美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

言論の自由と情報の保護

2013-12-03 15:23:17 | Weblog

 

 私が韓国に留学していたのは、今から30年以上前です。当時の韓国は政治的にもまだ不安定で、大学では軍事政権を非難する学生デモが連日行われ、日本で呑気に過ごしてきた私もデモ鎮圧隊によりキャンパス内に打ち込まれた催涙弾というものを初めて体験し、鼻水、涙を流しながら逃げ回りました。また、日常の生活でも日本とは異なる感覚の事象は少なからずあり戸惑い、時に考えさせられたりしたものです。その中にテレビのニュースで逮捕された強盗や殺人、傷害事件の犯人が直接インタビューに答える場面を目にしたのもそんな中での一つでした。人権問題に特に関心が強かったわけではない私でさえ、刑が確定した状態でもない人間にたいする対応に、ある違和感を覚えました。勿論、昔のことであり、今の韓国では考えられないことです。

 逆に現在、日本などのマスコミによる殺人等の犯罪事件で被害者の扱いに関し、疑問を感じるのは私だけでしょうか?加害者の写真や映像がニュースで公開されるのはやむを得ないところですし、犯人が未成年ならばそれでも個人情報は報道されません。一方被害者の方は、未成年であれ、幼い子供であれ何度も写真が使われ続けます。捜索目的なら情報提供の意味があるでしょうが、被害者が亡くなっている場合、どのような意味があるのかわかりません。被害者の写真や映像などの個人情報を出し続けることが、事件や事故への読者、視聴者の関心を喚起し、それが今後の事件の発生への抑止や予防につながると考えてのものか、実際にそのような効果が検証されているのか知りたいです。単に報道上の慣習であり、その必要性に対して議論されたものでなければ、自分が被害者や家族の立場ならどう感じるのかもう一度検討し考慮してみるべきです。

様々な情報には、外交上の不利益を考え非公開、保護すべきものがあることも、逆に知ることで多くの国民の利益を守れるものがあり、その判断は重要であり、時に困難です。しかし、児童ポルノまがいのアニメや漫画、ヘイトスピーチなどの過激な差別言動、興味本位の個人情報侵害まで言論の自由に守られていると考えるなら、それは人間の尊厳を踏みつける行為を自由という名で免罪していることに過ぎません。

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