溢れる健康情報の中で
先日友人の医師から一冊の本を頂きました。「骨博士が教える 老いない体のつくり方」(東京大学大学院工学系研究科教授 鄭 雄一 著)と言う一般の方向けの健康指南書です。彼は、私が大学病院勤務医時代からの知り合いで、出張先の病院で私が形成外科の外来をしていた隣のブースで、内科の診察をしていました。その人柄と、丁寧な診察から、患者さんはもとより医療スタッフからの信頼も厚い臨床医でした。その後、基礎医学の研究者の道に進み、今では 骨再生医療の分野では 第一人者と言っても良いでしょう。その医師が書いた内容だけに、医学知識がない人にも、最先端の研究から判明した骨組織、骨再生学の、安易に且つ面白くまとめられています。 そして何より、よくある○○ダイエット本、若返る健康法、△△が体に良い、といった商業目的の健康雑誌、書籍と違い、医学的な根拠から健康、高齢者の骨と健康管理を説明している為、骨、関節の健康に興味のある方にはぜひ一読を薦めます。今朝もテレビでは、□□の健康パワーといった特集をしていました。また、別のチャンネルを回すと、こちらでは画期的なダイエット法を語る芸能人と、その方面に詳しいという医師、栄養士が、もっともらしいコメントする場面が映りました。こういった特集は、それだけ関心が高いと言うことでしょうが、反面 医学的な検証があまりに疎かで、‘ある食品は、このような成分が含まれているから健康によい。’といった非常に短絡的な論法です。食べものや栄養が健康と病気に与える影響を過大に信じること、科学が立証した事実に関係なく何らかの食べものや栄養が与える影響を過大評価することをフードファディズム(Food faddism)と言います。どんな食品にも何らかの成分、栄養素は含まれていますから、体に良い食品、悪い食品という表現自体がおかしいと考えます。また、一つの食品だけを食べて健康になることもありません。さらに 食品中の何かの成分が生体内で効果を示すと言っても、それだけを抽出して服用した場合、むしろ副作用を起こす可能性もあります。様々な食品から、少量ずつ摂るから安全で、長期的にも問題がないものです。どうせ食べるのなら体に良い物を、というのは人情かも知れません。しかし、酒は百薬の長とばかり毎日飲む言い訳にするのは、奥さんにも、自分の肝臓にも通じないでしょう。