読者諸賢、御機嫌よう。ハウリンメガネである。
今回こそは正月から散々引っ張ってきた新年早々入手したニューギターのお話。
早速だが去年の年末、私が藤沢本町で編集長が復活させた『新ジェリーズギター』を訪ねた時に時間を巻き戻そう。
//////////////////////////
新ジェリーズに初来訪し、挨拶もそこそこに編集長と話し始めた私。
近頃の景気の話が一区切りついたところで店内に目をやると所狭しと竹林の如く並べられたギター。となればやはり話題はそちらの方へ。
「で、どうなんですか、安ギター・ショーの方は」
「おっ、やっぱり気になる?」
「そりゃあなたが『これは奥が深いぞ』ってメールをよこすんだから気にもなるでしょうよ」
「いや、そうなんだよ!俺も今、研究に研究を重ねてるところでさぁ!」
「でもあなたがそこまで言うってどんなモンなんですか?」
「んー、そうだなぁ……ちょっとこれ弾いてみてよ」
と、編集長、ショウウィンドウを兼ねた入り口のガラス戸に飾られたサーフ・グリーン・フィニッシュのストラトに手を伸ばした(実は店に入るときに「おっ、ポップなストラトが」と気になってはいたのだ)。
「これは?メーカーは?……メイビス!」
「そう!メイビス!」
「ありましたねぇ、メイビス……」
メイビス
イ○バシ楽器が販売しているオリジナルブランド(まあイ○ンでいう、トップ○リュみたいなもんですな)であり、新品として売られていた当時でも『アンプ、ストラップ、スタンド、その他小物も諸々つけて29,800円!』的な「ギターを始めたい方に!」という売り文句で販売されていたザ・入門者御用達ギターである。
(うーん、メイビスかぁ…… 激安ギターもいいところだよなぁ……)
と、内心訝しむ私を尻目に、「ま、弾いてみなよ。」と促す編集長。
早速失礼し、音出し開始(試奏アンプは編集長の愛用品にして私も持ってる『ヒュースアンドケトナー』の『メトロヴァーブ』にして、ドイツ製の名機!)。
……ん?
……お?
……おうおう。
……おうおうおう!
……いいぞこれ!
そして
「ちょっと編集長!なにこれ!」
「そうなんだよ!イケるだろ!?」
「イケるねぇ!」
と、思わず敬語もすっ飛ばし、こりゃスゴい、ありゃスゴい、と弾き倒しながら、編集長に問うてみる。
「うーん、スゴいな……入門レベルとは思えん……これってメイビスが頑張って作ってたってことなんですか?」
「いや!それは違うんだよ!メーカーでどうこうって話じゃないんだ……」
という所から編集長の研究成果の話を聞かせてもらい、「ははぁ、そんなポイントが」やら「あー、確かにそれは正しい気がする!」と相槌を打ちながらギターを弾く手が止まらない私。
「うーん……なるほどねぇ……これナンボ?」
「税込14,000円!」
「14,000円!」
あまりの値段に思わずオウム返しする私(かつてのジェリーズギターであれば高いという意味でビックリしていたものだが、まさかここにきて安いという意味でビックリするとは思わなんだ)。
(うーん、14,000円かぁ……でもなぁ……新幹線代も高かったしなぁ……物価高にヤラれて俺もボンビーだしなぁ……)と顔をしかめるも、やはりギターを弾く手が止まらない。
「まあ、正月にまた来た時に考えなよ」という編集長の声を背に実家へ向かったのが去年の年末。
そして年は明け、正月。
ジェリーズに向かう私の財布の中にはしっかりと銀行で下ろした14,000円が……!
……と前置きが長くなったが、そんないきさつで私が買ったニューギターがこのメイビス・ストラトキャスタータイプなのであります。
御覧頂きたい。このジェフ・ベック御大を想起させるサーフ・グリーン・フィニッシュに、なんともポップでキッチュなパールホワイトのピックガードというルックス!(ちなみにこのパール柄、通常の3プライホワイトのピックガードにペラッペラのパール柄プラ製化粧板を貼り付けた代物で、弾いてるうちに袖に引っかかって剥がれてきたが、まあ御愛嬌である。こういうところにコストカットの努力が見えるのが涙ぐましい)
ペグはロトマチックタイプで、ブリッジサドルはブロックタイプ。チューニングも安定しているし、肝心の音も、びっくりするほど普ッ通ゥゥゥのモダンでファットなストラト。
ピックアップの出力がデカいのかコンプ感はあるが、ピッキングに対する反応はとても素直で、おかしなピーク感もなく真っ当にパワフルなストラトサウンド。
弾き心地も上々で、特にネックのシェイプと触り心地についてはヘタをすれば手持ちのギターの中でも上位に入る良好さ。
こう書くと「……普通のことでは?」という反応が返ってきそうだが、冷静にお考え頂きたい。
これ、14,000円ですよ?
編集長に聞いたところ、調整こそ研究成果を詰め込んで大いに仕上げたものの、ピックアップ含むパーツ類はストックのままとのこと。
確かにアクションが多少固いペグがあったり、先述の通りピックガードの化粧板が剥がれたりと所々に多少のチープさは見受けられるものの、音と弾き心地に関してはヘタな近年USメイド品と比べても全く遜色を思わせない出来。
普通、2万円未満のギターといえばペグもブリッジもメタメタでチューニングは合わない、ピックアップはやたら下品でギタギタに歪ませるしか使い道がないか、パワーがなくてショボショボ、買ったはいいがどうにも使いどころがなくなり、初心者にプレゼントしてしまうか、リサイクルショップに無料で引き取ってもらうかの二択、というのが相場だというのに、なんとこのギターの真っ当なことか!
もちろん全てのメイビスが良いわけではないし、安ギターは所詮安ギターだなというモノも世の中には溢れているのだが、モノによっては調整さえきちんとしてやれば真っ当なギターとして通用するものがあるということなのである(なお、この辺の詳しい話が聞きたいという人は実際にジェリーズギターに行って編集長から直接聞いて頂きたい。長くなるので)。
無論ヴィンテージと比べれば楽には弾けないし、それ故にプレイヤーとしてのスキルは要求されるが、気を入れてしっかり弾いてやるとヴィンテージとは違う、モダンなギターの良さにも気付かされる。
パワフルなアウトプットが生み出すパンチの効いたサウンドはリアで弾けば普段あまり出てこないカントリーなメジャースケールのフレーズが自然と出てくるし、フロントに至っては箱モノ並みにボトムエンドが出るので違和感なくジャズが弾けるという使い勝手の良さ(センターのセッティングはまだ決めかねているが、ハーフトーンが気持ちいいのでそこを目安に調整中)。
先日火曜の『今週のハウリンメガネ』で、当ギターの歪みセッティング迷走中と書いたが、そもそもハードに歪ませるより、少しドライブさせたツイードアンプのような、パリッとしたクランチが一番美味しいギターに仕上がっており、「安物のギターなんか使い物にならねぇよ!」とは一概に言えんなぁ……と中々に意識改革させられてしまうギターなのである。
実際に編集長が店に出している実物を買い、「もしかするとこの手のギターはベテランの方が楽しめるのでは?」と考えさせられてしまった。
単純にギターとしての出来が良いので初心者が買うギターとしても文句ナシに勧めることはできる(ジェリーズで並んでいる編集長がメンテした品に限った話だが)のだが、ギターの音の引き出し方を理解できていないと、値段が値段故に「このパーツ交換したらいいのかな?」という発想に行ってしまう気がするのだ。
逆にある程度ギターの音の引き出し方(調整技術も含む)を理解した人であればストックのままでも、「フロント、音太っといなぁ……抜けが悪い……あ、でもピッキングポジション次第で抜けてくるな。ここがスウィートスポットか」というようにプレイスキルでカバーできる点が大変多いのである。
ギターというのはやはり弾いてナンボ、調整してナンボのもの。
ベテランにこそお試し頂きたい!そんな新ジェリーズギターの不思議に魅力的な安ギターラインナップ…… コレ、面白いですぞ!
といったところで普段は60年代ストラトを弾く『ハウリンメガネ・リポート』でした。
さあ、メイビスが俺を呼んでいる!じゃ、また!
<ハウリンメガネ筆>
ご意見・ご感想・記事投稿・編集長の講演・演奏・執筆依頼などは『コメント欄』もしくは『ハードパンチ編集部』までどうぞ!
『ハウリンメガネ』への演奏依頼もコチラから!
https://hardp.crayonsite.com
編集長『MASH』が経営するギター専門店『Jerry's Guitar』公式サイトはコチラ