杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち

2012年05月03日 | 
三上 延(著) メディアワークス文庫

鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。

順番が逆になってしまったけれど、ようやく最初の物語を読むことができました。
近日中(6月)には第三巻も発売予定とのことです

第一話:夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)

俺(五浦大輔)が本を読めない体質になった幼児期の祖母にまつわる体験と祖母の秘密に関する物語で、古書店主の栞との出会いのきっかけになっています。
病室のベッドで、本と僅かな情報だけで真実を推察するという驚異的な彼女の才能が明かされて、これからに期待を持たせる話になってました。

第二話:小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)

第二巻でも登場する「せどり屋」の志田と女子高生の小菅奈緒の出会いにまつわる事件。
最初、本の内容は無関係に見えますが、事件解決の後、二人が交流を深める大事な要素になっているのが心憎いね。本の「スピン」が理由だなんて、まさに本好きにしか解けない謎という気がします。

第三話: ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)

ある秘密を抱えた夫が、それゆえに手放そうとした本をめぐるお話ですが、この夫婦の愛情の深さにちょっと感動。本に貼られていたラベル「私本閲読許可証」から見事にその秘密を解き明かし、さらに病室に押し掛けてまで夫の本を取り戻そうとした妻の言動や大輔が見た夫の印象からもう一つの秘密もわかってしまう栞にも脱帽です。

第四話: 太宰治『晩年』(砂子屋書房)

三話の最後に大輔に打ち明けた栞の入院のきっかけになった事故の真相とその犯人探しがテーマです。ここまでの話で大輔を信用出来る人物と踏んだからこそ助けを求めたのだと読み進めていくと、意外にも本の虫である栞の深い策略に気付かされることになります。

また、第二話に登場した小菅奈緒に関する余話も登場し、栞を襲った犯人かと疑わせるような捻りも加えられていました。

犯人は捕まり、事件は解決をみますが、結果として栞のとった行動は大輔を傷つけることになります。しかし結局二人は仲直りするので、やはり本質では似たもの同士ということになるのかも

それにしてもマニアの執念って恐い。それまでの好青年的イメージ(おまけに美青年なんだもんなぁ)が崩れ去るからこそなおさらかも

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