昨日の続きになります。
今日のテーマは、父系サイヤーラインが続くものと、途中で途切れてしまうものがありますが、途切れていないサイヤーラインの特長として、『4×3以下のインブリード配合がないこと』が挙げられます。
例えば、ネアルコやノーザンダンサー、またサドラーズウェルズ、サンデーサイレンスと言った名馬たちは、そのサイヤーサインを伸ばしている代表的な父系の祖でありますが、それらの祖の特長こそ、『4×3以下のインブリード配合がないこと』であります。
ネアルコは、4×4の St.Simon のインブリードはありますが、4×3以下はありません。ノーザンダンサーとサドラーズウェルズには、4×4以下のインブリードは無し、サンデーサイレンスも、4×5の Mahmoud のインブリードはありますが、4×4以下はありません。
昨日は、エピファネイア産駒やモーリス産駒には、サンデーサイレンスの4×3インブリード配合が極端に多い話をしましたが、競走馬としてサンデーサイレンスの特長を受け継ぐ名馬を創る試みとしては理解していますが、このインブリードにより生まれた競走馬が、その後のサイヤーラインでは残りにくい傾向があるとすれば、これはこれで、今後の配合を考え直す上で大事な考慮要因になると思います。
ちなみに、ディープインパクトは、5×5以下のインブリードがありません。5×5のインブリード配合すら存在しない、今時珍しいアウトブリード配合なのです。またキングカメハメハも、4×4の Northern Dancer のインブリードはありますが、4×3以下はありません。そして、長らく日本の短距離界を種牡馬として支配したサクラバクシンオーも、4×5の Hyperion と4×5の Nasrullah のインブリードはありますが、4×4以下のインブリードはありませんでした。
逆に、サンデーサイレンス以前の日本競馬界を支配していた名種牡馬ノーザンテーストは、父系サイヤーラインを全く残せませんでしたが、ノーザンテーストには母系の Lady Angela の3×2という超インブリードがありました。父系で見ても Hyperion の4×3のインブリード。ノーザンテーストが父系サイヤーラインを残せなかったことは『ノーザンテーストの謎』とも言える不思議な事態でしたが、強烈なインブリードが原因だとすると合点がいくところ。
また、もう一つの事例として、内国産種牡馬として華々しい成果を挙げながら、サイヤーラインが実質一代で終わってしまったトウショウボーイの例を挙げておきます。ちなみに、このトウショウボーイも、Hyperion の3×4インブリードを持っておりました。種牡馬として三冠馬ミスターシービーなどの産駒は残しましたが、孫の代でサイヤーラインは途切れています。
このように見てみると、今の日本の生産界は、サンデーサイレンスの4×3インブリードを大量生産して、サンデーサイレンスの再来と言われる名馬を創ることに躍起になっていますが、非常に危険な方向に向かっている気がいたします。
インブリードは、いわば馬の生産におけるカンフル剤。競馬界のレベルの底上げには、アウトブリードの名馬を創ることこそが基本。これを忘れてはなりません。(続く)