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名も無きねこに

ちょっとした疑問

2010-04-02 23:27:28 | 仏検準一級
『仏文和訳の実際』で、ある文章に引っかかった。
出典に - Gustav Flaubert : "Un Coeur simple" とある。
見覚えがあるけれど(もちろん日本語で)、どこで読んだか思い出せない。

「Félicité が大切にしている鸚鵡の剥製は、かつて使えていたお嬢様と
救いの聖霊の象徴である」という説明をしばらくながめて思い出した。
山田稔の翻訳で読んだ、『素朴な女』の一部だった。

解説と辞書の助けを借りながらでも、
原文で読めるようになるのはいつだろうと思っていたものを
いつのまにか読んでいたことに嬉しくなって、
邦訳本を探し出して『仏文和訳』と照らし合わせて読んでみたら、
一箇所、山田訳と『仏文和訳』の訳で異なる部分を見つけた。

原文 :
"Une vapeur d'azur des encensoirs monta dans la chambre de Félicité. Elle avança les narines, en la humant avec une sensualité mystique;"

山田訳では次のようになっている。
 「青い香の煙は、フェリシテの部屋のなかまでのぼってきた。彼女は鼻をつきだして吸いこみながら、ふしぎな快感にひたった。」

これが、『仏文和訳』ではこうなっている。
 「香炉からの空色の煙がフェリシテの部屋までのぼってきた。彼女は鼻孔を突き出して、神秘的な感覚でそれをかいだ。」

香の煙が部屋にのぼってくるという前半はどちらも同じだが、
後半の "en la humant avec une sensualité mystique;" の扱いに差があるようで、そこが分らない。

原文を最初に読んだときは、山田訳と同じく avec 以下の部分は、
香の煙をかぐという行為によって感覚の変化が生じるという意味に取ったのだけれども、
『仏文和訳』の訳のように、香の煙をかぐ時点で、
すでに「神秘的な感覚」がフェリシテの意識に存在していると理解するべきなのか。
わたしの理解力ではどうも釈然としない。

今日は時間切れなので、調べは明日にまわす。
わたしの頭で決着がつけられるかという、また別の問題があるけれど。

残: 443h
コメント
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