アメリカのアングラコッミク原作者のハービー・ヴィーカーをモデルとした『American Splendor』シリーズと自身の癌闘病を生活を描いた『Our Cancer year』というエッセイコミックを原作とした2003年の映画。アメリカの人気トークショー、「デビット・レターマンショー」にも本人がたびたび出演したほどに著名な作者だからか、エッセイコミックという原作を活かしてか、映画の中にもハービー本人がナレーションを行い、また本人役として登場し、ポール・ジアマッティが主にハービーを演じているが、晩年のハービーはハービー自身が演じている。
太っていて怒っているような鋭い目つき。禿げ上がった頭は近寄りがたい不に気を見せる。子供のころから頭がよく、周りがくだらなく見えたハービーは実際に知識に長けてはいたが、大学を中退し、結局は退役軍人病院のカルテ係という仕事に甘んじている。趣味のレコード集めをしている際に『フリッツ・ザ・キャット』(あの帽子を被った奇妙な猫のコミック)の作者であるコミック作家のロバート・クラムと知り合い、自らの退屈な日常をありのままに描いた大人向けコミックの作成を提案する。
スーパーヒーローではない、アメリカの田舎のさえないおっさんのさえない生活を描いたエッセイコミックが徐々に人気を獲得していく。でも愛する妻は、それも学費を出して大学院にまで出してあげたインテリの妻は彼を捨てて出て行った。コミックは評判になるも、コミックだけでは食べてはいけず、病院のカルテ係を続けている。基本的にはさえない人生。そこにコミック原作者としての成功と新しい出会い、そして癌との闘いが描かれる。普通のさえない人生かと思えば、ハービーの人生は何だかんだで色んなもので満ち満ちている。
『American Splendor』の成功のおかげで、ハービーは人生を開けた。でもハービーは定年までカルテ係だった。ラストはハービー本人の退職パーティーで終わる。年金と映画のギャラが老後の頼りだとハービーは言う。確かに金銭的な大成功はハービーには無かったけれど、いかめしいあービーの顔はとても満ち足りているように見えた。映画は2003年公開だったけれど、その7年後の2010年にハービーは亡くなったそう。確かに退屈で苦難に満ちた人生だったのかもしれないけど、傍目から見たらそれは幸福な人生だったんじゃないと思える。
ちなみにハービーの妻ジョイス役にはジェニファー・アニストンも自ら立候補していたらしいけれど、日本語版のジョイスの吹き替えはジェニファー・アニストンの吹き替えで有名な安達忍が吹き替えを担当している。
特典映像にはカンヌ映画祭に主席したハービーたちの道中が収録されていたけれど、その中にはジャンクロード・ヴァンダムの姿が。2008年に差落ちぶれた俳優となったヴァンダムの日常を描いた『その男、ヴァンダム』が公開されているけれど、まぁ関係ないか。
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