オバラです。川崎総合科学高等学校デザイン科の合格者に描いてもらった再現作品です。
形も質感も描き込みも空間表現もまだまだ甘い部分は多いですが、本人達の実力を知っている私からすれば、90分で自分の持っている力を全て出し切った絵だと感じます。構図に至っては随分工夫できるようになりましたし、何より「なぜこの構図にしたか説明せよ」の問いに的確に答えられるだけでなく、自分の意志と得意技を反映させながら決定している構図と伝わるところが素晴らしいです。
そう、一瞬で答えられるように徹底的に鍛えました。構図を決めるエスキースは、何百枚も描かせましたから。(1回の授業に4枚程度、週2回以上、約半年間)
もちろんエスキース1枚1枚にダメな理由、良い部分の根拠を説明しました。反射的に「この構図、気持ち悪い!」と避けられるように。
「絵はセンスなんて曖昧なものじゃない。理論と理屈だ。69点の31点足りない理由は明確にある。頭を使え!考えろ!馬鹿じゃダメなんだ!」と言われ続け、ポロポロ泣いたり、虚ろな目になったり、ビクビクしたり、素直に謙虚になったり。
そんな様子を見ながら心では「バカバカ言い過ぎてゴメンね。本当は私の方が頭すんごい悪いんだよ。なのに偉そうにゴメン。」と謝っていましたが、おくびにも出しませんよ。指導者が揺れ動いちゃ、すがる指針がなくなってしまう。半年間毎日威張って怒鳴ってばかりいました。
だからこそ受験が終わった後は、アニメの話も、アイドルの話も、先生の悪口も、毒を抜くが如く付き合っています。今まで厳しくしてきた分、ベタベタに甘やかさないと。
さて今までこのブログで応援して来てくださった皆様は「あれ?毎回5人の学生の絵がアップされていなかったっけ?」と気付くかと思いますが、お察しの通り一人不合格でした。発表後の報告の第一声は小さな「ごめんなさい」。「傷付いているのは自分の方なんだから謝らなくていいんだよ。そんな風に言わせた私こそごめんなさいだ。」と通夜のような電話でした。
翌日お母様とのお電話で「お役に立てず申し訳ありませんでした。」と謝ると「努力が嫌いな上、失敗するのが怖いタイプで、今までの人生はチャレンジする前に諦めてばかりでした。今回苦しみながら戦い抜いてくれた事が何より嬉しく、彼の財産になったと思います。今は落ち込んで『もう美大なんて行かない!』と投げやりにはなっていますが、その選択や決意も、逃げて妥協してでは得られなかった事です。」と言われました。
そうは言っても「受験に失敗しても、人生では勝ち得たものがあった」など、15年しか生きていない学生には思えるはずもなく、早く「自分のウィークポイントが知れてラッキーだったな!」と割り切って傷が癒えるよう祈るばかりです。
これからは遊びながら絵を描かせ、彼が必要とする限りミオスが心の拠り所であるよう努めるつもりです。