杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

光のほうへ

2012年05月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年6月4日公開 デンマーク 114分

アルコール依存症の母親に代わり、赤ん坊の弟の面倒を見る兄弟。二人は、店から盗んだミルクを与え、タバコをふかしながら赤ん坊をあやし、電話帳からとった名前を赤ん坊につけて洗礼の真似をする。しかしある日、赤ん坊は突然死んでしまう。
大人になった兄ニック(ヤコブ・セーダーグレン)は恋人のアナと別れ、自暴自棄になって人を殴り、最近まで刑務所に入っていた。臨時宿泊施設で暮らしながら、酒と肉体を鍛えることで時間を埋めていたニックは、アナの兄イヴァン(モーテン・ローセ)と街で偶然再会する。イヴァンはニックを、今は結婚して子供もいるアナのところへ案内する。アナと目が合うと、ニックは逃げるように立ち去る。その夜、ニックはイヴァンに、アナが自分たちの子供を妊娠したが中絶し、そのままいなくなったことを打ち明ける。一方、弟(ペーター・プラウボー)は妻を交通事故で亡くし、幼い息子マーティンをひとりで育てていた。生活保護を受けようとするが、ソーシャルワーカーにこのままでは子供と引き放さなければならないと言われ、断ってしまう。しかし彼はクスリを止められずにいた。息子をリビングに残し、バスルームで慣れた手つきでクスリを打つ弟。母親の死をきっかけに教会で再会した兄は、弟を心配し、母親の遺産を全て譲ろうとするが・・・。

子供時代の兄弟が、育児放棄した母親の代わりに幼い赤ん坊を必死で彼らなりに世話をしている姿が胸に痛いです。特に名前も付けられていない弟に洗礼名を与えようと電話帳で名前を探すシーンや洗礼の真似ごとのシーンが印象深いの。
たまたま母親の酒を二人で飲んで騒いで寝てしまった翌日、赤ん坊はもう息をしていませんでした。これは絶対トラウマになるね~~と思ってたら場面が代わり大人になった兄弟の生活の描写となります。

兄は酒と暴力、弟はヤク中。過去から逃れようと苦しみ、別々に生きていながらも互いを思いやるところは子供時代と変わっていないけれど、やっぱり底辺から這いあがれない彼らの人生が切ないです。
弟は妻に先立たれて息子と二人で暮らしているけれど、クスリの売人となって警察に捕まってしまいます。同じ頃、イヴァンを庇い誤認逮捕された兄と収監先で偶然短い会話を交わすのですが、そのあとで弟は自殺してしまうのです。
父親として息子を守りたいと思いながらもクスリと手を切ることができない弟の姿が哀れでした。息子を想う気持ちの強さが逆に彼を破滅に追い込んでいくようで・・・。映画の中でははっきり語られていませんが、おそらく亡くなった彼らの弟に電話帳からとってつけた名前がマーティンだったのだと思います。

遺されたマーティンは、ニックと暮らすことになるのかしら?どうぞ今度は失敗しないで、光のほうへ歩いて行ってと祈る気持ちになるラストでした。

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