本日は、将棋界の七不思議の一つ、なぜ、藤井聡太五冠は『振り飛車』戦法を採用しないのか? について。
これは、豊島将之九段にも言えることですし、現在の四強と言われる渡辺明名人や永瀬拓矢王座も同様です。ただし、渡辺明名人と永瀬王座は、時々、意表をついたように振り飛車を使うことはあります。
まず、今のトップ棋士たちは、ほぼ全員が何らかの将棋ソフト=AIを使って、日々の研究を行っています。将棋ソフトは、ご案内のとおり、その戦型における先手後手の優位劣位を点数で表示してくれます。そして、現在の将棋ソフトの多くが、振り飛車戦法よりも、居飛車の相掛かり、あるいは矢倉などの形の方が、前半戦において、ほぼ間違いなく優位な点を与えていること。これが、今のトップ棋士たちが、あまり振り飛車を使わなくなった理由と言われています。
確かに、振り飛車の場合、飛車がよく動く分だけ、手順が多く必要になります。また、飛車を動かした分、その反対側のスペースに玉を動かして、さらに金銀で守りを固めるケースが多くなります。その分、また手順が多く必要になります。
それに対して、居飛車であれば、相対的に手順が少なく済む上に、角換わりが代表例ですが、相手のスキを見つけたら、即座に急戦に持ち込むことも可能な戦型です。
藤井聡太五冠は、何と言っても、抜群の終盤力が強みのプロ棋士です。相手にスキが見えれば、素早く急戦に持ち込んで、一気に相手玉を追込み、詰みに持っていく力の持ち主。したがって、相掛かり、角換わりといった戦法を好んで使いますし、急戦型の研究においては、将棋界でもNO.1の知見の持ち主と言えます。
それでは、藤井聡太五冠は、このままずっと、振り飛車は指さないつもりなのでしょうか?
私はいつかは、振り飛車の世界でも、新手をどんどん発見して、深い研究成果を見せてくれるはずと考えています。今は、対戦相手も含めて、居飛車の研究が進んでいますので、まずはこの分野での研究をやり尽くすつもりなのでしょう。しかし、そこも一段落すれば、将棋ソフトの進化も相俟って、今度は、振り飛車ブームが訪れる気が致します。
そうでなければ、天国にいる、大山康晴15世名人が悲しむと思います。大山康晴名人は、何と言っても、振り飛車の名手で、特に「四間飛車こそが最強である」と宣言していた将棋界のレジェンドであります。
それを藤井聡太五冠が知らないはずはありません。必ずや、大山名人の真意を、解き明かす研究をしてくれると信じております。