蹴鞠、蹴球、サッカー、チュックー考
南アフリカのサッカーワールドカップ開催まであと僅かです。熱狂的なサッカーファンでもなく、子供時代に遊びで走り回っていた程度で、普段は、プロの試合もあまり見ませんが、ワールドカップとなると何となくソワソワ、楽しみにしている自分に気づきます。サッカー競技の特徴は、そのルールの単純さと、動きの早さでしょうか。世界で最も競技人口が多い(約2億4千万人)理由も、ボール一つあれば、他の用具、施設は十分でなくても始められるところでしょう。そこでは、貧富の差、人種の差は関係なく、ボールを相手より多く、早くゴールに蹴りこめば勝ちです。
今から56年前の1954年ワールドカップ・スイス大会の出場をかけた日韓戦。朝鮮戦争(6・25、韓国動乱)休戦から僅か7ヵ月後、国、国民は疲弊しきった中であり、反対に日本は戦争特需で経済復興のきっかけを掴んでいた最中でした。韓国選手団は、当時の李承晩大統領から、「もし日本に負けたら、そのときは玄界灘に身を投げよ。」と言われ送り出されました。時代背景、国民感情など、プレッシャーと逆境のなか、まさに命懸けで戦い、見事5-1のスコアーで勝利しました。韓国人にとって、サッカー(チュックー)が、単なる競技ではなく、国のプライドを懸けた特別な存在になったのは、その時からかもしれません。
FIFAのホームページを見ると、サッカーの起源を中国の蹴鞠(けまり)としています。紀元前300年前以上前の斉の国(戦国時代)にて、軍事訓練の一つとして確立したとされています。軍人たちが、実際の争いさながら、鞠を追いかけぶつかり合う姿が想像できますが、見ている観衆が熱くなるのもやむを得ないですね。実際、1969年のワールドカップ・メキシコ大会予選で、ホンジェラスとエルサルバドルでの競技で、ホームのエルサルバドルのファンが、ホンジェラスの選手宿舎で安眠を妨害したことがきっかけで、両国が国交を断絶し、さらにサポータ-同士の衝突から、ついに戦争にまで発展してしまいます。所謂‘サッカー戦争’です。熱狂的なファンにとっては、ワールドカップは、国同士のプライドを懸けた戦争だという言葉も肯けるところです。