ヨン氏は、全米で広く知られる独立ジャーナリスト。米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)に所属した経験を生かし、イラク戦争やアフガニスタン紛争で、最前線から臨場感あふれる記事を配信。イラク戦争では、米英軍に同行して戦場に滞在したジャーナリストとしては最長期間に及んだ。
米ニューヨーク・タイムズ紙は、「直接的な観察、明晰さ、懐疑性は、大手マスコミの記者を超えている」と評価。著書『イラクの真実の時』は全米でベストセラーになっている。
慰安婦問題は中国の諜報戦の道具
日本は無罪だ
アメリカ政府が7年もかけて調べた結果、
慰安婦の強制連行、南京大虐殺、
731部隊の犯罪を示す証拠は出てこなかった。
この調査結果をまとめた「IWGレポート」の存在を明らかにしたのが、
独立ジャーナリストのマイケル・ヨン氏。
歴史問題は日本を支配したい中国の諜報戦の道具に過ぎないと指摘する
同氏のインタビューを、世界で初めて紹介する。
独立ジャーナリスト
マイケル・ヨン
(プロフィール)
1964年生まれ。アメリカ人。独立ジャーナリスト、写真家。80年代に、米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)に所属。2004年から、イラク戦争やアフガン紛争に従軍記者として参加。アメリカ、ビルマ、バングラデシュ、タイ、フィリピンなど世界中を飛び回り、記事を執筆している。写真報道も手がける。彼のレポートはCNN、NYT、BBC、CBS、ABC、WSJ、LA Timesなど、世界の主要マスコミに取り上げられ、信頼と注目を集めている。
──慰安婦問題の調査で、1つの結論にたどり着いたと聞きました。
第2次世界大戦で、日本が戦地で慰安婦(売春婦)制度を使っていたのは事実ですが、朝鮮人女性20万人を誘拐し、性奴隷にしたという証拠は一切ない、ということです。
そもそも、複数の国と戦っていた日本兵自身、物資が足りず、常に飢餓状態にあり、20万人もの女性を誘拐、輸送、見張り、衣食住を世話する余裕などありません。この問題は、論理的な整合性がありません。
また、当時の朝鮮半島の人口は2300万人でしたが、半数が女性だとして、その内の20万人が誘拐されたとしたら、暴動や反乱が起きてもおかしくない。
それでも強制連行はあったと言うなら、抵抗しなかった韓国の男性は世界最悪の臆病者ということを認めなければいけません。これは、韓国人の無意識の自己卑下になります。
米政府が立証できない慰安婦の誘拐、南京大虐殺
我々のチームの調査で、これまでアメリカでもほとんど知られていなかった「IWGレポート」の存在が明らかになりました。これはクリントン政権とブッシュ政権の下で、米政府が約7年にわたり、改めてドイツと日本の戦争犯罪を調査したものです。
2007年春にまとめられましたが、調査の対象となった機密文書などの資料は計850万ページに及んでいます。そのうち日本に関するものは14万ページでしたが、その中で日本が慰安婦を強制連行したという証拠は見つかっていません。
IWGは日本を懲らしめてやろうと、慰安婦の強制連行の他にも、南京大虐殺や731部隊の犯罪について調べましたが、それが存在したという決定的な証拠を見つけることができなかったのです。
実は、この調査を行うように働きかけたのは、中国系の反日団体「抗日連合会」です。この団体は、南京大虐殺で日本は30万人を殺したと主張した『ザ・レイプ・オブ・南京』の著者アイリス・チャンともつながっています。
驚くべきことに、IWGレポートではこの抗日連合会に対して、「このような結果になって残念だ」と釈明している箇所があります。
問題は、このレポートがまとめられた直後の07年夏に、米議会の下院で、慰安婦問題に関して日本を批判する「対日謝罪要求」が決議されたことです。その後もオバマ大統領やヒラリー元国務長官が、慰安婦問題で日本を批判していますが、彼らはこのレポートの存在を完全に無視しています。
慰安婦は客を断る権利を持ち裕福に暮らしていた
1944年8月14日、ビルマで米軍兵士にインタビューを受ける、レポート49のもととなった朝鮮人慰安婦たち。
「慰安婦は性奴隷だった」という認識は完全に間違いです。それは、戦時中の1944年に、米軍の諜報機関だった戦争情報局(OWI)が作成した「レポート49」を見ても明らかです。
そこには、米軍がビルマ(現ミャンマー)で拘束した20人の韓国人慰安婦が、売春婦であったと明記されています。彼女たちは、どんな客でも断る権利があり、年間9千円も稼いで裕福に暮らしていました。
当時の日本軍の大将の給料が6600円ほどだったので、かなりの高給です。
OWIも日本の悪行を暴いてやろうと考えていましたが、その事実を見つけることはできませんでした。逆に、彼女たちが韓国の新聞広告を見て募集に応じたという事実があります。
私も陸軍にいた経験があるので知っていますが、基地をつくれば、周辺に売春婦が集まってきます。売春は、世界でもっとも大きなビジネス。韓国も売春業が盛んなことで有名です。
──アメリカ以外でも、調査をされていますね。
私は現在タイに事務所を構え、タイ人慰安婦の調査を進めていますが、数カ月前にタイのアピシット元首相やこの件に詳しい担当者に話を聞く機会がありました。
でも、彼らはこのことを問題だとは思っておらず、「当時タイの人々は、日本軍のことを好きでした」と言っていました。関係する記録を調べても、反日的な記述は見当たりません。
私が唯一見つけた最悪の"犯罪"は、日本軍の兵士がタイのお坊さんを平手打ちしたことぐらいです。
アメリカの国立公文書館、カリフォルニア、ニュージャージー、日本、タイなどで調査を行い、最後にたどり着いた結論は「日本は無罪」です。それを言うと人気者になれないかもしれませんが、それが我々の結論です。
確かなのは、この根底には、人権問題や性奴隷ではなく、政治的な意図、お金、そして、日本への蔑視があるということ。つまり、慰安婦問題は、中国が日本を攻撃するための地政学的な「道具」に過ぎないのです。
──慰安婦問題で日本を攻撃したいのは、韓国よりも、中国ということですか。
冒頭でも指摘したように、IWGの調査を働きかけたのは抗日連合会ですが、この団体は中国政府の諜報組織の一部です。つまり、アメリカで慰安婦問題を大きくしているのは中国ということです。
中国は歴史問題を使って、アメリカ、日本、韓国の仲を割り、協力しないようにしています。これは巨大な情報戦・諜報戦なのです。
中国が慰安婦問題を政治的に利用できるということに気づいたことは、見事としか言いようがありません。
「戦時中に慰安婦を強制連行した」とウソの告白をした吉田清治について、朝日新聞は調べもせずに報道し、それを日本の他のマスコミが後追いしました。中国はどこかの時点で、これに飛びついたのです。
全米には、すでに数カ所に慰安婦像や碑が建っていますが、中国は、韓国人が持つ日本への憎しみのエネルギーを利用し、これを後押ししています。
慰安婦、南京、靖国参拝
歴史問題は日本への攻撃材料
今のところオーストラリアやシンガポールでは、慰安婦像の設置が拒否されていますが、こうした国々が狙われているのには理由があります。それは、中国政府が、南シナ海を中心に、尖閣諸島などその周辺海域を侵略し、沖縄から米軍を追い出したいからです。
中国はどうしても南シナ海を支配したい。この海域は、アジアの国々が多くの物資を行き来させる重要なシーレーンです。
中国がここを掌握すれば、沖縄や韓国に駐留する米軍をけん制でき、日米同盟に亀裂を入れることもできるでしょう。
中国系の抗日連合会や他のグループが世界中で、慰安婦、南京大虐殺、靖国神社参拝の3つの歴史問題を、日本への攻撃材料に使っている背景には、そうした地政学的な理由が存在します。
それに比べ、韓国が慰安婦問題にこだわる理由は、日本人に対する差別意識と、日本を叩いて金を手に入れるという側面が強いと思います。また、竹島の問題もあります。これは歴史的にも明らかに日本の領土ですが、憲法9条に縛られて日本は何もできない状態です。
──欧米の識者でも「慰安婦の強制連行」を信じる人がいます。
彼らは「証拠がある」と言いますが、それは裏取りが十分でない新聞記事などの二次資料で、ほとんど一次資料を調べていない(注)。
14年以上も慰安婦問題を研究する、日本駐在のアイルランド人である有名なジャーナリストに「これまでどのような一次資料を調べたのか」と尋ねたとき、彼は「調べていない」と言いました。これで彼は博士号を持っているのですよ。「レポート49を読んだことがあるか」と聞いたところ、「なんだ、それは?」という答えが返ってきました。
──なぜ、「日本人は悪いことをした」と思いたがるアメリカ人が多いのでしょう。
もちろん、日本が戦時中に行った戦争犯罪については直視すべきです。慰安婦問題がウソだからといって、すべてが免罪されるわけではありません。
一方のアメリカは、民間人を標的にして、日本の複数の都市に焼夷弾を落としたり、2発の原爆を落としたりして、数十万人を殺しました。
だから、アメリカ人は慰安婦問題や南京大虐殺がウソであったという事実を認めたくないのです。
そうしなければ、自分たちがやったことを正当化できないからです。つまり、焼夷弾や原爆の使用が、常識的な基準から見て、明らかに戦争犯罪だったということに気づかれてしまうからです。
真珠湾攻撃は奇襲ではない
1941年12月7日の日本の真珠湾攻撃で、炎上する米戦艦ウェスト・バージニア。
中国国民党軍を支援したフライング・タイガースのメンバー。
アメリカは他国と戦争する時に、よく敵国の人々を「間化」します。当時の日本人をずる賢いネズミに例えることで、「アメリカは人間に対して何も悪いことはしていない」と、自らに免罪符を与えるのです。
しかし、真珠湾攻撃にしても、あれが奇襲でなかったことは明白です。
実際にはアメリカが日本に喧嘩を売っていたのです。フライング・タイガース(注)などで日本軍を攻撃し、オランダなどとともに石油の輸出も止めています。
アメリカは、日本が先に攻撃するようにけしかけていたのです。ただ、アメリカがそうしたのは、ヒトラーのドイツを攻撃する口実が必要だったということも事実です。しかし、ドイツのユダヤ人迫害にアメリカが背を向けた一方、日本は救ったことも付け加えておきます。
──最後に、先ほど話題に上った、靖国参拝と憲法9条について考えを聞かせてください。
私は靖国神社に2度立ち寄り、2回とも祈りを捧げています。退役米軍の兵士と訪れたこともあります。靖国参拝は日本人の問題です。他国が口を出すべきことではない。
過去にカンボジアやベトナム、朝鮮を攻撃したからといって、誰かが「アメリカの大統領はアーリントン国立墓地を訪れるべきではない」と言っても、聞く必要はないのと同じです。
また、日本は憲法9条を改正すべきだと思います。こういう指摘は日米両国で不評を買うかもしれませんが、日本は自国を守れるようになる必要があります。もちろん、日米同盟をできるだけ強固にしておく必要がありますが、本来、国防を他国に頼るべきではありません。
戦後、多くの日本人は「先の大戦の日本は犯罪国家だった」という自虐史観に染まってきた。だが近年、歴史の検証が進むにつれ、「犯罪」が、実は戦勝国や反日的な人々のつくり話であったことが分かってきた。
ヨン氏がインタビューで明らかにしたように、戦勝国であるアメリカ政府が主導した調査で、慰安婦の強制連行だけでなく、連合軍が日本の戦争犯罪の証拠として取り上げた南京大虐殺や731部隊の人体実験などの証拠が、何一つ見つからなかった事実は極めて重い。
また、アメリカを舞台にした慰安婦問題をあおっているのが中国政府であり、そこには「日本・アジアの侵略」という意図があるという事実も見逃してはならない。
中国や韓国が、異常なまでに歴史問題で日本を批判するのは、決して過去の清算のためではない。日本を外交的に孤立させるためだ。
「戦争は外交の延長」と言われるが、この歴史をめぐる言論戦は「外交」そのもの。つまり、中韓の言い分に日本人が反論しなければ、国際世論は「日本悪玉史観」で固まってしまう。
そうした環境が整った時、経済的、軍事的に強大になった中国が狙うのは、ナチスドイツが行った「ユダヤ人迫害」の日本版であろう。
来年は戦後70年を迎える。この節目の年に、まず日本人がなすべきは、自虐史観の象徴である「河野・村山談話」の白紙撤回だ。
自民党内では、新たな談話を出すという議論もされているが、出すのであれば、官房長官談話などの中途半端なものではいけない。自虐史観を断ち切り、日本の誇りを取り戻す新しい「首相談話」が必要だ。