メジロの挨拶

 庭のほうから、きれいな鳥のさえずりが聞こえてきたので、小鳥を驚かさないようそうっと見に行ってみたが、ちょうど飛び立ったところで、木の梢を横切った鳥の影しか見えなかった。
 庭の木にみかんを置いておくのをやめてしばらく経った頃、庭に出たら、ちょうど頭の真上の木の枝に、メジロが止まっていた。あっと思って見上げると、メジロは枝の先から庭を囲っている塀の上へぱっと飛び移り、こちらへ向きを変えると、そこから、白い縁取りをしたひょうきんな目で、じっと私の顔を見下ろした。
 あまりこちらを見つめるので、何かを訴えているのではないかしらというような気になって、そうか、最近みかんがないけれど、もっと欲しいのだという意味かもしれないと愚考した。
 さっそくまたみかんを木に刺しておいたら、果たして、メジロがつがいでやってきた。やっぱりみかんが欲しかったのだと一人納得していたのだけれど、飛んできたのはその一度だけで、もう姿を現すことはなかった。自分が訴えたことを私が取り違えてしまったので、メジロが気を使って夫婦で一度だけ来てくれたのかも知れなかった。
 それ以来、もうメジロもヒヨドリも来ない。だれも食べてくれる鳥がいないから、かごの中に残った最後のひとつのみかんは、すっかり干からびてしまった。


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