社会保険労務士の大澤朝子です。
本日は、たった3日で1か月分の賃金をもらった、というお話です。
態度が悪くて悪くて、どうしようもないアルバイトさんがいました。
入社3日目。堪忍袋の緒が切れて、上司はこの人を即刻「クビ」にしてしまいました。
そのアルバイトさん、どこから聞いてきたのか、ひどく知識が豊富。
会社に対し、解雇予告手当(平均賃金の)30日分を請求してきました。
<質問>
会社は、解雇予告手当を支払わなければならないでしょうか?
<回答>
就業規則または労働契約書に「試用期間」が明確に定められており、
かつ、入社14日以内ならば、使用者に解雇予告手当の支払い義務はありません。
定められていなければ、使用者に支払い義務があります(労基法第21条第四号)。
「試用期間」が労働契約上明確であり、引き続き14日を超えて
雇用した場合は、たとえ「試用期間中」であったとしても、使用者に
解雇予告手当の支払い義務が生じます(同)。
この会社、就業規則もなければ、労働契約書もかわしていなかった・・・。
つまり、そもそも「試用期間」なるものは、存在していなかったーー。
こうなると、使用者側に解雇予告手当の支払い義務が生じます。
3日しか来なかったアルバイトさんですが、労基署に駆け込み、
解雇予告手当30日分を手に入れてしまいました。
即日解雇の解雇予告手当は、「平均賃金」の30日分ですから、
3日働いて、ほぼ1か月分の賃金を得た勘定になります。
こういうこともありますので、当事務所で作成する就業規則、雇用契約書の雛形には、
必ず「試用期間」を入れています。
アルバイト、パートでも労働基準法上の「労働者」に変わりありません。
多様な雇用形態を持つ会社さんでは、きめ細かな注意が不可欠といえましょう。
<参考>
労働基準法第21条
「前条の規定(編注:解雇予告手当の規定)は、左の各号の一に該当する
労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が1箇月を
超えて雇用されるに至った場合、第二号若しくは第三号に該当する者が、
所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合又は第四号に
該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、
この限りではない。
一 日日雇い入れられる者
二 2箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者」
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