京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

悪口の解剖学 III 会話の60%以上は他人のゴシップ

2019年06月20日 | 悪口学

 

 R. M. Dunbar (Liverpool大学)という学者の論文(Gossip in Evolutionary Perspective: Review of General Psychology 2004, Vol. 8, No. 2, 100–110)によると、霊長類における毛づくろいの替わりに、ヒトでは音声言語によるコミュニケーションが発達したという。そして初期の会話の内容の大部分はゴシップ、特にfree rider(ただ乗り野郎)に関する情報交換だったのではなかったかと議論している。

 初期人類の会話情報の多くは、Dunbarの言うような他人のゴシップではなくて、おそらく食糧、外敵、危険に関するものであったろう。ゴシップが会話の主流になったのは、集団が定着して余裕が出来てからと思える。他者に関する情報交換は、個体同士の信頼関係を高め、政治的なグループの形成を促進したと思う。

 現在でも統計によると、人がおしゃべりしている時間の65%はゴシップに費やされているらしい。学会の懇親会に出席しても、学術的な話題よりもゴシップ話が多いのは驚かされる。

『A先生は、苦節30年の研究成果を大学の紀要にやっとまとめたようですな』とかいう地味な話はまれで、『B先生は、どうも秘書とできているようで、この学会にも奥さんに内緒で二人で来てるらしいよ』とかいう話の方が多い。情けない事に、こっちの話題の方が圧倒的に面白い。

 昔も今も、集団やグループ内での他人の情報は自己の行動や方針を決定するための重要な要素である。集団の中に礼儀や規範を無視する乱暴者が出現したとき、そんなのにうっかりつき合って、被害を被らないために情報は重要である。とんでもない奴とプロジェクトを組んで、ただ乗りされたり横取りされてはたまったものではない。

 

参考文献

 小松正 『いじめは生存戦略だった!?』 秀和システム 2016

 ユヴアル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」河出書房新社 2017

 亀田達也 『モラルの起源ー実験社会科学からの問い』岩波新書 1652, 岩波書店 , 2017

 

 

 

 

 

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ヘラオオバコ (箆大葉子)

2019年06月20日 | ミニ里山記録

 

 へらおほばこ咲いて馬堤の高さかな 阿部和子

 

鴨川の河原に咲くヘラオオバコ (Plantago lanceolata)。

江戸時代末期により侵入したとされる。 河川敷や農耕地等で繁殖している。花はお茶花に使えそうである。

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