僕自身が設計監理を行ってきた住宅の
2~3割が2世帯住宅や3世帯住宅です。
また僕自身も約25年程前に
親世帯と暮らす為の2世帯住宅を建てました。
今回は二世帯・三世帯での暮らしと同居について
少し書いてみたいと思います。
2世帯住宅という名前は
商品価値のネーミングとして
つくられたものですが、
もともと日本の伝統的な住まい方は
空間を共有した状態で
母屋や離れなども含めての
2世帯、3世帯住宅でした。
しかし、若い世代の意識の変化や
社会環境の変化といった
さまざまな要因により核家族化が進み、
これが一般的な住まい方として
定着したのも確かです。
都市への人口集中や
バブル前にこの核家族化の傾向や
住まいに対する考え方に
変化が出てきたのではないかと
言われていますが、
再度ここ最近2世帯住宅のニーズが
非常に高まったように思います。
企画段階での家族の関係性。
戸建て住宅にあっても、
そこに住む人の中での
意見や趣向の違いはありますが、
多くの場合、夫婦間でも
意見の違いは生じます。
しかしこれが異なる世帯同士となると、
家づくりに加わる方の人数は増え、
親子関係とはいえども異なる世代であり、
異なる生活スタイルや
意見を持たれた方が加わることになりますし、
費用の負担に関連することも
重なりますので
皆の意見を集約させて、
方向性を定めるのは極端に難しくなってきます。
家族の皆さんが家づくりに対して
基本的に同じ方向性を
見いだしている場合には
スムーズに家づくりが進みます。
しかし家族の中のひとりだけが
特に主導権を持っていて、
他の人と意見が異なったり、
他の人があまり口をはさめないような場合、
或いは家族の中でひとりだけが
自分の意見を言う場が
少ない場合等は
家づくりがスムーズに運ばなくなったり
場合によっては
家ができた後になってから
もめてしまう大きな要因になります。
家族の関係や性格、
希望する家や暮らしのスタイルは、
自分たちが一番よく知っている。
このような思い込みが、
時として大きな失敗に
つながる場合があります。
当事者ゆえに見えないこと、
言えないことも多いものです。
夫婦間での生活でもそうではありませんか?。
せっかくの2世帯住宅が、
以下のようにならない為にも、
信頼できる設計者に
お互いの家族像を見直してもらい、
2世帯間の適正な距離の提案を
受けることが
2世帯住宅の成功の
大きな鍵のひとつになるといえます。
建築の知識と共に、
2世帯住宅の計画を
何度も経験している設計者が
家の基本的な計画段階(企画段階)から
話に加わることは、
失敗しない家づくりに
非常に有効なものと考えます。
例えばですが親世帯の例として
■全般
・子世帯にまかせて家をつくったが、
前の家の方が住みやすい
・同居したら孫のめんどうは祖母の役目?。
・もう少し静かに暮らしたい
・茶の間の上に孫のピアノがあり、
テレビの音が聞こえない
■ほとんど同居型・部分分離型
・両世帯共用のリビングにしたら
親世帯の居場所がなくなってしまった
・両世帯共用のキッチンにしたら、
食事の好みが合わないので
小さくても自分たち用のキッチンをつくれば良かった
・両世帯共用の浴室にしたら、
ゆっくり長湯ができなくなってしまった
・玄関を共有したのは良かったけれど、
郵便の仕分けは親の係?
■完全分離型
・子世帯への行き来が不便
・それぞれのスペースが
予想以上に狭苦しい
子世帯の例
■全般
・設計の打ち合わせは両世帯一緒、
遠慮から自分の意見を言えず、
希望の家にならなかった
・親の希望での2世帯住宅、
メンテナンス費用や税金まで
子世帯が負担することになってしまった
・木造2階建ての2階を子世帯に
階下の親世帯への音や振動が気になってしかたがない
・親世帯の寝室の上に子供部屋をつくってしまった
・吹き抜け越しに親世帯のたばこの煙が
上がってきてつらい
■ほとんど同居型・部分分離型
・お風呂を共有。
子供は早く入れたいのに、
入る順番で遠慮してしまう
・同居型としたものの、
日常の生活リズムのズレから、
家事の時間が倍増してしまった
■完全分離型
・完全分離型にしたのに、
親が何かと子世帯に顔を出して困る
・完全分離型にしたのは良いけれど、
親世帯に行く用事のたびに
玄関から外に出なければならない。
それぞれの意見や希望をまとめること。
単世帯の住宅でもそうですが、
住まいをつくるにあたっては、
敷地条件やコスト、
工期などさまざま制約の中で
考える必要がありますが、
これらをふまえながら、
家づくりの基本的な方向性を決めることは、
計画にあたっての第1段階です。
この第1段階を明確にせずに、
いきなり具体的な計画を
進めることは是非避けるべきものと
考えています。
また、これは非常に重要なことですが、
お互いの世帯の行き来や
それぞれの世帯に対する
干渉といった面において、
それぞれが節度を持てるか否か?
義理とか経済性だけで
住まいの計画を進める」いうことは、
計画の開始段階において
最も注意すべきことと考えます。
仮に玄関を含めて
完全に分離された家にしても、
生活上の過度の干渉の有無といったことは、
建築的な配慮だけでは
解決のできない場合があります。
住まいが生活上の
ストレスになってしまうこのような事だけは、
何としても避けなければならないことです。
建築計画前述した
第1段階(企画)においても、
ある程度は建築計画を
考慮する必要がありますが、
2世帯住宅への方向性が定まれば、
いよいよ具体的な建築計画を
検討することになります。
そこで、
2世帯住宅の基本構成について、
「ほとんど同居型」、
「部分分離型」、「分離型」という
タイプ別に
そのメリット、デメリットを少し。
2世帯住宅の基本構成。
分離型から同居型まで
2世帯住宅は大きく分けて、
一般に次の3つのタイプとなります。
<完全同居型>
それぞれの世帯の寝室を除き、
玄関、LDKをはじめ浴室、
トイレ等ほとんどを共有するタイプです
<ほどほど同居型>
寝室やLDKはそれぞれ分離、
玄関をはじめとして浴室、
トイレ等を共有するタイプです
LDKの一部を共有としたり、
トイレも分離する等、
様々なパターンがあります
<分離型>
玄関を除きすべてを分離するタイプ。
<完全分離型>
玄関も含み完全に内部空間で
行き来が出来ないタイプ。
法律上も長屋又は重層長屋扱いとなります。
タイプ別のメリットデメリット
<完全同居型>
■メリット・お互いの世帯の
相互理解が欠かせないものながら、
ひとつ屋根の下で大家族ならではの
良さを共有できます。
狭い床面積でも建築可能で、
比較的に家全体を
ゆったりと計画することが可能です。
特に建築コストのかかる
水廻りが共有されるため、
全体の工事費を抑えやすい。
■デメリット
お互いの世帯の意識のズレから、
我慢して住む家となる可能性があります。
→メリットも大きいものながら、
お互いの家族がそれぞれの生活を
尊重できなければ成立しにくいものです。
昔ながらの「家族はひとつ」という考え方は、
現代では通用しにくいものです。
寝室以外にも各世帯の
プライベートな部分を用意するとか、
庭越しに距離をおける
場所を用意する等による工夫をすると、
解決できることも多いものです。
<ほどほど同居型>
■メリット2世帯の間の協議により、
共有する部分と分離する部分とを
合理的に分けることができます。
■デメリット2世帯の間の合意を
得やすいことから、
比較的デメリットは少ないと考えられます。
しかし同居型に比べると、
広い床面積が必要となり、
建築費もかなり多く必要となります。
<分離型>
■メリット・2世帯それぞれの
生活スタイルや趣味を
最も尊重できるものです。
区分登記が可能となり、
住宅ローンや税金面で有利となります。
■デメリット
2軒分の床面積が必要となり、
敷地や予算が潤沢な必要があります。
これを無理にしてしまうと、
かえって各世帯が狭く、
住みづらいものとなってしまいます。
完全分離型
■メリット・世帯間の行き来が
内部構造的に出来ない為
互いの干渉が少なくなります。
間取り構成や計画性によっては
賃貸が可能です。
■デメリット・住宅ローンを活用する場合、
計画内容について
金融機関窓口と将来的な利用方法を含めて
検討が必要です。
左右分離型か
上下分離型かによって
リスクと工事資金面が大きく異なります。
2世帯住宅の計画あたっては、
単世帯とは異なり、
名義やローン、税金対策といったことも、
あらかじめ知識として
お持ち頂くことをお勧めします。
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