すし、天麩羅が日本料理の代表ならば、韓国料理の代表は焼肉、ビビンパとなりますが、果して日本の‘焼肉’に該当する韓国語は何でしょう。直訳に近いものなら‘ブルコギ’ですが、韓国のブルコギは味付けした牛肉をジンギスカン鍋で調理する鍋料理ですから、日本の焼肉とはかなり異なります。また、炭火カルビ(スッブルカルビ)の店に行けば、確かに日本の骨付きカルビが豪快に出され、これこそ本場のヤキニク!ということになりますが、値段もそれなりです。ブルコギもスッブルカルビもやや高級料理という感覚があり、特に留学当時の私のような金欠学生には先輩医師に奢ってもらうとき以外は無縁のもので、仲間同志で、スタミナを!というときは、豚カルビ(もちろん骨付き!テジカルビ)か 豚三枚肉(サンギョプサル)と焼酎で一杯が定番でした。
このように韓国でいう焼肉料理は一様でなく、肉の種類から店のランクまで多様で日本のように多くのメニューを持つ焼肉店として一潜りには出来ません。もう一つ韓国ヤキニクの特徴として、メインの肉を注文すれば、日本では一品一品注文するオカズ、キムチ、サンチュは当然無料でついてくるもので、さらにお代わり自由というところです。主役以外はオマケ文化‘とも言いましょうか、いずれにせよ肉料理を食べてもサンチュやゴマの葉に包んで野菜もたっぷり食べた気になれるのでバランスよく有難いところです。そもそも朝鮮半島での肉食の歴史を考えると、4世紀の三国時代に仏教が伝わり「殺生禁止令」が出されるとともに肉食は衰えていき、ようやく李氏朝鮮時代になり仏教を廃し、儒教を広めたころから肉食が一般化していくようです。しかし、串に刺して焼いたり、味付けして網で焼く肉料理は祭事や宮廷料理として出されはしたものの、ヤキニクのルーツというほど一般化されていなかったものです。
今でこそ日本人以上に肉の消費量が多い韓国ですが、これは戦後高度成長をなしてから比較的最近の話です。現在の韓国ヤキニクスタイルも多くは、戦後の日本で在日の人々が始めた日本の焼肉から逆輸入されたものが多いと考えらます。日本人特有のメニューの多さ、細かさに対して、一点集中主義でオマケが自由という韓国式はまさに両国の価値観の違いが垣間見られて面白いところです。そう考えればYAKINIKUは韓国式日本料理、日本式韓国料理と言えるかも知れません。
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