どうして人はだまされるのか?
ブライアン・インズ、クリス・マクナ(著)
定木大介・竹花秀春・梅田智世(訳)
日経ナショナルジオグラフィー(2023)
この書は、だます方の大全であるが、だまされる方にも多様なパターンが存在することがわかる。「だまされる人」を類別すると、おおよそ次のようになる。
1)頭が悪すぎる。
2)頭が良すぎる。
3)強欲すぎる。
4)”権威”を信じすぎる。
5)「疑い遺伝子」が少なすぎる。
1)は理解しやすい。街角の詐欺師に、エッフェル塔や自由の女神を”破格の安値”で売りつけられた観光客はこの類である。客の中には日本人もいたそうである。
2)の場合は、自分は頭が良いのだと思い込む過信による。たとえば、大学教授が簡単に詐欺に会うのはこのケースである。大学教授は頭がいいと思っているので「自分が騙されるはずがない」と思い込んでいるが、詐欺師はそれよりずっと頭が良い。「コティングリーの妖精」を信じ込んだコナン・ドイルの場合も、この例に当たるかもしれない。もっともドイルは、晩年、相次ぐ身内の死去により、心霊主義への傾斜を強めていた。理屈の問題ではなくて、「心の病」の問題であったともいえる。写真にトリックがあるのではという仮説なんか、頭から吹っ飛んでいたのである。
3)詐欺の被害者は、大抵そのカラクリを見抜いていることが多い(本ブログ「バーナード・マドフ事件」参照)。それでも、結局、被害にあうのは「まだまだ行ける」と思って欲を張るからである。
4)これもよくあるケースであるが、”権威者”が善意でやっている事が、結果として「だまし」になるケースがある。”名医”と言われる医師の臨床データー(何人殺したか何人生かしたのか)は調べておきたい。
5)疑い(臆病)は、人類の本性であり適応的形質である。交雑のはずみで、これに関する遺伝子が少なすぎる人は何度でも、性懲りもなく騙される。そして淘汰される。
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