スムシはミツバチに付き物の寄生者である。種類としてはハチノススズリガ(Galleria mellonella)やウスグロツヅリガ(Achroia innotata)などがいる。
二ホンミツバチの巣が突然、オオスズメバチの群れに襲われて逃去した。重箱式巣箱の上段3個は蜂蜜が詰まっていたので、これを収穫し、下段2個をスムシの分解実験に使った。そこには幼虫や花粉の入った巣盤が詰まり、巣の底には、うろうろする小さなスムシの幼虫が2-3匹いる状態だった(写真 1)。
(写真1.)
3週間ほどたって、どうなっているか見てみると、巣盤のほとんどが解体されており真ん中は抜けていた(写真2.)
(写真2)
さらに1週間後には、中の巣盤はほぼ完全に分解されて、巣の底に黒い細かな糞が大量に溜まっているのが観察された(写真3)。おそるべき消化分解力といえる。雑食性で木材やプラスチックなども分解するらしい。庵主はスムシが発泡スチロールをボロボロにしているのをみたことがある。
(写真3)
肝心のスムシはどこにいっかたというと、上に重ねておいた最上段の重箱の天井に何十頭も繭を作りそこに入りこんでいる(写真4)。蟻を防御するためか頑強な繭で、ペンチで引きはがすのに苦労する。こんな数のスムシがいままでどこに隠れていたのだろ?
(写真4)
ミツバチの巣盤はワックス(炭化水素)だから、カビや微生物では分解は困難で、スムシの迅速・完全な消化がなかったら、おそらく野山の営巣場所では使いものにならない古巣がいつまでも残っているだろう。おまけにスムシの幼虫は木材に朽ちこみをいれるので、巣穴の拡大にもなる。
スムシは養蜂の嫌われ者のように扱われているが、生態系の重要なリサイクラーなのだ。そもそも、スムシがわくからミツバチが逃げるのではなく、なんらかの理由でコロニーが弱体化するのでスムシが繁殖するのである。それまではおとなしい掃除屋として、隅のほうで共生しているのだ。ミツバチ弱体化の原因を取り除かなければ、これを排除しても解決にはならない。スムシはミツバチの有益な共生者である。