最初にお断りしておくが、私は静岡県民の代表でもなければ、静岡市民を代表する者でもない。ただ、郷土をこよなく愛する一介の労務者である。
JR東海は2027年開業を目指すリニア中央新幹線で、品川-名古屋間(約286キロ)の約8割をトンネルとし、うち都市部は鉄道として初めて「大深度地下利用法」の適用を受け、40メートル超の地下深くを走行するとする計画の概略を発表した。
発表されたルートは東京から神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知各県を横断するものだが、静岡県内には駅もなく南アルプスの地下深くを東西に貫通するというものである。
大深度地下利用法が適用されると、地下40メートル以上であれば地上の用地買収や事前の補償の必要がなく、スムーズに着工できる利点がある。トンネルは直径約13メートルで設計、この中にガイドウエーと呼ばれるU字形の軌道を上り、下りそれぞれ設置する。
乗客の避難用として、トンネルと地上をつなげた非常口を5キロごとに設ける。非常口は直径30~40メートルの立て坑で、避難階段と非常用電源付きエレベーターを併設するほか、地下の空気を入れ替えるためのファンを設置。時速500キロ走行による騒音や風圧を抑える装置も備える。と、まあ計画の概要を説明するだけでも草臥れる。
私のように古いタイプの建設業界人にとってヨッシャヨッシャの田中角栄元総理は神様のような存在だった。その田中角さんの派閥に金丸信という実力者がいてリニアの実験線を山梨県へ持っていった。
新しく作るリニア新幹線は、この実験線の両端を東と西へ延ばすものである。
私が面白くないのは駅がないからでない。リニアモーターカーなんか宮崎県に実験線があったとき既に試乗済みである。
私が心配しているのは、南アルプスの豊かな自然とそこに棲息、生育する貴重な動植物を守りたいからである。このことに対して県や市のアクションがないのが不思議である。
鉄道は地下深くを貫通するだけかも知れないが、5キロごとの非常口は少なくとも2箇所は出来るだろうし、その立て坑から排出される膨大な掘削土の処分は大井川の上流部で行われるのである。静岡県静岡市は残土処分地にされるだけである。
土木技術者の端くれである私が過去の経験から申し上げると、トンネルが貫通した山は地下水が抜けて乾燥するのである。膨大な土砂はよほどの処理を施さない限り流出して川を荒らすことになる。堅固な施設を作ればそれだけでも自然環境を破壊することになるであろう。小さな沢でも堰堤を作れば山女や岩魚は遡上できなくなる。
建設工事に伴って人や車両や建設機械が動くだけでも空気は汚れて環境は汚染する。工事用の運搬路や非常口への通路をつくるだけでも急峻な山肌へ大きな負荷をかけることになるのだ。普通の山でも林道を開設すると各所で崩壊を招き安定するまでには5年、10年とかかるのである。
つまり、静岡県民や静岡市民にとってリニア中央新幹線はかけがえのない自然を犠牲にするだけのメリットが一つも見当たらないのである。それどころではない。リニア新幹線の建設費を補うために在来線や新幹線の料金値上げなどされたら最悪のシナリオである。
JR東海は2027年開業を目指すリニア中央新幹線で、品川-名古屋間(約286キロ)の約8割をトンネルとし、うち都市部は鉄道として初めて「大深度地下利用法」の適用を受け、40メートル超の地下深くを走行するとする計画の概略を発表した。
発表されたルートは東京から神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知各県を横断するものだが、静岡県内には駅もなく南アルプスの地下深くを東西に貫通するというものである。
大深度地下利用法が適用されると、地下40メートル以上であれば地上の用地買収や事前の補償の必要がなく、スムーズに着工できる利点がある。トンネルは直径約13メートルで設計、この中にガイドウエーと呼ばれるU字形の軌道を上り、下りそれぞれ設置する。
乗客の避難用として、トンネルと地上をつなげた非常口を5キロごとに設ける。非常口は直径30~40メートルの立て坑で、避難階段と非常用電源付きエレベーターを併設するほか、地下の空気を入れ替えるためのファンを設置。時速500キロ走行による騒音や風圧を抑える装置も備える。と、まあ計画の概要を説明するだけでも草臥れる。
私のように古いタイプの建設業界人にとってヨッシャヨッシャの田中角栄元総理は神様のような存在だった。その田中角さんの派閥に金丸信という実力者がいてリニアの実験線を山梨県へ持っていった。
新しく作るリニア新幹線は、この実験線の両端を東と西へ延ばすものである。
私が面白くないのは駅がないからでない。リニアモーターカーなんか宮崎県に実験線があったとき既に試乗済みである。
私が心配しているのは、南アルプスの豊かな自然とそこに棲息、生育する貴重な動植物を守りたいからである。このことに対して県や市のアクションがないのが不思議である。
鉄道は地下深くを貫通するだけかも知れないが、5キロごとの非常口は少なくとも2箇所は出来るだろうし、その立て坑から排出される膨大な掘削土の処分は大井川の上流部で行われるのである。静岡県静岡市は残土処分地にされるだけである。
土木技術者の端くれである私が過去の経験から申し上げると、トンネルが貫通した山は地下水が抜けて乾燥するのである。膨大な土砂はよほどの処理を施さない限り流出して川を荒らすことになる。堅固な施設を作ればそれだけでも自然環境を破壊することになるであろう。小さな沢でも堰堤を作れば山女や岩魚は遡上できなくなる。
建設工事に伴って人や車両や建設機械が動くだけでも空気は汚れて環境は汚染する。工事用の運搬路や非常口への通路をつくるだけでも急峻な山肌へ大きな負荷をかけることになるのだ。普通の山でも林道を開設すると各所で崩壊を招き安定するまでには5年、10年とかかるのである。
つまり、静岡県民や静岡市民にとってリニア中央新幹線はかけがえのない自然を犠牲にするだけのメリットが一つも見当たらないのである。それどころではない。リニア新幹線の建設費を補うために在来線や新幹線の料金値上げなどされたら最悪のシナリオである。