韓国は、ドラマ、映画、音楽、アニメーションなどの芸能ソフト、コンテンツを90年代初めより、ソフトパワーとしての産業戦略の柱と位置付け、政府の支援のもと、積極的に世界に普及すべく、推進してきました。その成果として、「韓流」は、日本のみならず中国、東南アジア、中東にまで、一つの芸能ジャンルとして定着しつつあるようです。一方、形成外科、美容外科の分野は、国内の美に関する肯定的な価値観のもと、高い需要に後押しされ、医師の中でも専門科目中、高い人気を持つようになり、よって優秀な人材が集まる条件となりました。そしてこの2つが、政府の観光事業計画として融合することで‘韓流美容整形’という形で、韓国医療観光の一分野を担っています。私は、両国の形成外科・美容外科事情を専門医、また患者さんと関わる立場から、韓日の美容外科の微妙な違いを意識することがあります。
韓国の世界的企業サムスン電子の目覚ましい躍進は、しばしば日本の産業界でも話題になります。営業利益や純利益だけ比較すると、ここ数年では、ソニー、日立、三菱、パナソニック、シャープ、東芝の日系大手電機会社6社の合計でも、サムスン電子1社に及びません。勿論この成功は、多くの要因、努力があるでしょうし、急成長した故の課題も抱えていることと思います。最近日本の経済紙などで、サムスンやLGなどの韓国を代表する企業戦略の秘訣として「選択と集中投資」という表現がよく挙げられます。つまり、利益や効率を考えて、将来成長すると考えた分野に対して選択し、そこに集中投資を行うというものです。実はこの点では、韓国の形成外科、美容外科の分野でも感じることがあるのです。韓国の美容外科・形成外科は、非常に細分化されています。例えば、二重専門、鼻形成専門、顎の形成専門、脂肪吸引専門というように、一人の医師が一分野に特化して治療を行うことです。技術の習得時間、施設や機器の投資、を考えると確かに効率的であると言えます。患者さんもどの病院に行くべきか迷わずに済むうえ、医師も多くの症例を経験することで一分野においては技術の熟練も早いでしょう。一方、1か所にこだわると、とにかく何かしら手を加えるというように、治療の必要性が甘くなったり、過剰な手技になりかねないという部分もあるように感じます。
どちらのスタイルが優れているというより、結局は、医師一人一人が、常に患者さんの立場から、医療として最善の選択を心掛けるという原則を忘れてはいけないでしょう。
韓日美容外科比較論・・・サムスンとソニー?