モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

たまに触ってみると

2021-03-09 21:58:09 | 大人 パステル・色鉛筆・他

左上から 佳菜穂(高3) / 眞田(社会人) / 下 中崎(大学生)

目がカピカピです、一平です!本日はミオスにもアシスタントで来てくれているカナホ、土曜クラスの眞田さん、水曜クラスの中崎さんの3人の水粘土をご紹介します。

まず上段の手の作品ですが、僕はデッサンで「粗密の関係」という話をよくすると思います。これは大きく開けた空間と、ギュッと詰まってものが密集した空間が1つの画面の中にあると絵が間抜けにならず良いバランスでデッサンを進められるという構図の考え方の話ですが、僕は水粘土でも同じ事が言えるのではないかと考えています。こちらの手、デッサンなら複数モチーフがあるから粗密が作れるけどこっちは手だけでどうするんだ!と思った方もいると思いますが、手をそのまま見るではなく骨、関節、指と細かく見ていくとどうでしょうか。手を作るにしても指が伸び切ったパーのような手では単調でつまらない、粗密でいう「粗」だけの作品になってしまいます。逆にギュッと握ったグーの手ではドラえもんの手のような感じで人間の手らしさ、手の良さが出てきません。粗密の「密」だけですね。なので、適度に握っていて適度に開いている、そんな手を目指すと凄く考えやすいと思います。2人とも小指と薬指が少し握られていて親指から中指は少し開いているような見せ方です。ここに空気が抜けるような空間感を感じることができます。親指の肉の盛り上がり方や関節のゴツゴツ感など結凄く人間の皮膚の表情になっていて素晴らしいですね。

また、下段の中崎さんの作品はご自分のスニーカーを参考にしての製作でしたが、もちろんスニーカー自体の量感やソールとアッパー、タンなどのディティールへのこだわりが見えて完成度がとても高いのですが、僕が痺れたのはこの靴紐のたるみ方です。スニーカーの平たい紐の独特のたるみ方に勝手に共感し、「確かにこうなるよな」と一人でニヤニヤしていました。観察力の賜物ですね。是非今度はもっとパーツの多い細かい物を作ってみて欲しいなと思います。

中崎さんの以前作った水粘土『手』の作品はこちら

粘土は子供達が工作によく使っているイメージだと思いますが、沢山の種類があり奥が深く面白いです。レンジでチンして固くしたり、食べれる粘土だったり本当に様々なので普段絵を描いている人達もたまにやれば新鮮で楽しいですよ!

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川崎総合科学デザイン科 合格再現作品

2021-03-08 22:08:31 | 学生

オバラです。川崎総合科学高等学校デザイン科の合格者に描いてもらった再現作品です。
形も質感も描き込みも空間表現もまだまだ甘い部分は多いですが、本人達の実力を知っている私からすれば、90分で自分の持っている力を全て出し切った絵だと感じます。構図に至っては随分工夫できるようになりましたし、何より「なぜこの構図にしたか説明せよ」の問いに的確に答えられるだけでなく、自分の意志と得意技を反映させながら決定している構図と伝わるところが素晴らしいです。
そう、一瞬で答えられるように徹底的に鍛えました。構図を決めるエスキースは、何百枚も描かせましたから。(1回の授業に4枚程度、週2回以上、約半年間)
もちろんエスキース1枚1枚にダメな理由、良い部分の根拠を説明しました。反射的に「この構図、気持ち悪い!」と避けられるように。
「絵はセンスなんて曖昧なものじゃない。理論と理屈だ。69点の31点足りない理由は明確にある。頭を使え!考えろ!馬鹿じゃダメなんだ!」と言われ続け、ポロポロ泣いたり、虚ろな目になったり、ビクビクしたり、素直に謙虚になったり。
そんな様子を見ながら心では「バカバカ言い過ぎてゴメンね。本当は私の方が頭すんごい悪いんだよ。なのに偉そうにゴメン。」と謝っていましたが、おくびにも出しませんよ。指導者が揺れ動いちゃ、すがる指針がなくなってしまう。半年間毎日威張って怒鳴ってばかりいました。
だからこそ受験が終わった後は、アニメの話も、アイドルの話も、先生の悪口も、毒を抜くが如く付き合っています。今まで厳しくしてきた分、ベタベタに甘やかさないと。

さて今までこのブログで応援して来てくださった皆様は「あれ?毎回5人の学生の絵がアップされていなかったっけ?」と気付くかと思いますが、お察しの通り一人不合格でした。発表後の報告の第一声は小さな「ごめんなさい」。「傷付いているのは自分の方なんだから謝らなくていいんだよ。そんな風に言わせた私こそごめんなさいだ。」と通夜のような電話でした。
翌日お母様とのお電話で「お役に立てず申し訳ありませんでした。」と謝ると「努力が嫌いな上、失敗するのが怖いタイプで、今までの人生はチャレンジする前に諦めてばかりでした。今回苦しみながら戦い抜いてくれた事が何より嬉しく、彼の財産になったと思います。今は落ち込んで『もう美大なんて行かない!』と投げやりにはなっていますが、その選択や決意も、逃げて妥協してでは得られなかった事です。」と言われました。

そうは言っても「受験に失敗しても、人生では勝ち得たものがあった」など、15年しか生きていない学生には思えるはずもなく、早く「自分のウィークポイントが知れてラッキーだったな!」と割り切って傷が癒えるよう祈るばかりです。
これからは遊びながら絵を描かせ、彼が必要とする限りミオスが心の拠り所であるよう努めるつもりです。

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一つの結晶となる。

2021-03-06 22:16:23 | 大人 水彩


杉田 透明水彩

3月になりました。卒業シーズン到来。

今回は、土曜午前クラスの杉田さんが描かれた作品をご紹介します。

杉田さんは一貫して透明水彩で描き続けています。以前は風景中心でしたが近年になりむしろ人を中心に描くことが多くなりました。
描いたのはベネチア・ムラーノ島。吹きガラス職人が集まる町とのこと。小原先生が旅をしたときに撮影された写真です。

簡素な工房で、吹いたガラスを独特の道具で成形しているその様に言い知れぬ情緒を感じます。
使い込まれた道具たち、木造りのベンチ、そうしたデティールに目を向けるとどれも丁寧に描き込まれています。
そうした茶色を基調とした全体のトーンの中に今にもとろけそうなオレンジ色をしたガラスが何とも印象的ですね。

まだ柔らかいガラスを扱う職人の姿が、コツコツとしかし確実に一歩づつ完成に向かって描き進めていく杉田さんとどこかリンクするようです。

対象を素直な気持ちで捉え、一枚の作品へと昇華させていく。

急いで沢山の作品を量産せずともその一枚を大切に描くことで、描き手の思いが素晴らしい一つの結晶となっていきます。




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奥へと誘う風景・拒む風景

2021-03-05 23:29:50 | 大人 油絵・アクリル


田中 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは田中さんの油彩作品です。
左の作品ですが、見た人の目にまず入ってくるのは、木々の隙間から洩れてくる淡い光でしょう。光がある向こう側には何があるのか、思わず回り込んで確かめに行きたくなりますね。その脇に咲いている可愛らしい黄色い花々も、向こう側へと案内してくれるかのように奥へと続き、光へと視線を誘導させています。また森全体の色も美しくまとめられており、柔らかく優しい緑色からは瑞々しい草木の香りが広がってくるようです。奥はぼんやりとあまり形をはっきりとさせない事で、より手前の木々や花を前面に出していますね。製作中はどこに見所を作り、何をメインとして描きたいのか迷走する事もありましたが、見事に美しい終着点へと至りました。眺めているだけで心癒される作品です。

そして2枚目の作品ですが、こちらは暗い背景に散りばめられた花の紅が印象的な風景となっております。実はご自身のスマホで撮影した、ライトアップされた夜桜。妖艶な色合いです。奥には道が続いているように見えますが、こちらは川になっています。先ほどの奥へと導くような森の風景とは逆に、木々と花が拒むかのように奥を隠しています。並べてみると対照的で面白いですね。網のように画面を覆う枝の線も魅力的で、自然物の形の面白さをよく捉えられています。木々の向こう側にある空も、暗いように見えても奥は明るい夜明けを感じさせるような青が覗いています。一見不穏な印象を与えるようですが、実は冷たい寒さに終わりを予感させてくれているのかもしれません。見る人の心理状況によって印象が変わりそうな1枚です。

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キメラ生物研究所の報告

2021-03-04 21:54:49 | 小学生 工作


小学生クラス3月カリキュラム『キメラ的生物』続々誕生(完成)しています!

春の嵐が真っ盛りですね、ホノカです!
今回は小学生クラスで行われているオリジナル動物の制作についてご紹介します。
先月のカリキュラムで学んだ骨格を参考に、さまざまな動物をかけ合わせて自分だけの動物の設計図を作っていきます。そしてその設計図をワイヤーや新聞紙、粘土を使って再現することで立体的な作品に仕上げていきます。

まず、ワイヤーを骨、新聞紙を筋肉に見立てて動物の形を作っていきます。その時には新聞は濡らして固めることで新聞紙同士がくっつくので頭や胴体など太さのある部分を作りやすくなります。しかしそれでもほぐれてしまう場合は小さな輪ゴムで束ねて新聞紙をしっかり固めていきましょう。
最初は2次元の設計図を立体にした時のイメージがついていない人もいましたが、ワイヤーで骨格を作ってあげることで一気に3次元になり完成形が見えて来たのではないでしょうか!

そして粘土に絵の具を混ぜ、足の部分から貼り付けていきます。
足の部分から貼ることで体の安定感が生まれ、後から体に粘土を貼り付けた際に重みで倒れてしまうことを防ぎます。また新聞が乾いていたら、霧吹きで再度濡らし、紙粘土の付きを良くしていきます。この時に人によっては絵の具を粘土に混ぜ込む際にできるマーブル模様をそのまま張り付けて模様にしたり、グラデーションを作りたいからとあえて白のまま粘土を貼ったりと同じ材料でも全く異なる発想で動物の外皮が作られていきました。

さらに乾く前に目や模様としてやビーズやビー玉、ボタンなどは埋め込んでおき、粘土で作った牙や角などの細かいパーツは体の粘土が固まってからボンドを使うことでしっかりとくっつけます。
最後に表面の細かい模様などは絵の具でペイントをしてニスを塗って完成です!
最後のペイントでそれまでは一色でシンプルだった動物も様々な色が増えて華やかになったり、闘った時の血の痕を描くことでその動物の環境も分かるような細かいこだわりを見せてくれる子もいました。

紙粘土だけで形を作っていくのではなくワイヤーや新聞を骨、筋肉に見立てたことで骨格を意識した動物の形が作りやすいだけではなく、完成後に立たせるための芯になるという利点にも繋がっています。 また新聞紙を付けた時に足をもう少し曲げたり、尻尾はもっと大きい方がカッコいい!という風に設計図には描いていないことでも実際に作ってみてから気付くポイントを変えていくことで設計図よりも面白いものが作れたのではないでしょうか!

1月に骨格を学び、2月はそれを生かしてオリジナル動物を作るという連続したようなカリキュラムでしたが、完成した自分だけの動物はどうですか?外見だけを作るのではなく、内部も意識することでリアリティたっぷりの動物が作れたと思います。
ぜひお家で可愛がってみてください!きっと愛着が湧いてきますよ!

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物語が始まりそうな…

2021-03-02 22:16:04 | 大人 油絵・アクリル


馬込 油彩

低気圧がシンドイです、一平です!本日は月曜クラスの馬込さんの油絵をご紹介します!

桜が舞う様が美しいこれからの季節にピッタリの爽やかな一枚です。水面に浮かぶ散った桜の上を通る小舟が昔話のワンシーンのような日本の懐かしい景色を想起させ、物語が始まりそうな雰囲気になんだかワクワクしてきます。奥に行くにつれて色が薄くなっている水面の部分と淡いピンクの桜のペールトーンの境界の色幅も繊細に描写されていたり、水面に沢山の色、しかも青だけではなく散っていく桜まで描いていてここまでの透明感が感じられるのは計画的なのか感覚的なのかどちらにしても感服してしまいます。桜と水だけではなく、小舟を漕ぐ人を加える事で淡い色味の中に舟の質感や水面への映り込みなどの描き込みやすい箇所を作る事で絵の見やすさがグッと増しています。また、人を描く事で水と桜との距離感も掴めて深く見れば見るほど発見がある作品です。

遠目からだとぱっと見では薄いピンクと深い青の大きなグラデーションのように見えて、近くで見るとこんなにも繊細な一瞬を切り取った絵、という絵を見る上でのギャップもあり面白いです。距離感で印象が変わる絵というのも興味深いですね。

花は人間にとっても身近であり、デッサンにおいては花が描ければなんでも描けると言われるほど難しいモチーフです。そんな花の魅力、この場合は桜の爽やかさと散っていく少し切ない風合いを堂々と描き切った事がとても気持ちいいですね。是非様々な季節、天候の花にも挑戦していただきたいです!僕は花粉症ですが!

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武蔵野美術大学視覚伝達デザインと多摩美術大学グラフィックデザイン合格しました

2021-03-01 22:27:26 | 学生

お久し振りです、ナツメです!
この度武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科と多摩美術大学のグラフィックデザイン学科に無事合格しました。
これまで受験で合格された皆さんのブログは先生方が書かれていたので、なんて書いてもらえるんだろうと内心ワクワクしていたのですが、まさかの自分で書くことになりました。無念です。

さて、約一年半、ミオスでの修行期間も含めるとおよそ二年という長いようで一瞬だった受験生期間ですが、振り返ってみると技術面だけでなく人間としても成長できた良い機会だったので、今回少しだけご紹介します。
美術予備校では、生徒が作った作品について先生方が一枚一枚全員の前で評する講評会というものがあります。私の通っていた予備校では基本的には一週間に一度、受験が近くなってくるとほぼ毎日の頻度で行われていました。
座席が来た順だったので、前方の作品がよく見える席をとるために大体の人が授業開始より1時間ほど早めに予備校に来ている中で、私は一番前の真ん中の席を死守するために2時間前から待機するのが常でした。
しかし着くのが早すぎたある日、「熱意があることと熱心なことは違うからね」と予備校の所長に叱られました。受験期の中でも特に印象に残っていて、ただがむしゃらに進むのではなく報われるような努力の仕方をしようと考えさせられた言葉です。心配性なので結局2時間前に着くのは最後まで変えませんでしたが、努力の姿勢を大きく変えることができたのが、絵の技術に並び大きく成長できた点です。

少し話が逸れますが、講評でボロクソ言われた時など心が粉々でどうしても辛くなった時などはミオスに作品を持ち込みました。予備校とはまた別の視点から粉々にしてもらえたので、むしろしっかり立ち直ることができ、また存在自体が心の支えになっていました。皆さんも何かに挑戦する時は心の支えになる存在を作っておくと勇気づけらるかもしれません。

参考になるのかならないのかわからないような話になってしまいましたが、本当に忙しくてとても辛くて、それが楽しい期間でした。
大学生活ではデザインに止まらず学べることを最大限学び、影響力のあるグラフィックデザインができるよう励みます!

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