映画を観た。
★おくりびと
監督:滝田洋二郎
キャスト:本木雅弘、広末涼子、山崎努
2008/日本
こういう映画は一人でたっぷり堪能したい、一人で静かにゆっくり泣きたいと思うもの。初めから泣くつもりでハンカチを用意。横に人が来そうにない席を確保。準備万端、そして、予定どおり泣かされた。
日本人の琴線に触れるような台詞、物語設定、北国の桜、雪景色。飛び立つ白い鳥。形式美がぴたっと決まっている。そして、日本人的情緒を満足させる様式美。さらに、所々にコミカルな場面を引き込み、ゆっくりゆっくり、人生を考え、生と死を見つめさす。非常に巧みで戦略的な映画作り。
「これってちょっと決めすぎじゃないですか?」と言う余計なツッコミを言わせない完璧さ。素直に受け止め、じっくり泣かされた。
本木さんは結構筋肉質で、男らしい俳優さんなのに、何処か洗練された中性的、いやむしろ女性的でさえ感じる雰囲気を魅せる。それが彼の俳優としての色気だろうが、今回は納棺師という職業の所作、手さばきに生かされた。
「死ぬつもりじゃないなら喰わなきゃいかん。喰うんならウマいに限る。」
とにかく、食べるシーンが多い。特にうまそうには見えないが、生きるためにむしゃむしゃ食らう。動かなくなった死者との対比。
ボクぐらいの年齢になると、多くの旅立ちの場面に立ち合う。共に過ごした時間が長く濃密であれば、その悲しみは深く大きい。あまりの突然であれば、ショックも大きい。いままで、ほんとにいろんな送り方をしてきた。様々に思い出されて、いろいろな時間を彷徨ってしまった。そして思った事、「最期まで、生きようっと」。