◆自衛隊が最も警戒すべき中国軍の5つの兵器(JB-PRESS)
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尖閣諸島をめぐる日本と中国の軍事衝突の危険がワシントンの軍事専門家たちの間で現実の可能性として語られるようになった。
その衝突がどのような規模と形態となるのか。その予測は難しいが、中国側が強化を続ける軍事態勢のなかで日本側が特に警戒すべき
5種類の兵器がこれら専門家によって指摘された。彼らは、尖閣をめぐる衝突の危険を踏まえながら、「中国軍の5種類の兵器」に注意せよ、と警告する。
ワシントンでは中国人民解放軍の動向についての研究が活発である。米国の国家安全保障にとって、
また国際情勢にとって、やはり中国の軍事面での動きが最大の懸念の対象だということだろう。
共産党一党独裁の中国は、軍事動向をいつも秘密のベールで覆い隠している。
それゆえ米側にとっては情報収集や戦略分析に力を入れざるを得ない。
ワシントンでのそうした中国軍事研究でも、最近は中国と日本の軍事衝突の危険性
を語る向きが増えてきた。言うまでもなく尖閣諸島をめぐる日中両国の対立のエスカレートの可能性である。
日中両国の部隊がたとえ偶発にせよ、交戦状態となったらどうなるのか。当初はどんな形で戦闘が発生し、どんな形でそれが発展して、
どんな結果を迎えるのか。米国の関係機関ではシミュレーション(模擬演習)に近い具体的な研究がなされている。
戦闘機、揚陸艦、ミサイル、給油機・・・
そうした研究のなかで最近、特に関心が集まっているのは中国軍の新鋭兵器である。中国軍が万が一、
日本の自衛隊と交戦する場合、どんな兵器がどんな威力を発揮するのか。
この点は日本の同盟国である米国の軍部や政府にとっても他人事ではない。
その研究の成果をまとめた論文が1月中旬に米国で発表された。
それは、『ナショナル・インタレスト』いう外交・安保・政治の雑誌の最新号に掲載された
「日本が恐れるべき中国軍の戦時の5種の兵器」というタイトルの論文である。
筆者はカイル・ミゾカミ氏。
アジアの安全保障などに詳しい記者で、米国の中国研究の専門家たちの見解をまとめた形をとっている。
同論文は、尖閣諸島をめぐる日中対立が実際の戦闘へと発展した場合、
日本の自衛隊への大きな脅威となる中国軍の兵器として、以下の5種類を挙げていた。
(1)J-20ステルス戦闘機
この航空機は、対空、対艦の攻撃能力の高い、レーダー捕捉の難しいステルス性能の第5世代最新鋭戦闘機である。
迎撃、爆撃などの機能を有し、自衛隊の主力戦闘機F15Jへのこれまで最大の脅威となり得る。
尖閣有事ではJ-20は日本側のF15Jを圧倒して、制空権を奪い、
さらには沖縄や九州からの日本側の支援の兵員や物資の動きを遮断する機能を果たせる。
J-20は現在、開発の最終段階にあり、これまですでに6回の試験飛行が実施された(直近では2014年11月と12月)。
米空軍では、2017年か2018年に実戦配備されると見ている。
(2)S-400地対空ミサイルシステム
多目標同時交戦能力を有する地対空ミサイルシステムで、1大隊がミサイル発射機12基、その1基ごとに4発の40N6ミサイルを装備している。
40N6ミサイルは射程400キロ。1大隊が合計12基から、合わせて48発の対空ミサイルを発射できる
尖閣有事では、中国軍はこのS-400を用いて日本の自衛隊や米空軍の航空機を中国本土から攻撃できることになり、
日本側の対潜哨戒のP-3CオライオンやF-15J戦闘機の威力が大幅に削がれるおそれがある。
S-400は本来ロシアで開発された。中国軍はその6大隊分を購入しようとしている。
対空ミサイル網としての性能は、日本が保有するPAC-3パトリオット地対空ミサイル網を越えるとされる。
(3)071型揚陸艦
中国軍が尖閣攻撃作戦を実行する際は、尖閣諸島への地上部隊の上陸が決定的な目標となる。
のための手段が、このドック輸送型輸送揚陸艦(Type071LPD)となる。
満載排水量は2万トン。最大で約800人の上陸用海兵隊、18隻の小型上陸用舟艇、4機の輸送用ヘリコプター、
1~2隻の水陸両用ホバークラフトなどを艦内に搭載できる。強襲上陸作戦の準備をほぼすべて艦内で完了できるのが特徴である。
中国海軍はすでにこの071型揚陸艦4隻を実戦配備している。
そのうち3隻は南海艦隊に所属し、南シナ海や台湾を任務対象としている。他の1隻は東海艦隊に所属している。
そのほかに1隻が改装中、もう1隻が建造中だ。その2隻は近い将来、東海艦隊に配備され、尖閣作戦に関わる可能性がある。
地上部隊の尖閣上陸には、この071型揚陸艦の出動が唯一の手段となるが、
同艦からヘリやホバークラフトを飛ばして少数兵員を強行上陸させ、日本側の実力反撃を未然に封じてしまう見通しもある。
(4)DF-21A中距離弾道ミサイル
中国軍は日本全土を射程内に入れた中距離弾道ミサイルDF-21Aを、すでに自国内に多数、配備している。
固体燃料を用いる同ミサイルは射程2150キロ。
1990年代中頃から開発され当初は台湾を標的とするミサイルとされてきたが、
その後、性能が向上し日本との有事用とも見なされるようになった。
弾頭は非核の通常型が主力だが、核弾頭、化学兵器弾頭の装備も可能だ。
中国軍は有事の核戦力のなかにも同ミサイルを組み込んでいる。命中精度は極めて高いと見られる。
日本との有事では、日本の空港、燃料保存所、政府機関施設、通信、防空の諸施設、自衛隊各基地などの攻撃に使うことをも想定している。
同クラスの中距離弾道ミサイルDF-21Dは、中国軍の対艦攻撃力の主力として浮上してきた。
米海軍の艦艇が台湾有事などで太平洋上の遠方から中国方向に進んでくる場合に攻撃して踏みとどまらせる「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」のための主力兵器とされる。
(5)IL-78給油機
中国軍にとって、日本との交戦では空での戦闘が決定的に重要となる。だが、中国側の主力空軍機のほとんどは、
本土から400キロほどの尖閣諸島への往復飛行ができるものの、700キロほど離れた沖縄、九州、本州などへの出撃には、
J-10戦闘機など多くの空軍機にとっては航行距離が長すぎることになる。そのために重要になるのが「空中給油」である。
中国軍はこの空中給油能力をまだ保持しておらず、2005年頃からロシアのIL-78給油機の購入を試みるようになった。
だが、その購入はうまくいかなかったため、中国はウクライナに接近し、2014年末までに3機のIL-78機を買ったという情報がある。
そのうち1機はすでに中国軍の配備対象になったと見られる。IL-78機は1機でJ-10機、20機に空中給油する能力があるとも伝えられる。
今後、中国軍が同機の配備に全力をあげていくことは確実であり、
日中間で戦闘が発生した際も中国側のこの空中給油能力の状況が形勢を大きく左右することになる。
国家の安全保障に欠かせない最悪の事態の想定
以上が『ナショナル・インタレスト』誌に掲載された論文の要旨である。
尖閣諸島をめぐって日本と中国との軍事衝突の危険が高まるなか、この論文は最悪の事態を想定し、
日本側にとって中国の軍事能力のどこが最も脅威なのかを明示している。
もちろん、軍事衝突という事態は避けるべきであり、あってはならないことである。
しかし、最悪の事態を可能性のあるシナリオとして考えておくことが国家の安全保障に欠かせないことは事実だ。
そのシナリオを検討するにあたって、この論文の警告は非常に有益なものだと言えよう。