民話、童話の世界
古くから代々口承によって伝えられてきた民話や童話は、その土地に住む庶民の生活や習慣、また願いが盛り込まれているものです。特に童話には、子供が聞いて面白い内容であるとともに、その時代、その民族の大人が子孫に伝えたい教訓や価値観が反映されていると思います。
私でも知っている韓国の童話に「青蛙(チョンケグリ)」という話があります。親の言う事に対して、なんでも反対の行動をする天邪鬼な子蛙の話で、母蛙があまりに言う事を聞かない我が子に対して、死ぬ前の最後の願いとして「自分が死んだら川の横にお墓を作って埋めておくれ。」と頼みました。何でも反対のことをする息子なら、そう言えばちゃんと山にお墓を作って埋めてくれるだろうと考えたからです。しかし、母が亡くなった後、息子は泣きながら、「最後くらいはオモニの言うとおりにしよう。」と考え、少し変だと思いながらも川の横に埋葬しました。案の定、雨の日に水嵩が増し、お墓ごと流されてしまいました。それで雨の日になると青蛙がゲロゲロ嘆いて泣くようになったという話です。儒教の国と言われる韓国では親孝行にまつわる話が多く、その中でも特にオモニと息子の愛惜を表した青蛙の話は、私には今でも韓国社会に通じる価値観があるようで面白いです。
動物がよく登場するのも民話、童話の特徴ですが、韓国の民話で欠かせないのがホランイ(虎)です。日本の「猿蟹合戦」とよく似た話に「パッジュク ハルメとホランイ(あずき粥婆さんと虎)」や「おばあさんと虎退治」という話がありますが、日本の民話での猿の役目がホランイ(虎)になります。韓国の昔話では、虎は「権力」や「外敵」の象徴として登場し、最後は力の弱い民衆によって退治されるというストーリーが多いのも特徴です。知恵や勇気を持つことで、強大な力を持った者にも打ち勝つことができるという教訓を、子供たちに伝えたかったのでしょう。
韓日の童話を読み比べると、話の内容やとらえ方、登場人物、動物などの違いの面白さを感じる反面、微妙な類似性も随所に見られます。例えば「こぶとり爺さん」とほとんど同じ設定の「ボッブリ・ヨンガム」の爺さんは、非常に陽気で歌まで披露し、金銀までお土産にもらいます。歌好きは、今も昔も変わりがないようです。