先週まで豪州にて熱戦を繰り広げたサッカーアジア杯での韓国チームの活躍はある意味予想以上のものでした。朴智星選手引退後のリーダーやスター選手の不在、ブラジルワールドカップの一次リーグ敗退それらの影響によるものか韓国国内リーグの不人気と停滞気味の韓国サッカー界にとっては久しぶりに 元気づけられる話題です。そこで注目されているのが新しく韓国代表監督に就任したドイツ出身のシュティーリケ監督(61)。「攻撃力があるチームが勝つが、優勝するのは守備力があるチーム」理想的なサッカースタイルは「勝つサッカー」と述べるように、派手なパフォーマンスや面白いサッカーを目指すのではなく、状況々で合理的な型を求める現実主義と誠実そうな風貌から「茶山シュティーリケ」というニックネームもつけられました。茶山とは、朝鮮末期の実学者・丁若(チョン・ヤギョン)の号です。
丁若(1762~1836)は朝鮮王朝第22代王・正祖(イ・サン)の補佐として様々な分野で卓越した才能を顕した人物です。優秀な成績で進士試験や文科試験に合格するものの「南人」に属していたことから重用されなかった中での正祖による大抜擢です。当時としては珍しい工法を用いた水原華城(世界文化遺産指定)の設計構築、挙重機(クレーン)や滑車ろくろなどの科学器具の制作、『麻科会通』などの医学書籍も執筆し、まさに「朝鮮のダヴィンチ」の呼び名にふさわしい業績を残しました。反面、官職での彼の人生は決して平穏なものではありませんでした。派閥抗争、妬みによる様々な迫害、天主教との関わりなどを理由に何度も辞職と復職を繰り返します。そして正祖の死後は政的により天主教弾圧の名のもと18年に及ぶ全羅南道 康津での流配生活を送ることになります。しかし、丁若はこの地で過ごす間、朝鮮時代の性理学の空想的な発想を実用的な科学思想に基づいて研究し、500冊以上の本を執筆しました。中でも『牧民心書』は民衆を統治する地方行政官の備えなければならない心構えと守らなければならない準則、徳目が書かれたもので、韓国古典の中でも最高と言われる一冊です。ベトナムの最高指導者ホーチミンも生前に『牧民心書』をベッドの枕元に置き、愛読していたことは知られています。
「清廉は牧民官(地方長官)の本務であり、すべての善の根源である。徳の基本である清廉でなくては牧民官になることはできない。富を貪する首長はその下のものまで汚染され一様に蓄財にだけ励み、これはそのまま国民の血を吸い上げる盗賊と同じ存在となる」どの時代でも通用する言葉です。
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