不老長寿とがん
医学の最終的な目標は、全ての人に健康と長生きを提供することでしょう。勿論、戦争、貧困、環境など様々な社会的な問題の解決なしには不可能な部分もありますが、少なくとも病気、損傷、老化による体のダメージから解放できるすべを医学は追及しています。
日本、韓国で平均寿命が急激に伸びたのは、わずかここ数十年の間です。特に韓国においては、1960年度で、平均寿命は、わずか52.4歳ですから現在約77歳として25歳近く伸びたことになります。今では世界一の長寿国、日本でも第二次大戦直後は、平均寿命52歳前後でした。これは、革新的な医学の発達というより、衛生面と栄養面の充実が大きいものです。
ここ数年は寿命の伸び率も鈍化してきており、よりいっそうの寿命延長には現在死因のトップであるガンの征圧が必要でしょう。ここで長寿とガンについて考えて見ます。現在日本では、年間30万人がガンで亡くなっています。もし、ガンが完全に制圧されたら、寿命は約3.5歳延びると予想されています。わずか、3.5年と考える方もいるかもしれませんが、人間の平均寿命が生物学的限界に近づいてきた結果だとも言えます。またガン自体が老化現象と深い関連があるため、多くの罹患者が既に高齢であることが飛躍的な平均寿命の延長につながらない原因とも言えます。
がんの発生には様々な遺伝子が関与していることが分かってきました。その中には、勿論ガン抑制に関与していると思われるものもあります。しかし、マウスにおいて、その遺伝子だけを活性化させると今度は老化が進んで寿命が短くなってしまったと報告されました。がん研究の難しさの一例です。
体に良いというものは何でも試してみる人が「健康の為なら死んでもいい」と言ったという笑い話がありますが、長寿とは何かを考えさせられるものです。
『東洋経済日報 2008.掲載』
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