ギターの制作・修理を進める中で、常に己の「スタンス」を考えます。昨年、とある情報誌に寄稿した文章を改めて読み返したところ、それなりにまとまっていたので、そのまま転載します。
当工房ではオーダーメイドのギター制作及びギター全般の修理・調整を行っています。国内外で多くのメーカーが数え切れないほどのギターを生産している中で、当方のような小さな工房が果たす役割とは何でしょうか?現時点での結論は「プレイヤー個々人の要望・志向性を十分に理解し、それを演奏に反映させられる様な制作・修理に特化すること」。それは、以下の4つの観点から包括的にギターを考察した結果、その解決策として導き出される答えでもあります。
1.ギター本体の特性…木製品であり且つ張力が生じるため、経年変化に伴う狂いは避けらず、よいコンディションを保つためには定期的な点検と補修が必要
2.プレイヤーの個性…音楽や演奏スタイルが多様化しているため、ギターの演奏性に対する要望も人によって異なる
3.メーカーの限界…不特定多数に向けた量産品としての特性上、生産の段階で個別のプレイヤーの好みに応えることは一部特注品を除き原理的に不可能
4.小売店の限界…販売段階で応対できる調整範囲は、主に費用負担面を考慮すると限定的にならざるを得ない
このような制約の中で、一人一人のプレイヤーの要望にきめ細やかに対応し、ギターのポテンシャルを最大限に引き出すこと、そこに当方のような工房の存在意義があります。より高度な音楽表現のために、裏方に徹することが仕事です。高い技術を提供できるよう、今後も研鑽に励みたいと思います。(転載終わり)
これからも、基本的にこのスタンスでやっていくつもりです。