2月29日

日々の思いつき及び読書の感想

読書 武田徹著『原発報道とメディア』(講談社現代新書)

2012-01-28 01:20:46 | 読書

本書は、原発報道とマスメディアの現状について分析をしている。

しかし、作者の意見には組みできない点がある。

原発のリスクの高まりは、「反原発運動と原発推進の国策、電力会社の施策が絡み合」った結果だという。なぜ、反原発運動もそのリスクを高めたかというと、新たな原発用地の確保が難しくなり、原発が現在ある場所で増設及び使用済み核燃料の保管をしなくてはならなくなったからだという。これは説得力がない、なぜなら、仮に反原発運動がなくても、福島に原発が集中しなかったとはいえないからだ。福島第一原発がある周辺町村のいくつかは、既存原発の固定資産税収入がなくなり、財政危機に直面し、自ら増設を検討していたからだ。つまり、因果関係がないのである。ここで、私にはわからないのは、反原発運動側にも、原発事故の責任を負わせようとしていることだ。原発推進派が受け入れられるような方法をとるべきだったといって。一方、原発推進派がもっと反原発運動側の意見を取り入れるべきだった(そうすれば、今回の福島原発事故を防げたかもしれないのに。)とは言わない。

また、著者はメディアの情報の選択の重要性を繰り返すが、そこでは情報の判断の主体が送り手にあるとする前提があるように思われるが、それは違う。情報は情報の受け手が判断するものではないだろうか。特に、今回の福島原発事故による膨大な量の放射性物質の放出については、人命に関わる重大な事項であるので、政府やメディアが一方的にその危険性を判断すべきものではなく、その放射性物質が到達した地域の住民が判断すべきだったのは明らかだろう。

 

 

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 読書 大島堅一著 『原発のコ... | トップ | 津波の恐ろしさ »

読書」カテゴリの最新記事