明治村は行ったその日はほんとに陽ざしの強い日で、愛知県の記憶の中のあの暑い夏そのままだった。昼ごろには帝国ホテルを観るのにはとりあえずもう満足し、それから2時頃まで村内を歩いた。レトロな乗り合いバスも走っていたが、建物をざっと見ようとすると歩くしかなく、またまたカンカン照りの中を歩きだした。歩きつつ食べたものは、ガイドマップにてお勧めのコロッケ、2丁目レンガ通りに少し隠れ気味にある店のカレーパンなど。カレーパンは旅に出るとどうしてか分からないのだがよく買って立ち食いをする。コロッケはいろいろな観光地などで少し昔の味を再現して売っている類の中身がまろやかなタイプのもので美味しかった。けれどカンカン照り。小さなペットボトルの水では足りなかった。午後に入ったころから浴衣を着た女性が増え始めていて、どうしてなのかなと思っていたら、2時半頃から村内のどこかで花火大会があるとのことだった。昼間にやってもよくは見えないのになと思った。その日のチラシには、夜には花火大会があると書かれていたのだがどうなっていたのかはよくは知らない。暑く、2時頃にはもう体力の限界で花火など見る気は起きなかった。夏の暑い期間は夜涼しくなってからの時間帯が雰囲気もあって良いのだろう。
体力の限界が来る前に観るだけは観ておこうと思い、村内の5丁目から順に1丁目まで2時間ほど歩きまわってざっと観た。いろいろと貴重な建築物がそろっていて、何回かやって来ては花火やジャズのコンサートなどの催し物をも楽しみ、ゆっくりと味わっていくと良いところなのだろう、と思う。
ところで、ライト設計の帝国ホテルはもちろん私には観ごたえ十分だったのだが、2階にあるレストランの床は、人が歩くとかなり揺れる。ビールを飲んでいるときなど、そばを人が歩くと上下に揺れるのである。仕上げ面が振動しているのではなく、床板全体が揺れているようだった。その床の下はエントランスからホールへ出るところの、言ってみれば、魅せ場、となっていて、かなり長いスパンに渡って梁を渡しており、その結果、構造的に少し弱くなっているのだろうと思った。内観での観えがかりをそのままにして構造的に補強できるのならそれは良いことかもしれないと、揺れながらビールを飲んで思った。結果的にはそういったことが些細なことと思えるくらいライト的雰囲気に満ちた建築だったことは言うまでもないことだけれど。レストラン内の傍らでは二胡のソロ演奏をしていて、とても好い感じだった。
2時を少し回った頃、明治村を後にした。体の水分が減った気がして自販機で水を買って飲んだ。短い時間だったが暑さで朦朧としながらも十分楽しい時間を過ごすことができた。