言えます。
◎新年に味わいたい「日本神道的幸福」
穢れのない清らかで美しい心。太陽のように慈悲の光を投げかけてくれる存在への感謝の心。他人と調和していこうとする心。こうした心が持てたときが、日本人として、何とも言えない幸福感を感じる瞬間ではないでしょうか。
皆様も、新年の初詣の機会に、日本神道的幸福感を味わってみませんか?(真)
【関連書籍】
幸福の科学出版 「『日本神道的幸福論』日本の精神性の源流を探る」 大川隆法著
http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1262
【関連記事】
2014年11月号記事 世界宗教に比肩する日本神道の高みに迫る 「日本神道的幸福論」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8475
新年ご挨拶 『智慧の法』の年の大戦略 「ザ・リバティ」編集長
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8999
http://the-liberty.com/itemimg/8999_l.jpg
新年、明けましておめでとうございます。
2015年がどういう年になるのか考えてみたいと思います。政治や経済の動きとして何が予定されているのかを見ると、少しは見通しが立ってきます。
1月には、相続税の最高税率が50%から55%に引き上げられるとともに、課税される対象も広げられます。
10月には、社会保障と税の「共通番号(マイナンバー)制」が始まります。国民一人ひとりにどんな収入や資産があるのか政府がすべて管理できる体制へと向かっています。
どちらも、年金や医療などの社会保障を成り立たせようと、政府が国民からどんどん税金を取れるようにしようという動きです。
イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」紙に年末、「西側はうつ病か」という記事が出ていました。
高齢者の「自分たちの全盛期は終わった」という考え方が、「欧米の全盛期は終わった」という悲観論を生み出している。だからこそ、欧米の人々は経済を成長させるために何か新しい手を打つことよりも、手厚い社会保障を維持し、巨大な借金を抱えてしまっているという趣旨でした。
日本も同じ「うつ病」かもしれません。政府が出す高齢者(65歳以上)の社会保障のお金は夫婦2人で考えると、年に約560万円かかるそうです。子供が両親の面倒を見る場合、500万円以上出せる家庭はそうあるわけではありません。
日本の社会保障はそもそも成り立たないところまできてしまっています。実態を知れば知るほど、「うつ病」になってしまうのは当然かもしれません。
一方で、明るいニュースもあります。
3月に北陸新幹線が開業し、東京から金沢までを2時間半で結びます。今まで北陸への移動手段は航空便が大半でしたが、空港へのアクセスや待ち時間などを考えると、新幹線のほうが断然便利になります。北陸は関西圏との結びつきが強かったわけですが、東京のほうがより近くなり、新しいビジネスや消費行動が生まれるのは間違いありません。
開業50年を迎えた新幹線は、日本各地を一つに結びつけ、日本の経済規模を何倍にもすることに貢献してきました。2016年春には北海道新幹線の開通も予定されています。日本列島が新幹線で結ばれ、日本経済は“新しい次元"に入っていきそうです。
それを可能にした出発点は、戦時中に戦闘機を設計したり、ゼロ戦の機体の揺れの制御技術を確立したりした技術者たちが、試行錯誤しながら「夢の超特急」の実現に力を合わせたことにありました。
新幹線だけではなく、航空機も負けてはいません。今年後半には、ホンダがビジネス・ジェット(7人乗り)の正式な販売を始めるそうです。ホンダ・ジェットの挑戦は1986年にスタートしたので、約30年越しのプロジェクトです。航空機のエンジンをゼロから設計し、動かせば壊れるというような実験を繰り返し、主翼の上にエンジンを付けた今までにない機体のデザインにたどりつきました。
自動車などの日本のものづくりの強みに、航空機も加わろうとしているのが今年だということになります。
重くのしかかる「うつ病」を吹き飛ばすためにも、こうした日本の科学技術にもっと磨きをかけていかなければなりません。
その意味では昨年、小保方晴子さんによるSTAP細胞の再現実験がうまくいかなかったことは、非常に残念な出来事でした。
ただ、関係者の話を聞くと、単に「小保方さんが論文に書いた方法では再現できなかった」ということだけだそうです。
検証実験の責任者も「すべてのことを個々の条件からもう一度研究としてやるわけにはいかない」「STAP細胞がないから止めるわけじゃなく、検証実験の範囲で再現できなかった」と語っていました。
「予想をはるかに超えた制約の中での作業となり、細かな条件を検討できなかった事などが悔やまれます」という小保方さん本人のコメントにもそれは表われています。
つまり、検証実験は限られた方法で行われただけで、小保方さんが昨年4月の記者会見で言及していた、STAP細胞を作り出すための「最適条件」が試みられたわけではないということです。
発明王エジソンは、白熱電球を完成させるための実験を何万回と行った後、こう語りました。「私は実験において失敗など一度たりともしていない。これでは電球は光らないという発見をいままでに、2万回してきたのだ」
一部マスコミが言うように小保方さんが「確信犯的な嘘つきで詐欺師」ならば、STAP細胞は存在しません。
ただ、そうではない可能性が残されているならば、エジソンのように何万回という実験を繰り返すしかありません。
小保方さんが所属していた理研を所管する下村博文文科相は、「STAP細胞が存在しないと確定した」と述べていますが、政府がどう判断しようが関係ありません。
現代の日本の繁栄は、日本の技術者や研究者たちのチャレンジ精神と「失敗」の上に築かれてきました。「日本は全盛期を終え、社会保障を手厚くする中で衰退するしかない」という「うつ病」を吹き飛ばすには、「可能性があるなら追求してみよう」というチャレンジ精神を復活させるしかありません。
昨年12月に発刊された幸福の科学総裁・大川隆法著『智慧の法』では、大きな政府をめぐる問題についてこう指摘されています。
「国民の側として忘れてはならないことは、『大きな政府は、必ずと言ってよいほど、国民の堕落を招く』ということです」
「『繁栄への大戦略』は、国家が立てればよいというものではありません。
それを立てるのは、国家の構成員であるところの国民であるべきです」
「自立した一人ひとり、個人個人の『努力・精進と忍耐』『学習を続ける態度』が求められるし、そうした人を数多くつくれた国が、世界を守るのです」
繁栄をもたらす「智慧」について探究し、具体的に行動する1年にしたいものです。
ザ・リバティ編集長 綾織次郎
安全保障面でやや前進するも増税で経済失速 2014年の国内政治を振り返る
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8995
年末になると、今年一年の出来事を振り返る報道が増えるが、本欄も独自の視点から今年の国内政治を振り返ってみたい。
◎安全保障政策はやや前進?
最初に2014年の安全保障関連の政策を概観してみよう。今年、最も大きな出来事は、何と言っても7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定だろう。「権利はあるが行使できない」という戦後の歴代内閣の曖昧な態度を打ち破り、限定的ではあるが「行使できる」という判断を行ったのは大きい。前例にとらわれない「創造的な」判断であり、中韓以外のアジア諸国や同盟国であるアメリカにも歓迎された。
この決定と出来事と前後して、歴史認識問題においてもやや「打ち返し」が進んだ。2月には、河野談話作成時の官房副長官だった石原信雄氏が、談話の作成過程において韓国側とすり合わせていたことを証言。
6月には政府の調査チームが、河野談話は元慰安婦の証言だけを根拠に「強制性」を打ち出したもので、日韓の合作であったとする報告を発表した。
こうした背景もあり、今まで「従軍慰安婦問題」報道の急先鋒だった朝日新聞が、8月にこれまでの報道姿勢について一部誤りを認めた。日本軍による強制連行がなかったことについては明確に訂正・謝罪していないことなど問題は残るが、朝日新聞が「反省特集」を組み、謝罪したことは、日本人の自虐史観を改める上で少なからぬ影響があるだろう。
日本の防衛力強化を推し進める上で、日本が正義の国か悪魔の国かという点を明らかにすることは、極めて重要だ。この点、「河野談話」の虚偽性が明らかになってきたことは大きな変化である。
とはいえ、集団的自衛権の行使容認を具体化する法整備はなかなか進まず、9月中旬以降に小笠原諸島に中国船が大挙して押し寄せてきてサンゴ礁の密漁を行っても、有効な手段を取れない状況にある。北朝鮮拉致問題も進展せず、中国も「南京事件」の追悼式典を国家行事として行うなど、歴史問題による“攻撃"を緩める様子はない。
◎消費増税で景気失速 アベノミクスの限界が露呈
経済政策の面では、今年4月に行われた8%への消費増税が、上向きかけていた景気にマイナスのインパクトを与えた。
実際、4〜6月期のGDPは年率換算で前期比「マイナス7.3%」となり、夏を過ぎても消費は回復しなかった。
2015年の秋に10%に上げるという最悪の事態は回避したものの、アベノミクスはすでに「迷走」している。
安倍晋三首相は、「デフレ脱却」を掲げて企業に賃上げを要求したり、「ウィメノミクス」と称して女性管理職の割合を増やすよう働きかけたりしているが、企業にとっては規制強化となり、景気回復には却って逆効果だ。
結局、安倍首相の頭の中には「政府が経済の動向を左右できる」という発想があるのだろう。だが、アベノミクス第三の矢である「成長戦略」は、もともと民間の力を引き出すことを目指していたのではなかったか。
そのためには、規制緩和や利権政治の撤廃による「自由」の範囲の拡大が必要となるが、幸福の科学大学不認可問題に象徴されるように、現状は規制拡大の方向に進んでいる。
◎衆院選の勝利を生かせるか?
12月には、消費増税の延期とアベノミクスの是非を問うという名目で、解散・総選挙が行われた。その結果、自公が圧勝し、安倍首相は長期政権への足場を築いた。野党がふがいないための勝利とも言われるが、安全保障政策や成長戦略など、長期的な政策課題に取り組める環境が整ったこと自体は望ましい。
あとは、このチャンスを生かせるか否かだ。中国の動向や今の経済状況を見れば、憲法改正や規制撤廃への施策を早々に打つべきだろう。来年早々に行われる統一地方選や、2016年の参院選などを見越して“安全運転"をしている余裕はない。
日本の政治が正しい方向に進むよう、来年も本誌は有効な提言をしていく。(佳)
【関連記事】
2014年12月29日付本欄 【年末企画】2014年の「偏向報道」5つを厳選 STAP、従軍慰安婦などの問題山積
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8992
2015年2月号記事 2014年衆院選 衆院選で3分の2議席獲得 - 安倍政権は憲法改正に踏み込めるか
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8933
◆映画「アンブロークン」への感想は「アンリアリスティック」 反日プロパガンダの限界が見えた?
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8996
12月25日より、全米で映画「アンブロークン(原題)」が公開された。この映画は、先の大戦において、日本軍が連合国軍の捕虜に残虐な行為や拷問を行ったことがメインテーマで、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリー氏が監督を務めたことでも話題となっている。だが、同名の原作には、日本の軍人が生きたまま捕虜の肉を食べるという、およそ史実とは思えないような記述も多く、大半が作り話ではないかとも言われている。
本誌編集部に、アメリカでこの映画を観た人たちからの感想が届いた。その一部を紹介する。
○20代女性・日本人留学生
映画の内容はすべて本当の話とされているが、疑わしい場面が多い。たとえば、主人公が海で45日間漂流して生き抜いたことになっていて、サメを手づかみして生のまま食べるシーンがある。それはいくらなんでも実話とは思えない。
○20代歳女性・アメリカ人
想像していたほどひどい映画ではなかった。映画で描かれている日本軍の暴行は、アメリカや他の国も同じようなことをやっているのではないかと感じた。
○20代男性・アメリカ人
映画としての出来が非常に悪く、面白くなかった。映画館に来ている人は、政治的な意図を持っているようには見えず、娯楽の一環として観にきている人が多いように思えたが、日本のことを知らないアメリカ人が観たら、当時の日本は野蛮な民族だと思うかもしれない。
○20代女性・アメリカ在住の日本人
映画全体があまりにもわざとらしくて大げさなシーンが多く、登場人物の言動が「アンリアリスティック(非現実的)」に描かれていた。映画を観ていたアメリカ人も笑っていた。原作にある人肉を食べるシーンは出てこなかったが、出てきたとしても「アンリアリスティックだ」と感じる人が多かったのではないか。
○10代女性・ブラジル人
映画では日本が悪く描かれていて、これを観ただけだと日本が悪いことをしているように思えるが、映画は大げさに描かれることが多いので、映画の中で描かれていた暴行がそのまま本当であるとは思えない。特に主人公が海で漂流するシーンは「アンリアリスティック」だと感じた。
○20代女性・日本人留学生
映画の中では暴力シーンが多く、日本で上映するとしたら、年齢制限がかかる可能性が高い。絶対に日本で上映するべきではない。そもそも、描写が大げさなものが多くウソっぽいが、何も抗議しなければこれが正しいことになってしまう。日本人はもっと抗議すべきではないか。
概して「大げさ」で「アンリアリスティック(非現実的)」という感想が多く集まった。フィクションならともかく「ノンフィクション」であるなら、非現実的だという感想が多く出てくるのは失敗作と言ってもよい。
日本軍が連合国軍の捕虜を一方的に痛めつけたというのは真実ではない。中には行き過ぎた行為もあっただろうが、捕虜となったイギリス海軍将校ルイス・ブッシュ氏の著書には、捕虜収容所の日本人スタッフの多くは良識ある人物であったと記されている。
また、神奈川・大船収容所の尋問責任者だった実松譲大佐は、「恐怖と敵意に駆られた者は真実を語らないため、本物の情報を得るには捕虜の生命の安全を保障する必要があった」としている。
やはり、真実より強いものはない。とはいえ、この映画を真実であるかのように煽る勢力も出てくるだろう。「ウソはいつか明らかになる」というのは国際社会では通用しない。日本人は明確に抗議し、反論していくべきだ。(佳)
【関連記事】
2014年10月号記事 日本軍による組織的な捕虜虐待は真実か? 12月公開の映画「UNBROKEN」 - The Liberty Opinion 4
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8312
2014年7月5日付本欄 日本に人食いの習慣!? 映画「アンブロークン」主人公のモデルが逝去
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8101