武漢発とされる新型コロナウィルスによる感染症は中国だけでなく全世界に拡大し、パンデミックの様相を呈している。WHOは30日になって、やっと「緊急事態宣言」を出した。これに感染・発症すると高熱、咳、筋肉痛、下痢、呼吸困難をともなって肺炎症状を呈する。いまのところ1/4~1/5の患者が重症化し致死率は約2%ぐらいのようである。高齢者や持病をもった人が、重篤な症状となり死亡するケースが多いらしい。ただウィルスに感染しても、まったく自覚症状のない人や軽症ですむ人もいるようだ。
検査はPCR (polymerase chain reaction)法のようだが、これはきわめて鋭敏な検査法で増幅操作の際にコンタミ(混入)があると、本来ネガティブなサンプルからも陽性反応が出るので注意が必要である。検体が増えるとたいへんな作業量になると思えるので、国レベルでこういった検査機関の調整と整備が今後は必要と思える。
罹患した人の症状の個体差の理由はわかっていない。症状の個体差がウィルスに感染した人の体質による可能性はある。その場合は性別、年齢、健康状態(持病の有無など)、地域性や遺伝子多様性などが複合的に関連しているものと思える。中国政府は、これらの情報をすみやかに発信してほしいものだ。
他にコロナウィルスが変異している事も考えられる。ウイルスの感染力を強い(s)、弱い(w)、毒性を強い(S)、弱い(W)と定義すると、種類としてはsS、wS、sW、wWの4種を想定できる。
自然淘汰の原理でウィルスも宿主(人)をめぐって熾烈な競争をしている。この中でsSが一番強そうに思えるが、患者は死亡、隔離あるいは家で寝込むなどして集団との接触が断たれ拡大の機会が少なくなる。wSも同様なので、勝者はsW、wWのいずれかということになるが、当然sWのほうが拡大には有利である。
寄生ウィルスの目的は宿主を殺すことが目的ではなく共生することである。かくして弱毒性のウィルスは集団に広まって平衡に達したときに一種の共生関係が成立する。人類は何種類もの風邪コロナウィルスを経験して免疫力を高め、突発的に生ずる凶暴なsSに備えてきた。ただ世代が替わり集団の免疫履歴が切れたり、なんらかの環境の変化でsSがパンデミックを起こす。インフルエンザウィルスは約50年の周期で流行する。
新型コロナウィルスの場合、発生して2ヶ月弱で自覚症状がない感染者が存在するというのは、強毒性(S)から変異した弱毒性(W)ウィルスが存在する可能性はおおいにある。どのような病原性のウィルスも、最初は強毒性(S)でそれから弱毒性(W)に変異するのが普通である(例えばエイズのHIVなど)。弱毒なウィルスが人集団の中に広まり免疫の壁を作って、流行を低下・終焉させるメカニズムが理論的に考えられる。1918年のスペイン風邪のパンデミックにおいても、人類の大部分がインフルエンザウィルスに感染したのでないかという仮説がある。そのような事を考えると、この新型コロナウィルスのパンデミックピークはすでに過ぎているということかもしれない。それでも、これが終焉するには2ヶ月以上はかかりそうである。万全の防御体制をとらねばならない事はいうまでもない。
(画像:国立感染症研究所ホームページより転載)
付記 (2020/02/24)
中国疾病予防控制中心(Chinese Center for disease control and prevention)から新型コロナウィルスによる疾患様態についての報告(2月14日付け)がある。2gahttp://weekly.chinacdc.cn/en/article/id/e53946e2-c6c4-41e9-9a9b-fea8db1a8f51from=timeline&isappinstalled=0&fbclid=IwAR0vI2byMnOUzlbbZQsb4edDI_CVgETT6xdu3j4WUlfS2GIed4QaoQcbXnY)