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【振り返り】脱北者差別と母の愛とベテランの妙手、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』第6話「私がクジラだったら…」

2022-08-04 | 備忘録
-『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(Netflix

本エピソードの主役は、被告の脱北者の女性でも、被告である母と娘の為に奮闘するヨンウ弁護士でも無く、縁故主義的な”良い顔”した判事のおじさんでした。


脱北者の女性の強盗障害事件を担当することになった、ヨンウとスヨン。ミョンソクからはスヨンが被告女性に感情移入し過ぎてヒートアップしているからなだめてくれとヨンウは頼まれるも、被告に会うと娘と離れ離れになる状況に感情移入してしまいミイラ取りがミイラになる状況に。


本作は韓国における脱北者の過酷な現状や脱北者に対する差別が描かれます。本当にこう言う社会問題を真摯に描く姿勢とその姿勢を支える作品のクオリティに頭が下がります。また、被告の被害者が夫からDVを受けている描写に容赦が無く、この作品の本気の一端が見て取れます。

本作の被告である脱北者女性の描写も面白いです。ミョンソク曰く、"魔性"的な魅力を持った姉御肌で、全く論理的では無い破天荒な人物として描かれます。単に"可哀想な"人でも、乱暴者でも無く、です。


と、被告の人間描写も素晴らしかったのですが、出色なのは被告の裁判を担当する判事の男性のキャラクターです。

冒頭の顔合わせの際には、日本の本籍の様な東アジアの土地の概念、"本貫"を検事やヨンウ、スヨンに尋ね、"本貫"に関連するステレオタイプを開陳し、そのステレオタイプに重ねてヨンウを◯◯出身の人らしくないと言ってみたり、自身の"本貫"に距離的に近い'本貫"の検事に対して、親近感を示したりします。これまで描かれて来た保守的で、縁故主義的なおじさんとして描かれています。


最悪な判事が担当するんだと思いきや…終盤"ベテランの妙手"を発揮するどんでん返しには、このドラマの描くキャラクターの複雑さに圧倒されてしまいました。