2010年5月24日(月曜日)
昼過ぎ、原子力研究開発機構が資料を携え
簡単な説明をさせて欲しいとやってきた。
ちょうど、2時に約束があったため、出かける直前で
ゆっくりと話を聞く時間がとれなかった。
報道等でも明らかなように、
もんじゅの試験体制を見直し、13人だった試験員を
5人増員して18人にし、2交代制を3交代制に変更。
24時間試験を続けられる体制に改めた・・・
という内容だ。
これまでの誤警報や運転員が操作方法を知らなかったことも
安全には問題ない! と言うことを強調していた。
そもそももんじゅを含め原発にはリスクがあるから、
地域振興策としての交付金が存在する・・・
と明言する記者もいる。
さて明日はその地域振興策についてのフォーラムが
開催される。
平成22年度第3回地域経済研究フォーラム
「福井県における原子力発電と地域経済のあゆみ
-これまでの40年間を振り返って」
日時:5月25日(火)午後1時30分~
会場:ニューサンピア敦賀 気比の間
講師:福井県立大学地域経済研究所 講師 井上武史 氏
概要:原子力発電所が福井県に立地して約40年、地域経済も大きく変化した。新
規立地や増設の経緯から地域の期待を探り、立地以後の経済的変化を分析するこ
とによって、地域の期待がどの程度実現したのか考える。
※フォーラムの内容は平成21年度研究成果「原子力発電と地域経済の将来展望に
関する研究」の概要です。
参加を希望される方は、下記申込先までお送り下さい。当日、会場に直
接お越しいただいても結構です。
申込先:地域経済研究所 事務局 平鍋まで
電 話:0776-61-6000(代表)内線6202
FAX:0776-61-6017
e-mail:keiken@fpu.ac.jp
HPからのお申込 http://www.s.fpu.ac.jp/fukk/symposium/index.m.html
こちらは21日の毎日新聞の「記者の目」
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/
記者の目:再開「もんじゅ」故障など公表遅れ=酒造唯
14年5カ月ぶりに運転を再開した
日本原子力研究開発機構(原子力機構)の
高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で、
装置の故障や公表遅れ、制御棒の操作ミスなどを
連日のように取材している。
原子力機構の前身は95年にナトリウム漏れ事故を起こした
旧動力炉・核燃料開発事業団。
事故直後の情報隠しは「動燃体質」と厳しく批判された。
だが組織は変わっても、その体質が一掃されたとは思えない。
敦賀に赴任して2年。
「安心」「安全」について、技術者の意識に
大きな違和感を覚えるからだ。
運転再開翌日の7日午前10時から、私はもんじゅ近くの
PR施設「エムシースクエア」で定例会見に出ていた。
質疑の中心は、初日の試験終了が遅れたこと。
実は、この最中にも中央制御室で破損燃料検出装置の警報が
3回鳴っていたが、一言も説明はなかった。
結局、警報は計7回鳴ったことが、後で分かった。
しかも原子力機構は、経済産業省原子力安全・保安院が
発表することを知って慌てて敦賀市と福井県に連絡し、
後追いで発表した。
原子力機構の瀬戸口啓一・もんじゅ運営管理室長は
「会見では、試験が遅れたことに質問が集中していたため」
と釈明。
敦賀市の河瀬一治市長は
「何か起きた時点で、電話一本だけでももらえたら」と
機構に何度も申し入れてきたが、
運転再開早々に裏切られた形になった。
◇本音は「原因の究明後に公表」
「なんだ、2年前と変わらないじゃないか」。
私の率直な思いだ。
08年3月、1次系ナトリウム漏えい検出器が
施工ミスで誤作動したが、機構が国や地元自治体に
知らせたのは3時間後。
この問題を受け、機構は「迷った場合は必ず連絡」など
通報3原則を作り、所内に張り出した。
だが、09年9月に別の漏えい検出器が作業ミスで鳴動した時も、
保安院が翌月指摘するまで公表しなかった。
もんじゅの向和夫所長や伊藤和元・原子力機構理事は
「何でもかんでも公表しないといけないわけじゃない」
と繰り返した。
ある幹部は
「本音を言えば、しっかり原因究明をした時点で
説明したいという気持ちがある。
小さなことで世間を騒がせたくない。
不安をあおってしまう」と明かした。
しかし、世間はそう受け止めるだろうか。
都合の悪いことは公表したくないという意識は、
どんな組織にも大なり小なりあることだろう。
しかし、不利益な情報も含めて公表する姿勢が、
結局は世間の信頼回復や理解につながることは、
さまざまな企業の不祥事の度、教訓として言われてきたことだ。
◇安全・信頼なしに技術の確立なし
原子力機構について、気になることはまだある。
昨年12月に来日した特別顧問で、フランス原子力庁顧問の
ジャック・ブシャール氏に取材した時のことだ。
軽水炉との比較で高速増殖炉のリスクを質問すると、
04年に11人が死傷した関西電力美浜原発3号機(福井県)の
蒸気噴出事故を例に
「水漏れでも犠牲者が出ることはある」と指摘。
「ナトリウムが漏れて犠牲者が出たことはない」と強弁した。
ナトリウムは水分と激しく反応し火災を起こしやすい難点があるが、
「漏れても安全」という発言を機構の職員から聞くことがある。
機構も「万一漏れても安全対策を取っている」と、
住民に繰り返し説明してきた。
だが、「安心」の裏付けとなる迅速な情報公開をしないまま、
「安全」を強調する。
そこに技術者としての危うさを感じてしまう。
冒頭の破損燃料検出装置の故障後、敦賀市内の主婦(53)は
「なんで壊れるの。本当はどうなってるの」と不安をのぞかせた。
95年の事故当時を知る敦賀市の関係者は
「ナトリウム火災が起きているのに『火災じゃない』と言い張った。
『たいしたトラブルじゃない』と思っていたんでしょう。
市民と物差しが違うんですよ。
そこは14年間変わっていない」と批判する。
物差しの違いを認識しない限り、根本的な体質は変わらないだろう。
14年5カ月もの長期停止を経ての運転再開で、
設備劣化や技術継承の問題など、これまでも指摘されてきた問題が
一気に顕在化している。
次にナトリウム漏れ事故が起きれば、
単に設備の安全性への疑問だけでなく、国民の信頼という点で、
95年当時とは比較にならない打撃を受ける。
原子力の研究は「安全と信頼の確保」なしには進まない。
高速増殖炉の実用化まで、順調にいっても40年かかる。
技術の確立だけでなく、
住民の信頼も確立できるのかが問われている。(福井支局敦賀駐在)