田中 油彩
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは田中さんの油彩作品です。
左の作品ですが、見た人の目にまず入ってくるのは、木々の隙間から洩れてくる淡い光でしょう。光がある向こう側には何があるのか、思わず回り込んで確かめに行きたくなりますね。その脇に咲いている可愛らしい黄色い花々も、向こう側へと案内してくれるかのように奥へと続き、光へと視線を誘導させています。また森全体の色も美しくまとめられており、柔らかく優しい緑色からは瑞々しい草木の香りが広がってくるようです。奥はぼんやりとあまり形をはっきりとさせない事で、より手前の木々や花を前面に出していますね。製作中はどこに見所を作り、何をメインとして描きたいのか迷走する事もありましたが、見事に美しい終着点へと至りました。眺めているだけで心癒される作品です。
そして2枚目の作品ですが、こちらは暗い背景に散りばめられた花の紅が印象的な風景となっております。実はご自身のスマホで撮影した、ライトアップされた夜桜。妖艶な色合いです。奥には道が続いているように見えますが、こちらは川になっています。先ほどの奥へと導くような森の風景とは逆に、木々と花が拒むかのように奥を隠しています。並べてみると対照的で面白いですね。網のように画面を覆う枝の線も魅力的で、自然物の形の面白さをよく捉えられています。木々の向こう側にある空も、暗いように見えても奥は明るい夜明けを感じさせるような青が覗いています。一見不穏な印象を与えるようですが、実は冷たい寒さに終わりを予感させてくれているのかもしれません。見る人の心理状況によって印象が変わりそうな1枚です。