形成外科の仕事を「精神外科」と表現されることがあります。つまり、体の傷痕や変形を外科的に治療することで、精神的なコンプレックスや負担を和らげ改善することがあるという意味でしょう。実際にあざや傷痕、やけど跡、先天的奇形などは本人のみならず、その家族にも大きな心の負担になり、手術やレーザー治療などで改善できれば、心理的な面でも大きな力になります。また美容的な手術であっても、気になっている部位が改善されたことで、随分と患者さんが性格的にも明るくなり、自信感を取り戻し積極的になれたといわれるのは暫し経験します。そんな姿を見他時こそ形成外科、美容外科医冥利に尽きるものです。
先日、若い時の葛藤と苦悩からリストカットを繰り返し、結果的に前腕部に複数の‘ためらい傷’を残してしまった女性の相談を受け、慎重に話し合った結果、形成手術をおこないました。彼女はすでに精神的には立ち直り、目的をもって生きています。ただ過去の行為による傷痕が目立たない状態にすることでより活発に行動できると考え手術を決めたものです。この場合は「応援外科」でしょうか?勿論、治療の意味、必要性は皆異なりますから、誰もが安易に治療すればよいわけではありません。また、治療の効果、経過などしっかりした説明と選択が大切であり、簡単に治る、傷痕を消せるなどという情報や広告には注意してください。心の傷も体の傷も、正しい治療法と時間が必要で、魔法のような特効薬はありません。
「国全体が喪に服しているようでした」先日 久しぶりに韓国を訪れたという人の感想です。旅客船沈没事故から2週間以上過ぎますが、懸命な捜索にも関わらず、未だに多くの不明者を残したままです。そして聞こえてくるのは、いい加減な船会社の運航体制や非常識な船員たちの初期対応の情報ばかり。さらには、船舶の安全を監視、監督すべき海運組合や関連団体と海洋水産部との癒着、この船会社の実質的オーナーである人物の怪しげな経歴と一族の横領・背任・脱税疑惑など、関連した糸を手繰っていけばその先は無数に枝分かれし、再び韓国社会に絡みついてくるかも知れません。それほど今回の事故は国民全体の心に深いトラウマとなりうる衝撃を与えています。しかし、誰よりも子供への愛情が強い韓国人!臨時に設けられた焼香所に訪れた大人たちの口から出る言葉は「申し訳ない」というものです。一人一人が己の事という意識を持つならば、悲しさや虚しさで自虐的になるのではなく、覚悟をもって治療し歩き出すべきです。