緑の毒
2012年05月14日 | 本
桐野 夏生 (著) 角川書店(発行)
開業医の川辺康之は妻の浮気の腹いせに、寝ている女性の部屋に忍び込み、スタンガンと薬で昏睡させ、レイプをし快楽を味わうという所業を繰り返していた。川辺にレイプされた被害者の一人が犯罪被害者のネット掲示板に書き込みをしたのをきっかけに、被害女性たちが次々と名乗り出始め、自分たちの記憶を頼りに犯人探しを始める。彼女たちは、警察に被害届を出すより、自分たちで復讐したいと考えるようになり結束していく。(Wikipediaより)
粘着質で自分のことしか考えない男が起こす事件と、その被害者たちが団結して男に復讐をする話です。
ちなみに題名はシェイクスピアの『オセロ』に出てくる
「嫉妬はこわいものでありますな、閣下。そいつは緑色の目をした怪物で、人の心を餌食にして、苦しめるやつです。」(本文序章より)からきているようです。
川辺康之の年齢は39歳。不惑の40歳を前にして、大いに不満たらたらのガキな性格破綻者。これが開業医だというのだから呆れます。洋服マニアで趣味はヴィンテージスニーカーの収集。事件を起こす時も黒ずくめだけどブランドもので身を固め、ビンテージスニーカーを履いて行くというおバカさが哂えます。
妻のカオルは病院勤務医。自由が好きだから夫の医院なんぞに縛られたくないし、医者の世界では開業医は最下位ランクで勤務医の方が上位なんだってさ。で、自分の方が偉いと思ったのか、元々我儘気ままな性格なのか、夫が惚れた弱みで甘やかしたせいなのか、助長しまくりで救命救急の玉木医師と不倫中。しかも玉木にも妻子があるときてはもう何やってんだか・・。
玉木についても救命救急の敏腕主任医師という立場に陶酔する人物として描かれていて、ちょっと他の作家の他の作品に登場する医師へのあてこすりのようにも思えたのは気のせい?よね
妻の浮気に気付いた時から、川辺の嫉妬心はとんでもない行動に彼を導きました。スタンガンと鎮静剤のアンプルを用意して、独り暮らしの若い女性の部屋へ忍び込むレイプ犯となったのです。彼の犯行は妻が浮気相手と逢っている水曜の夜というのがまたおぞましい。
被害者は黙して語らずとタカをくくっている川辺でしたが、レイプに遭った被害女性の一人が、ネットの犯罪被害サイトに書きこんだことがきっかけとなって、被害者たちが連絡を取り合い、犯人に対して復讐の刃を向けるのです。その方法も川辺をネットに晒すというのだからまさに現代的なやり方ですね。
彼女たちは妻のカオルに対しても憤怒をぶつけますが、カオルにとっては夫と別れる良い口実になっただけに見えて何だか徒労を感じてしまいました。夫へ向けるひとかけらの憐憫の情すら彼女の傲慢さのような気がしてくるんだもの。
「邪心小説」の謳い文句通り、人間の醜く邪悪な感情に踏み込んで書かれた小説です。
川辺が持つコンプレックスが彼を嫉妬に駆りたて、プライドが破滅へ追い込んだわけですが、その幼稚な思考回路こそが恐ろしいと感じました。
そもそも、この小説、なんで読もうと思ったんだっけ?
開業医の川辺康之は妻の浮気の腹いせに、寝ている女性の部屋に忍び込み、スタンガンと薬で昏睡させ、レイプをし快楽を味わうという所業を繰り返していた。川辺にレイプされた被害者の一人が犯罪被害者のネット掲示板に書き込みをしたのをきっかけに、被害女性たちが次々と名乗り出始め、自分たちの記憶を頼りに犯人探しを始める。彼女たちは、警察に被害届を出すより、自分たちで復讐したいと考えるようになり結束していく。(Wikipediaより)
粘着質で自分のことしか考えない男が起こす事件と、その被害者たちが団結して男に復讐をする話です。
ちなみに題名はシェイクスピアの『オセロ』に出てくる
「嫉妬はこわいものでありますな、閣下。そいつは緑色の目をした怪物で、人の心を餌食にして、苦しめるやつです。」(本文序章より)からきているようです。
川辺康之の年齢は39歳。不惑の40歳を前にして、大いに不満たらたらのガキな性格破綻者。これが開業医だというのだから呆れます。洋服マニアで趣味はヴィンテージスニーカーの収集。事件を起こす時も黒ずくめだけどブランドもので身を固め、ビンテージスニーカーを履いて行くというおバカさが哂えます。
妻のカオルは病院勤務医。自由が好きだから夫の医院なんぞに縛られたくないし、医者の世界では開業医は最下位ランクで勤務医の方が上位なんだってさ。で、自分の方が偉いと思ったのか、元々我儘気ままな性格なのか、夫が惚れた弱みで甘やかしたせいなのか、助長しまくりで救命救急の玉木医師と不倫中。しかも玉木にも妻子があるときてはもう何やってんだか・・。
玉木についても救命救急の敏腕主任医師という立場に陶酔する人物として描かれていて、ちょっと他の作家の他の作品に登場する医師へのあてこすりのようにも思えたのは気のせい?よね

妻の浮気に気付いた時から、川辺の嫉妬心はとんでもない行動に彼を導きました。スタンガンと鎮静剤のアンプルを用意して、独り暮らしの若い女性の部屋へ忍び込むレイプ犯となったのです。彼の犯行は妻が浮気相手と逢っている水曜の夜というのがまたおぞましい。
被害者は黙して語らずとタカをくくっている川辺でしたが、レイプに遭った被害女性の一人が、ネットの犯罪被害サイトに書きこんだことがきっかけとなって、被害者たちが連絡を取り合い、犯人に対して復讐の刃を向けるのです。その方法も川辺をネットに晒すというのだからまさに現代的なやり方ですね。
彼女たちは妻のカオルに対しても憤怒をぶつけますが、カオルにとっては夫と別れる良い口実になっただけに見えて何だか徒労を感じてしまいました。夫へ向けるひとかけらの憐憫の情すら彼女の傲慢さのような気がしてくるんだもの。
「邪心小説」の謳い文句通り、人間の醜く邪悪な感情に踏み込んで書かれた小説です。
川辺が持つコンプレックスが彼を嫉妬に駆りたて、プライドが破滅へ追い込んだわけですが、その幼稚な思考回路こそが恐ろしいと感じました。
そもそも、この小説、なんで読もうと思ったんだっけ?
