麻生川の桜も随分と緑色に変わった。
なぜかは分からないのだが、高圧線の鉄塔に、
網がかぶせてあった。突如としてモニュメントが
出現したようで、目立つ。いつもはそこに鉄塔が
あることを意識していない。
数日前、銀座へ版画家の菊池さんの個展を観に行った。銀座の地下鉄の出口からひょこっと地上に顔を出すと、そこは、やはり人であふれていた。少し古びた縦細のペンシルビルの6階の画廊で、その個展は開かれていた。小さな画廊だった。菊池さんは、本来は版画家として知られているのだが、今回は、ガラス絵に挑戦したとのことで、案内のはがきを頂いていたのである。菊池さんの家と私の家は小さな谷ともいえないような谷を一つ挟んで、向こうの丘とこっちの丘、といった感じで歩いて直ぐである。だから、菊池さんは、よく案内のはがきを切手を貼らずに歩いて持って来て、私の家の郵便受けにポンと入れていってくれるのである。私はあまり個展というものは見に行かない方なのだが、ハガキの写真を見て、いつになく観に行く気になったのであった。場所が銀座だということもあっただろう。何となく最近、銀座づいているような気がする・・・。
作品はほとんどが人物、花などを対象とした小品で、こじんまりとした画廊の雰囲気とマッチして、実にいい感じだった。どれも温かみがあり、色も豊富で、観ていて自分でも目が楽しんでいるのが分かった。べた褒めの様になってしまうのだが、実際にそう思うので、それでよいと思う。全部で100点ほどあり、額縁も菊池さん自身で作ってしまったのだからスゴイ。この額縁がまた手作り感が出ていてとても良いのだ。ガラス絵という手法に私は今回初めて接したのだった。
ひとしきり楽しんで観た後、ビルの外へ出ると3時頃で陽が少し傾き、いい時間帯だった。銀座通りに面した近くのカフェー「パウリスタ」で、これもまた美味いコーヒーにありつくことができ、先程の少し高揚した気分からすっかり落ち着いた気分になった。
銀座の街をブラブラと歩きつつ海の方へ向かった。潮の香りがすると本能的にそっちの方へ向かうことが多いように思う。なぜかは分からない。いろいろな店を物色しながら、海の方からぐるっと廻って今度は日比谷公園の方へと歩いて行った。