2009年1月4日(日曜日)
今日の朝日新聞・福井県版の一面に
大きく取り上げられていた
『中池見湿地』です。
記事の中に書かれているように
「敦賀市は国際的に重要な湿地を保全する
ラムサール条約への登録を目指している。」
のですが、これがなかなか進展をみせない・・・
市民グループが提案してきた「自然公園」ではなく
「都市公園」での整備を目指す行政。
市民との協働ですすめられようとしている
『中池見湿地』の保全にも
ラムサール条約の登録にも
まだまだ、いくつものハードルが
たちふさがります。
今年は『中池見湿地』にとって
あらたな一歩を踏み出す年にしたいものです。
さて、新聞には仲睦まじい、
智恵子さんと進さんの写真も!
~【’09新年企画】自然と生きる~の
第3弾が
『中池見湿地 国道から種子侵入?』
敦賀支局の小池記者の記事です。
http://mytown.asahi.com/fukui/news.php?k_id=19000250901040001
「見て、フユイチゴ。
少し酸っぱいけどジャムにすると
おいしいのよ。今年は豊作ね」
先月中旬、敦賀市街地に近い中池見湿地。
この湿地の保全活動に取り組んでいる
NPO「ウエットランド中池見」理事長の
笹木智恵子(63)が、道ばたの斜面を指さした。
1センチ弱の赤い実を口に含むと、
甘酸っぱい野趣あふれる風味が広がった。
◇
広さ約25ヘクタール。
周囲を標高100メートル台の里山に囲まれたこの地は、
江戸時代に水田として開拓されてから
人々が手入れを繰り返し、
微生物から哺乳(ほにゅう)類まで2千種を超える
生き物たちがにぎわう貴重な環境が出来上がった。
在来種のフユイチゴは、湿地がくれる自然の恵みの一つだ。
地下には深さ最大約40メートルもの泥炭層があり、
過去十数万年分の花粉や胞子などが保存されている、
いわば「地球博物館」だ。
敦賀市は国際的に重要な湿地を保全する
ラムサール条約への登録を目指している。
だが、この豊かな自然環境は、
外来生物の侵入に脅かされている。
湿地内の仮設道を歩くと、
こぶし大の綿毛を頭に付けた、
高さ1・5メートルほどの植物が目に付いた。
「これはセイタカアワダチソウ。
外来種です。
地盤が軟らかい場所では3メートル近いものもある」と、
一緒に歩いた夫の進(66)が言う。
北米原産のキク科の多年草。
引き抜いてみると根がびっしりと張っていて、
新芽も出ていた。
近くにはマメ科のイタチハギ。
足元にはキク科のブタナが地面をはう。
ともに外来種だ。
湿地西側を通る国道8号バイパスを走る車に
種子が付着するなどして持ち込まれたと考えられている。
河野昭一・京都大名誉教授(植物生態学)らの
調査によると、94年にセイタカアワダチソウの
群落はなかったが、開通後の99年には
数カ所で確認された。
さらに、同NPOの調査ではバイパスに近づくにつれ
外来種の割合が高くなることがわかっている。
湿地の小川や池の水草も危機にあると聞いた。
一部のトンボの繁殖場所であり、ゲンゴロウの幼虫や
メダカのすみかとしても欠かせない存在だが、
アメリカザリガニに食べられるなどして減っているのだ。
06年の駆除では1万匹近くの
アメリカザリガニが捕れたという。
近年はアライグマの姿も周囲の山中で確認され始めた。
今、国内の野外にいる外来種は
確認されているだけで約2千種。
沖縄や奄美大島では、ハブやネズミの駆除を目的に
放たれたマングースが希少な在来種を襲う。
多くの固有種を育んできた小笠原諸島では
米国原産のトカゲ、グリーンアノールが増え、
昆虫類が食べられて激減した。
こうした代表例の一つが外来魚の
オオクチバス(ブラックバス)だ。
1925年に神奈川県の芦ノ湖に
釣りの対象や食用として放流され、
70年代に急速に全国各地に広がった。
釣りを楽しむため各地へ持ち込まれたとされる。
あわら市内のため池「中山池」で06年に
住民や県などがした調査では、オオクチバスが
724匹捕獲されたのに対し、
在来種はゲンゴロウブナ、ギンブナ、ウグイなどの
成魚計26匹のみ。
稚魚が餌にされてしまうためらしい。
08年、同市内の別のため池の水を抜いて調べると、
オオクチバスをも駆逐するとされる
雑食のブルーギルが2万8千匹も見つかった。
ゲンゴロウブナやヨシノボリなどはわずかだった。
県自然保護課が問題視したのは、
トンボの幼虫のヤゴが28匹しか見つからなかったこと。
このまま減ると「赤トンボの飛ばない秋」が
来る恐れもあるという。
◇
同NPOは昨秋、韓国・昌原市で開かれた
ラムサール条約第10回締約国会議で、
ポスターセッションに出展。
中池見湿地の生物の多様性や貴重な泥炭層の存在を
世界に向けて発信した。
湿地を保全し、外来種の侵略から守るためにも、
大勢の人に貴重さを知ってもらうことが大切だと考えるからだ。
来年10月には、生物多様性条約の
締約国会議が名古屋市で開かれる。
「各国の参加者や報道機関に、
湿地に来てもらえるような機会があればうれしいですね」。
笹木夫婦はそう口をそろえる。=敬称略