京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

吉村知事のポピドンヨード発言について:COVID-19にうがいの効果はあるか?

2020年08月05日 | 環境と健康

 大阪府の吉村洋文知事は昨日(4日)の記者会見で、消毒効果がある「ポビドンヨード」を含むうがい薬が、新型コロナウイルスの体内での減少に効果が期待できると発表した。ポビドンヨードとはポリビニルピロリドンにヨウ素I3-が配位結合した化合物である。殺菌剤の一種で、うがい薬としては「イソジン」などの商標名がある。

 

                                                                (ポビドンヨード)

 

その会見によると、コロナの陽性者の治療をしてきた「大阪はびきの医療センター」では、6~7月に府内のホテルで宿泊療養している患者約40人を対象に、1日4回ポビドンヨードでうがいするグループと、しないグループに分け4日間調査した。その結果、うがいをしないグループの唾液の陽性割合は56・3%だったが、したグループは21・0%だったそうだ。

吉村知事は「うそのような本当の話をする」としながら、市販のうがい薬を示し、府民にうがいを呼びかけた。これに対して、かえってリスクがあるとする専門家のコメントも多い。これでうがいすると、たしかにノドの粘膜上に付着する微生物は細菌もウィルスも死滅するだろう。ただ、肺や体内のウィルスに対しては効果がないので、抜本的な治療にはならない(吉村知事は、治療効果でなく唾液の滅菌でウィルスの拡散防止に役立つといいたかったようだが)。

それと問題なのは、ノドで外来のウィルスや細菌の侵入を防止してくれている常在微生物も死滅させるので、かえって感染リスクが高くなる可能性もある。ノドに更地を作っているようなものだ。さらに、ポビドンヨードは、微生物をやっつけるが、ノドの細胞もいためるので、過剰な使用はウィルスに対する抵抗性を弱める。消毒用のアルコールで手を何回も手をふいていると、皮膚がかさかさになってしまうようなものだ。

そもそも、たった40人(半分にわけると20人?)のデーターで、この種の疫学的な結論を出すのは無理がある。吉村さんの完全な勇み足である。しっかりした疫学専門家の相談役を、そばに置いていないようだ。大阪市を中心に、新型コロナウィルス感染者が急増していることからくる、一種のあせりがでたのではないか?

うがいに関しては、京都大学医学部安全保健機構健康センターの川村孝教授は、カゼなどの上気道疾患(upper respiratory tract infections )の予防に、ポビドンヨードはむしろ効果なく、水だけのうがいのほうが、かなりの効果があるとしている(下図と論文)。うがいは日本だけの習慣だが、いちがいにネガティブにとらえるのではなく今後の調査研究が必要と思う。

 

Kazunari Satomura et al. (2005)

Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: a randomized trial。Am J Prev Med. Nov;29(4):302-7.( doi: 10.1016/j.amepre.2005.06.013.)

 

 

 


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