現代女性にとって化粧は必須アイテムといっても過言ではないでしょう。デパートの1階の売り場に行くと、これでもかと言わんばかりに様々な化粧品で溢れ、男性陣にとっては、入ってはいけない迷路に紛れ込んでしまった気持ちになり、足早に通り過ぎたくなります。化粧品の世界でも、韓流は健在のようで、韓国人女性の肌のようになりたいと韓国製の化粧品をもとめる日本人女性も少なくありません。しかし実際に韓国に訪れてみると意外に一般の女性はむしろノーメイクに近い状態で歩いていると感じるのではないでしょうか。
韓国女性の場合、化粧行動ははっきりと他者を意識し、自分をより魅力的に見せるという目的を持って行うものという考えが強い為ようです。逆に言えば、目的を持って見せる相手がいなければ化粧の必要を感じないとも言えます。反面 日本の女性は、エチケットとして、或いは己の気分転換や満足感を求めて化粧行動を考える為、必ずしも他者を意識してなくても日常的に化粧をする習慣があるのかも知れません。また文化的な背景からも考えてみると、日本では江戸時代初期には庶民の為の化粧専門店まであったといいますから、むしろ限られた貴族や王族の貴婦人中心のヨーロッパ化粧文化より進んでいたとも考えられます。しかし、中世から続いた顔隠しの文化から、武家の妻はたとえ夫や義親の前でも白粉などで化粧をして素顔を見せないことが嗜みとされました。日本人の化粧には、自己アピールよりも素を見せない、隠す意識が内在しているとすると、韓国人女性より日本人女性がわかりにくいと言われるも一理ありますが。
化粧の歴史は、数十万年前の人類が狩猟や儀式の際に体にペインティングをしたことに始まりますが、現代的な化粧形態で言えば、紀元前3500年頃古代エジプト時代からと考えられます。壁画で見られるように眼の周りを今でいうアイライン・アイシャドーのように緑黒色で塗って強調しました。勿論、眼を大きく美しく魅せる目的でもありますが、もう一つの大きな理由はナイル川で発生するメマトイというハエを避けるためでした。子のハエは目から出る分泌物を求めて集まり、時には卵産み付け眼病が多く発生しました。目の周りに塗る顔料は孔雀石を砕いたもので、ハエを寄せ付けない効果があったのです。今の機能性化粧品に薬効が在るかどうかは別として、古来から化粧品には病気を予防する薬としての役割も兼ねていました。「魅せる、隠す、治す。」化粧に長けた女性たちが侮れないのは当然です。