最近、ブレーキとアクセルを踏み間違える自動車事故が多い。とくに高齢者ドライバーが、これで深刻な事故を起こすケースが報じられている。そんなバカな間違いをどうしてと思うが、実は庵主も同じような事故を自宅のガレージで起こした経験がある。十年程前のことだが、バックで車庫入れしようとし、アクセルを踏み込んでしまい後ろの壁に激突した。家人の話ではドーンという大きな音がして、家が揺れたそうである。幸いむち打ちにならず、自分を含めて人身事故にはならなかったが、車の修理に30万円近い費用がかかってしました。
ブレーキを踏んでいるつもりが、アクセルから足が離れておらず、車が減速しないので、あわててますます踏みこむフィードフォワード運動で、ペダルをいっぱい踏みこんで激突したようである。その時の正確な記憶はないが、ブレーキが効かないという感覚になったことは確かだ。早朝の寝起きで、頭も身体もしっかり立ち上がっていなかった状態だったことが、事故の最大の原因と思える。
それまでそんな事はなかったし、運転には自信があったので、おおいにショックだった。それ以降、車の運転時には次のような「準備運動」をしている。まずエンジンをかけて、ギアーをパーキング位置のままで、ブレーキ、アクセルと暗唱(呼称)しながら足を交互にそれぞれのペダルに移動する。これを十回程繰り返すのである。いままで、無意識にやっていたことを、運転の前に意識下のもとで足と脳に復習させるのである。
高齢者の事故が多発しているのは確かだが、統計によると事故率は世代間で有意な差はないという。歳をとると反射神経や身体能力が低下するが、一方で慎重さも増すというトレードオフもある。しかし加齢にともなってリスク要因が限界を越えたときには、どんなに「準備運動」をしても事故の可能性が大きいので免許を返納するのが妥当であろう。もっともその見極めがなかなかむつかしい。