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【振り返り】弁護士が守るべき事は依頼人の利益か弁護士の倫理か?苦過ぎる結末『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』第5話「ドタバタVS腹黒策士」

2022-08-03 | 備忘録
-『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

クォン・ミヌ弁護士が学生時代のあだ名、”腹黒策士”を発揮するエピソード。このエピソードは思いの外に苦味があり、且つヨンウにとって重要なエピソードだと思います。だからこそコメディパートとロマンティックパートが多め笑

あるATMメーカーが実用新案を申請し、競合ATMメーカーのその実用新案特許を侵害していると訴えます。アメリカで公開されたATMのオープンソースの設計図を基に依頼人の会社がATMを作ったのか、それともそのオープンソースの設計図と関係なく開発したのかが争点として争われます。


ATMの専門知識が必要な裁判であるにも関わらず、クォンとヨンウが担当になった事をクォンだけがチョン・ミョンソク弁護士から聞いており、クォンはヨンウにその事を知らせませんでした。必要な資料も依頼人とのミーティングの直前まで知らせていませんでした。

クォンにその点を抗議すると、嫌だと突っぱねられます。ヨンウとクォンは新人であるが、雇用契約は1年契約であり、ライバルであると。ライバルであるからには、助け合いをすべきでは無く、勝ち負けがあるのだとクォンはヨンウに宣戦布告します。それを受けて立つヨンウはこれまでに無く、裁判の"勝利"に拘泥していきます。


何故クォンはそんな事をするのか?クォンは、ヨンウが退職届を出した一件で無断欠勤となっていた事が咎められていない事を根に持っており、ヨンウに攻撃的な態度を見せていきます。今振り返ると、第1話の時点でヨンウの履歴書に貼ってあったハン・ミニョン代表のメモ書きを目にした時からクォンはハン代表とヨンウの関係を勘ぐっていました。

後々のクォンの発言から推察すると、クォンは恐らくエリートでは無く、コネも無い人物なんだと思われます。だからこそ、ヨンウへの配慮やコネに対してはムキになって反応するのだと思います。このクォンの行動は韓国社会が競争社会である事、またコネ・縁故主義的である事への批判の様にも読み取れます。


依頼人とのミーティングのシーンでは、また別の側面の韓国社会批判が見てとれます、兵役時代に所属していた部隊の話で盛り上がる依頼人とクォン弁護士。それにチョン弁護士のシーン。女性であり、兵役義務の無いヨンウは話の輪に入って行けません。ここにも韓国が男性社会、縁故社会である事がサラッと描かれます。(途中から入ってきたジュノの所属部隊は?と言う質問をサラッと交わし、兵役話で盛り上がる彼らに冷たい視線を向けるのは何故なんでしょうか。)


裁判に際して、ヨンウはジュノと共に依頼人の会社へ向かい、依頼人たちが嘘を付いて居ないか確認するのですが、その前に依頼人たちが嘘を付いているか居ないのかを判断するための練習を車の中でします。こんなにロマンティックでキュートなシーン入れるかね?最高です。

Park Eun-bin asks Kang Tae-oh how he feels about her | Extraordinary Attorney Woo Ep 5 【日本語字幕 CC】



ヨンウからの練習問題に面食らいながらもくぐり抜けたジュノとヨンウは、依頼人の会社の開発部のチーム長が本当の事を言っているかを聴取するシーンが展開されます。このチーム長への聴取シーンの演出の見事さに見返すと驚かされます。絵に描いたような嘘つきであるチーム長とのやり取りが非常にコミカルに描かれますが、このシーンもこのエピソードで重要であると言うのがこのドラマの侮れない部分です。


聴取後、再開された裁判の結果、依頼人の主張が認められて競合メーカーのATMは販売差し止めの仮処分を受ける事になります。それを受けて、競合メーカーは非常に危機的な状況に。そんな最中に競合メーカーの社長はヨンウだけに手紙を寄越します。それはヨンウの良心に訴えようとする必死なメッセージでした。「勝つだけの有能な弁護士になりたいですか。真実を求める立派な弁護士になりたいですか」と。


そんな中での「春の日差し」事件です。

Park Eun-bin gives Ha Yoon-kyeong a special nickname | Extraordinary Attorney Woo Ep 5 【日本語字幕 CC】


このシーンは涙腺を破壊しに来ています。第1話から語られてきたスヨンのヨンウに対する複雑な思いや、都度都度のヨンウに対するスヨンの行動を踏まえて見ると、そりゃ泣きます。号泣しますよ…そもそも撮影の舞台裏を見ると、ヨンウ役のパク・ウンビンさんもスヨン役のハ・ユンギョンさんも演じる前の下読みの段階でうっすら泣いているんだもの。


結局、競合メーカーが依頼人のメーカーのATMがアメリカで公開されたオープンソースの設計図を参考にしていた事が明らかになり、競合メーカーへの販売差し止めの仮処分は取り消されました。ですが依頼人の本当の狙いは、仮処分によって競合メーカーの評判を失墜させ、大手銀行との商談をまとめる事だったと言う…

その為に、ヨンウたちハンバダの弁護士たちも法廷も利用された事に気付き、ヨンウは打ちひしがれます。クォンに勝つ事に囚われたヨンウは依頼人たちの嘘に気付きながらも見て見ぬふりもしていた事を思いしったから。

白眉なのは、ヨンウが悔しさの余り涙を流すシーン。ジュノに事の顛末を吐露し、悔しい気持ちを吐き出します。悔し涙を流すもののヨンウはうつむき表情は見えなくなります。ヨンウの弱った姿を目の当たりにしたジュノは抱きしめようとしたのか、手を差し伸べようとしますが途中で伸ばした手を止め引っ込めます。なんだこの強烈な演出は。凡百のドラマなら抱きしめる所をグッと堪える。頭が下がります。


事務所の自室に戻ったヨンウは、勝つだけの有能な弁護士になりたいですか。真実を求める立派な弁護士になりたいですか」とヨンウに問いかける競合メーカーの社長から届いた手紙を自室の壁に貼り付けて、戒めとする様子が展開されます。

[Bonus Clip] Woo Young-woo’s office gets a makeover 🌊 | Extraordinary Attorney Woo Ep 5 [ENG SUB]

上記はカットされたシーン。手紙を壁に貼る前に、捨てたと言っていたジュノからのプレゼントが捨てられておらず、そのプレゼントに喜ぶヨンウがファンシーに描かれています。このシーンがあっても良かったですが、やはり社長の手紙を弱めてしまう気がするのでカットして正解ですね。