この国がまだ
少し豊かになりかけた頃
まだ 一家に一台の
車も持てなくて
バスやバイクや自転車や
電車の移動が主だった。
貧しいとか
裕福とか
も気にならなくて
誰もが一生懸命に生きた時代
西の空を夕焼けが染める頃
なぁんにもない空は
オレンジ色と
焦げ茶色の山の稜線だけが
1日の終わりを見せてくれていた。
2人乗りのスーパーカブの後ろに
僕は乗せられて
買ったばかりのバイクで
試運転ドライブ
オヤジの肩越しにみる
オレンジの夕焼け空は
映画館で見たスクリーンのよう
夕焼けへ吸い込まれるように
先へ
先へ
スーパーカブは進む
先を急ぐ理由もないのに
何も話さず
バイクは家路へ急ぐ
夕焼けのむこう側は
今も変わらずに