ギリシャがさらなる緊縮財政を受け入れ ヒトラーを生んだ時のドイツの二の舞?
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ギリシャ政府と、同国にお金を貸してきた欧州連合(EU)各国との間で、財政支援の合意が見られた。
しかし、850億ユーロ(約14兆円)にも上る支援を受ける前提条件として、ギリシャはさらなる緊縮政策を行わなくてはならない。ギリシャ議会が、緊縮財政案を可決したことを受けて、首都アテネでは暴動が発生している。
それもそのはず。ギリシャのアレクシス・チプラス首相率いるシリザ党(急進左派連合)は半年前、緊縮財政に反対することを掲げて政権を勝ち取った。また、「EU側の条件を受け入れるかどうか」を決めるギリシャ国民投票で、明確な「No」という答えが出たにもかかわらず、EUの条件を飲んだのだ。今回の条件受け入れは、ギリシャの民意に反していると言えなくもない。
ドイツが繰り返す間違い
実は、他ならぬドイツも、過去にギリシャと同じような状況に追い込まれたことがある。
1930年代、第一次大戦の戦後賠償金を払うために、ドイツは緊縮財政を行った。政府のお金を、借金の払い下げに使うために、あらゆる政府歳出を削ったのだ。その結果、金回りが悪くなり、失業率は急上昇し、国民の不満は高まった。結果、ドイツ国民は過激な主張をする政党に投票するようになった。その過激派の中に、ヒトラーもいたのだ。
現在のギリシャは、「金回りの悪化」「失業率の急騰」「国民の不満の爆発」といった悪条件は全て満たしている。その結果、極右と言われ、移民排斥政策などを呼びかけているゴールデン・ドーン(黄金の夜明け)党が急速に台頭してきた。
ギリシャが第二次大戦に突入していったときのドイツと同じ道を歩むとは限らないが、「どんなに経済が悪くなっても緊縮財政という条件は遵守すべし」というドイツのルール至上主義が、ギリシャに出口のない苦しみを与えていることは確かだ。
出口がない議論ではなく、問題の解決を
英国会議員アンドリュー・タイリー氏は、「ギリシャが借りたお金を返すことは不可能」であり、「借金の一部を許す以外に出口はない」と、英インディペンデント紙に投稿した。
問題の根本がギリシャ側にあることは確かだ。自分たちが維持できる以上の生活水準を享受するためにお金を借りてきたツケを、ギリシャは今払うことになっている。
しかし、ドイツ側も、緊縮財政を強要することで、問題の悪化を招いている側面がある。
現段階では、ギリシャがユーロ圏を離脱し、一からやり直すことが正道と言える。ドイツや他の国々に依存せず、支配もされず、たとえ苦しくとも自分たちの努力と能力で国の未来を切り開いていくことが、西洋民主主義の源流を汲むギリシャの本来のあるべき姿ではないだろうか。(中)
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2015年7月12日本欄 なぜギリシャは財政危機に? 「縁起の理法」とドイツの責任
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2013年5月号記事 ユーロ危機はどうなったの? - そもそモグラのそもそも解説
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